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クレームも応援も含めてユーザーの声にメンバー全員が毎日触れる仕組み、最近はピンタレストに力を/楽天レシピ [企業担当者に聞くTwitter運用の現場] | Web担当者Forum

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Twitter運用の現場を突撃! 企業担当者に聞くTwitter運用
Twitterならユーザーの生の声を聞き、すぐにコミュニケーションできます。
メンバー全員がユーザーの声に毎日触れられる仕組みにしています。

45万以上ものレシピを掲載するユーザー参加型のレシピサイト「楽天レシピ」では、ユーザーサポートの一環としてTwitterを活用している。

楽天では、グループ全体で55個もの公式Twitterアカウントを運営しているが、今回話を伺った楽天レシピ(@RakutenRecipe)では、Twitterを使ってサービス利用者の声をリアルタイムに収集することで、リアルタイムの顧客サポートと日々のサービスの改善に役立てているという。

まさに、ソーシャルメディア時代の理想的なサイト運営を体現しているように見える同社では、どのような運営が行なわれているのだろうか。今回は、楽天レシピの立ち上げからTwitter運用までを担う、メディア事業の責任者で執行役員も務める濱野斗百礼(ともあき)氏と、マーケティングリーダー兼Twitter担当の辻勝明氏にお話を伺った。

@RakutenRecipeのプロフィール(データは2012年6月19日時点)
名称:楽天レシピ
@RakutenRecipe

ID@RakutenRecipe

自己紹介
【楽天レシピ】の公式twitterです。オススメのユーザさんのレシピや、キャンペーン情報、その他グルメ情報などを担当がつぶやきます!(botじゃないのであまりいじめないでください…)

  • ツイート 2,837
  • フォロー 4,870
  • フォロワー 4,426

楽天グループのTwitterアカウント一覧:http://www.rakuten.co.jp/sitemap/tw.shtml

楽天の女性向けメディア事業としてスタート

まずは、楽天レシピが生まれた経緯について伺った。

濱野斗百礼氏
楽天株式会社
執行役員
メディア事業 事業長
濱野 斗百礼(ともあき)氏

元々、楽天ツールバーというキーワード広告に焦点を絞ったビジネスを立ち上げていたのですが、2010年1月に事業化されたため、新たにディスプレイ型広告の収益を狙ったメディア事業として楽天レシピは立ち上げられました。ディスプレイ型広告で収益を上げるためには、サイトのテーマとターゲットを明確にしないといけません。“日本で一番女性ユーザーを捕まえているサービスはなんだろう”ということを突き詰めていった結果、レシピサイトの提供という結論に達しました。楽天には商品を買う場所(楽天市場)やポイントもありましたので、ユーザーに集まってもらえる便利なレシピサイトを作れば楽天も絶対にうまく行くと思ったことも理由の1つです」(濱野氏)

レシピサイトとしては後発となる楽天では、競合サイトに打ち勝つためにどのような取り組みを行ってきたのだろうか。

御存知の通り競合のレシピサイトさんは、非常に強力な地位を築きあげていますから、楽天レシピは100人が100人全員良いと言ってくれるサイトを作らないと絶対に勝てないと思っています。レシピの数や質、ソーシャルメディアでの共有のしやすさなどさまざまな工夫をしてきましたが、なかでも今回のテーマとも関連するソーシャルメディアを使ったサービス改善の仕組み作りに力を入れています。実際にはTwitterがほとんどなのですが、サービスの問題点をつぶやかれたら検討し、改善が難しい場合でも代替案を示すなど必ずアクションを取るようにしています」(濱野氏)

楽天レシピにとってTwitterはサービス改善にとても役立っていると濱野氏は話す。

インターネットってユーザーの声を拾うにはすごく便利なツールだと思うんです。これまでさまざまな事業の立ち上げを行ってきましたが、サービスを利用している方のホームページやブログをチェックすることで、サービスの改善に役立てることができたと思っています。でも今は、ユーザーの声を一番拾えるツールと言ったらTwitterなんですよね。

ユーザーの生の声をリアルタイムで確認できるし、ダイレクトにコミュニケーションを取ることもできる。さらに、ユーザーの方に満足していただければ、その友人へと共有していただくこともできます。サービス事業者としては無視できるはずがなく、楽天レシピの情報を簡単に共有できる仕組みも用意しています。私たちは今、100人中100人が満足してくれるレシピサイトを目指していますから、クレームをつぶやいた方、1人ひとりに答えることを大切にし、サービス改善に取り組んでいます」(濱野氏)

楽天グループ内のガイドラインをもとに公式アカウントを開設

Twitter公式アカウント立ち上げ当初のお話を伺った。

辻勝明氏
楽天株式会社
メディア事業
ソーシャルメディア事業部
レシピグループ
プロデューサー
辻 勝明氏

楽天レシピのTwitterは、2011年の1月から始めています。本当はもっと早く開設したかったのですが、楽天レシピの立ち上げ当初は少人数で運営していたので人手が足りなかったことや、当時はセキュリティの問題で一般社員はPCを持ち出せなかったことなど社内環境の問題もあったと思います」(辻氏)

アカウント開設時にはどのようなプロセスをとったのだろうか。

楽天グループとしてソーシャルメディアの運営ガイドラインに相当するものがありましたので、それに準拠する形で運営を開始しました。ただ、ガイドラインにはアカウントごとの運用内容まではさすがに定義されていないので、実際に楽天レシピとしてどういう風に運用をしていくかという具体的な話については、濱野と一緒に検討し“ユーザーサポートに徹する”という方針のもとに現在も運用しています」(辻氏)

楽天グループ内でもソーシャルメディアの運営ガイドラインがあるとは初耳だ。

そうですね、社内的なものなので公開されていないと思います。ガイドラインといってもそんなに堅苦しいものではなくて、たとえば、Twitterアカウントの取得方法やアカウント名の命名基準、心構えのようなものが書かれていて、スタートアップガイドと呼んだ方がわかりやすいかもしれません。楽天全体の編成を総括する部署が、全社向けにソーシャルメディアの使い方について方針を打ち出していまして、それに則ってアカウントを立ち上げると楽天グループのTwitterアカウント一覧に掲載されます。あとは、ツイナビへの公式アカウント申請もその部署が代行してくれますし、楽天グループのTwitter担当者同士のメーリングリストみたいなのもあって、“これをつぶやいてほしい”みたいな依頼がたまに来ることもあります」(辻氏)

楽天レシピのサービス開始は2010年。ちょうどTwitterが日本にも浸透しはじめた頃の話で、サービス立ち上げ期にもレシピサイトに対するユーザーの声を知るためのツールとして、大いに役立ったと濱野氏は言う。

次に、“ユーザーサポートに徹する”という方針のもとに立ち上げた楽天レシピのTwitter運営目的と体制について伺った。

  • 顧客満足度増大を目的に積極的なユーザーサポートを展開
  • 専任のスタッフを2名配置、投稿内容は責任者が事前チェック
  • Twitterクライアントを使い、複数人で1つのアカウントを運用
  • これからもTwitterでユーザーの本音を探って行きたい

Twitter活用の目的
顧客満足度増大を目的に積極的なユーザーサポートを展開

ユーザーサポートに徹するという、楽天レシピのTwitter活用目的について詳しく伺った。

僕らが主眼としているのはユーザーサポートです。

運営開始当初は、フォロワー数を増やすためにこちらからフォローを仕掛けたりもしてきましたが、楽天レシピのアカウントに関しては、情報発信がメインというよりは、ユーザーサポートに徹しようと判断してから徐々にやらなくなりました。ただ、情報発信も続けていて“今日のピックアップレシピ”という編集部が選んだおすすめのレシピについては毎日つぶやいています」(辻氏)

Twitterを使う以前はどのようにユーザーサポートをしていたのだろうか。

元々は、サイト内にあるお問い合わせフォームを使っていました。ユーザーの方から匿名でサイトのどこが使い難いのかといった意見を集めて、スタッフブログで“こういう質問がたくさんあったので対応します”といった形で対応をしていたんです。ただ、Twitterと比べるとユーザーの生の声は少なかったですね。やはりTwitterのほうが生の声を聴きやすいですし、そのユーザーに対してすぐにコミュニケーションを取れるので我々の使い方に合っているなと思います」(辻氏)

お問い合わせフォームはよくありますけど、投稿する方ってなかなかいらっしゃらないですよね。Twitterだと、わざわざ楽天レシピに向かって不満を言っていなくても“楽天レシピって重いんだよね”と、友達同士で話している会話を検索で拾えます。“すみません、どこが重かったですか”といったように積極的なユーザーサポートというか、こちらがどんどんプッシュするような形で入って行くと、原因もどんどん究明できるんですよね」(辻氏)

ユーザーサポート以外にTwitterを活用している目的はあるのだろうか。

あとクチコミが広がりやすいという点ですね。Twitter上でのサポートをしていると、サポート内容をフォロワーさんに共有してくれる方もいらっしゃるんです。1人の悩みを解決することで、そのフォロワーさんに楽天レシピのお褒めの言葉を添えた形で広がって行くこともあるんですよ。

逆にいうと、悪いことの方が広がりやすい世界でもあると思うので、ユーザーの方とコミュニケーションには真摯に取り組むようにしています。そうして、コツコツ続けていけば良いことは必ずあるんですよね。そこを信じながら今日もサポートをしています」(濱野氏)

運営体制
専任のスタッフを2名配置、投稿内容は責任者が事前チェック

現在のTwitterの運営体制について伺った。

現在専属の担当者は2名いて、ソーシャルメディア上のユーザーサポート担当として1名、レシピの編集と発信をする者が1名で、僕はその2名の投稿内容のチェックをしています」(辻氏)

1日にどのぐらいの時間をTwitter運営に費やしているのだろうか。

ユーザーサポートは専任ですが、Twitter経由以外の問い合わせにも対応していますので、毎日2~3時間ぐらいの利用だと思います。あと業務時間外や土日に関しては、ダイレクトメッセージやリプライを送っていただくと僕の携帯にも通知が来るようにしています。実際に、緊急度が高い不具合である場合は土日休日関係なく対応しますので、携帯電話から返事をしています」(辻氏)

ユーザーサポートの業務内容はどのようなものなのだろうか。

主に、“楽天レシピ”を話題にしている人をリアルタイムでモニタリングをしていまして、何かコメントがあったら瞬時に担当部署にサポートが内容を通知し、担当部署の回答を受け取った後にユーザーサポート担当から返信をするようにしています。また、それと並行して、ソーシャルメディア上で楽天レシピや競合サイトに対してどういうコメントがあったかということを毎日レポートしてもらうことで、メンバー全員がクレームもお褒めの言葉も含めてユーザーの声に毎日触れられる仕組みになっています」(辻氏)

サポートをする際に内容の書き方などで社内的なルールはあるのだろうか。

特にありませんね。それは社会人としてとか人としてという話になります(笑)。そこがずれていなければ自分たちのなかで自由に回答をしてよい、という形でやっています。それよりもスピードですね。問い合わせや何か問題があったときには、返事をいかに早く返すかがすごく大事だと思っているんです。待たされているのが一番嫌じゃないですか」(濱野氏)

あと、投稿内容については私の方で最終チェックをしているので、サポートとしてユーザーさんが何に困っているのかを把握して明確に答えられているかは見ています。また、同じことで悩まれているユーザーさんもいるので、情報を集約していくことで早く精度の良い回答ができるように心がけています」(辻氏)

運営開始当初はTwitterにメディアとしてのパワーがあるのではないかと考えていた辻氏。しかし、楽天の三木谷社長のような40万人のフォロワーをテクニックで集めることは不可能であるという判断のもと、ユーザーサポートに方針転換をしたそうだ。専任のスタッフを配置するなどしっかりとした運営体制を取る楽天レシピ。続いて、その運営ノウハウと今後の展開について話を伺った。

運営目標
Twitterクライアントを使い、複数人で1つのアカウントを運用

Twitterの運営目的の達成度を図るための指標は持っているのだろうか。また、効果測定についても伺った。

明確な指標はないですね。立ち上げ当初は、Twitterからサイトへの流入数をSiteCatalyst(楽天グループで導入しているアクセス解析)を使ってチェックしていましたが、最近はユーザーサポートを目的としているので、いかに早くきちんともれなく返事しているか、1日あたりのコミュニケーション量として、投稿数といった観点で目標を設定してもいいかなとは思っています」(辻氏)

Twitter運営に利用しているツールについて伺った。

当初から複数人で運用する計画でしたので、通常のWeb版や普通のアプリでは運用が大変だと思っていて、ツールを探しているなかで“つぶやきデスク”を見つけて採用することにしました。他にもTwitterクライアントはあると思うんですが、上長による承認機能がついていたり、モニタリングしている検索ワードを自動的に記録し続けてくれるなど、企業として複数人で1つのTwitterアカウントを運用するには、よく最適化されたツールだと思っています。その他に、“Klout Score”のような指標を確認するためのツールについては、国内海外問わず無料でいろいろなツールがあるので、知りたい情報にあわせて使っています」(辻氏)

その他のソーシャルメディア活用について伺った。

楽天レシピのピンタレスト「Rakuten Recipe」
http://pinterest.com/rakutenrecipe/

最近はピンタレストにすごく力を入れていて、ピンをどんどんつけていますね。あとはFacebookページも開設しています。ピンタレストは、うちが発信するというよりはコンテンツホルダーとして良質なレシピ画像を提供できればいいと思っています。そうしていくことで、ユーザーさんに“ピンづけ”してもらったり、“いいね”や“シェア”をしてもらっったりして、どんどん拡散してもらえれば嬉しいですね。僕等は戦略上、ソーシャルメディアを使ってユーザーが楽天レシピの外に出て行くことをまったく拒んでいないんです。今後、僕等のコンテンツをもとにソーシャルメディアの世界へどんどん広がっていけばいいと思っています」(濱野氏・辻氏)

これからもTwitterでユーザーの本音を探って行きたい

今年はFacebookが台頭してきているが、企業活用の観点でFacebookと比較したTwitterの魅力についてはどのように考えているのだろうか。

Twitterの方がユーザーの本音の部分がすけてくるのかな、と思います。匿名で投稿している方がほとんどですし、企業からの返信なんてまだまだ広がっていませんから、楽天レシピのスタッフが見ているかどうか考えながらツイートはしていないでしょう。

これがFacebookのファンページになってしまうと雰囲気がまったく変わってきますよね。楽天レシピのファンが集う場所で、本名を出して、友達もいるなかでサービスの悪口をストレートに言う人はなかなかいないですしね」(辻氏)

最近では楽天がピンタレストへの出資をしたことも注目を集めている。

そうですね。楽天レシピとしても、日本のレシピを海外に広げるためにうまくピンタレストを活用していきたいと思っています。豆腐やスキヤキ、天ぷら、キャラ弁など海外でもウケそうな日本のレシピはたくさんあります。特に、キャラ弁なんかはアメリカでは例がないでしょうから、驚かれるでしょう。健康というジャンルに関してももっと深くやっていきたいと思っています」(濱野氏)

最後に今後の抱負を伺った。

今や世の中では、ソーシャルメディアは流行ではなくユーザーの生活に定着していて、楽天レシピとしても、それを使わない手はないと思っています。ただ、ソーシャルメディアはやり方が重要で、それは対象となるソーシャルメディアや自社が取り扱うサービスによってまったく異なるものだと思っているので、それぞれのやり方に合うツールを使って提供していくということが大事だと思うんですよね。

発信したい人は発信するツールが必要となり、逆にコミュニケーションしたい人はコミュニケーションするためのツールが必要になりますから、今後もつぶやきデスクのような我々の運営スタイルにあったツールは積極的に活用して行きたいです」(濱野氏)

ありがとうございました。

◇◇◇

楽天レシピのTwitter戦略は“アクティブサポート”と言い換えられるはずだ。しかし、インタビュー全体を通じて、そのキーワードを聞くことを一度もなかった。それは、同社がネット上のユーザーとのコミュニケーションをソーシャルメディアが登場する以前から当たり前のように取り組んできたからなのかもしれない。もしそうであるならば、楽天グループは今後ソーシャルメディアを活用することで、さらに大きな存在となるのではないだろうか。ピンタレストの活用も含めて今後も同社のソーシャルメディア運営に注目していきたい。

酒井 亮平
アユダンテ株式会社
酒井 亮平(Sakai Ryohei)

愛知県出身。84年4月生まれ。学生時代に競泳・ヒッチハイク・インド放浪など。中央大学経済学部を卒業後、株式会社ECホールディングスにて数多くのECサイトへSEM、ユーザビリティ、アクセス解析に関するコンサルティングサービスを提供。2010年7月より、アユダンテ株式会社にてSEOコンサルティングとTwitterマーケティング・アクセス解析を担当中。Google Analytics IQ 保持。

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