誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。
毎週木曜9時は「かってに解析!」。だれもが知っている有名サイトをかってに取り上げ、「もしもアクセス解析をするならば、どこに目をつけるか?」という視点で、サイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。
前々回、前回に続いて、シティ型高級ホテルの「ザ・ペニンシュラ東京」を取り上げる(以下、本稿において、カギかっこ付きで「ザ・ペニンシュラ東京」と書くときは、ホテル名ではなくサイト名を指す。他のサイト、ホテルも同様)。
筆者は、ホテル業界のサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけでもない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。
「ザ・ペニンシュラ東京」の閲覧シチュエーションを想定
今回のサイト利用シナリオも、前々回、前回と同じく、以下の通りだ。会社の総務部の人が、役員の指示で、ザ・ペニンシュラ東京の予約を行うというものだ。
誰が | 会社の総務部の人 |
---|---|
何の目的で | 役員の指示で、ザ・ペニンシュラ東京の予約を行う |
具体的なタスク | オンラインでの宿泊予約と、ホテルまでのアクセスの地図の印刷 |
Webサイトで宿泊予約まで行ったうえで、ホテルの地図とアクセス方法が書かれたページを印刷するところまでが、具体的なタスクとなる。
「ザ・ペニンシュラ東京」をエキスパートレビュー!
ホテルへの地図を印刷する
予約は済んだので、最後にホテルまでのアクセスの地図の印刷をしよう。
地図は、グローバルナビゲーションの一番左の「現地情報」(図26の赤枠で囲んだ部分)をクリックして表示されるページから見ることができる。下方のプルアップメニューの「エクスプローラー」(図26の青枠で囲んだ部分)をクリックして表示される、「マップ&アクセス」(図26の緑枠で囲んだ部分)をクリックしよう。
すると、「マップ&アクセス」のページ(図27)になる。「ロケーションマップ」のタブが表示されているが、ぱっと見、駅もビルも同じマークで分かりにくい。例えば、JR東京駅と皇居、丸の内ビルディング、帝国劇場が、すべて同じ正方形のマークで表されている。
また、主要交通機関からの所要時間は、もう1つのタブ「空港からホテルまでの交通」(図27の赤枠で囲んだ部分をクリック、図28)で見ないといけない。
だとすると、「ロケーションマップ」と「空港からホテルまでの交通」の両方をプリントアウトしたいとすれば、それぞれのタブを印刷しないといけないということだろうか?
じつは、どちらのタブが表示されていても、右上に「印刷」のリンクがあって(図27の青枠で囲んだ部分)、これをクリックすれば、2つのタブのコンテンツ全部を一枚に印刷できるのだ。しかしながら、そういう印刷になるかどうかは、実際にトライしてみないと分からない。
何回かあちこちクリックしてページを行ったり来たりしてみたりしないと分からないというのは、ユーザビリティーとしては若干不親切に思える。
- 他のホテルサイトと比べてみた
他のホテルサイトと比べてみた
最後に同じようなシティ型高級ホテルをいくつか比較のために見てみた。
まずは、「ハイアット」だ。「ハイアット」は「ザ・ペニンシュラ東京」に比べると機能性重視で、ホテル検索がトップの右側にある(図29)。ホテルを検索したら、次は予約の入力ページという素早さだ。
次は「マンダリン オリエンタル 東京」(図30)。こちらもトップページの下方に宿泊予約の機能がある。空室確認後、プランを選択して進んでいくことができる。
最後は、「帝国ホテル東京」(図31)。こちらは、予約機能はファーストビューにはなく、控えめだが、右下に空室検索がある。
これら3つのホテルサイトが比較的予約機能を前面に出しているのに対して、「ザ・ペニンシュラ東京」はブランドイメージ重視の感がある。ちなみに、「ザ・ペニンシュラ香港」や「ザ・ペニンシュラ・ニューヨーク」などを選んでも、基本的にサイトの作りは同じなので、これはローカルの事情ではどうにもならないことのようだとも推察できる。
- 3回分のまとめ&アクセス解析の視点からのチェックポイント
3回分のまとめ&アクセス解析の視点からのチェックポイント
最後にアクセス解析的な視点で見るべきポイントをまとめておこう。
集客面で検索連動型広告などを行っているのであれば、集客面での効果測定などとともに最適化をしていく必要があると思われるが、今回その部分についてはやっていないという前提で話をしよう。
- トップページについて
おそらくサイト訪問者の主な入口ページはサイトのトップページだろう。リピーターの予約客の訪問が多いような気がするが、実際どのようなユーザーが訪問しているのか、入口ページは果たしてトップページなのかという点を確認しておきたい。その上で、全体の人気ページを見ることで、現在のグローバルナビゲーションで表示しているテキストリンクの配置が本当にこれでよいのかを確認したい。
もちろん世界各国にあるすべてのホテルで共通にしなければならないというルールがあるのだとは思う。しかし、「ご予約」の位置は右から2番目でいいのだろうか。もし、ニーズが高ければメインビジュアルの一角を削ってでも、他のサイトと同様に予約の機能をトップページに直接配置するということも検討に値するのではないだろうか。
トップページ下のナビゲーションはクリックしてもURLの変化はないので、クリックイベントなどを計測して、どれだけクリックされたかを計測しておくことが重要になるだろう。グローバルナビゲーションも、マウスオーバーやクリックイベントを計測して、グローバルナビからの直接のアクセス状況を取得しておくとよいだろう。
- 予約機能全般
他のホテルサイトと比較すると、他のサイトではとにかく予約機能を前面に出しているのに対して、「ザ・ペニンシュラ東京」では、ブランド重視のせいなのか、予約機能が目立っていない。ここではユーザビリティテストとA/Bテストの両面からサイトの改善を考えてみたい。
ユーザビリティテストなら、他のサイトと並列に予約を実際にやってもらうというのも手だろう。どこがよくて、どこが分かりにくいのかといった点は明らかにした方がいい。「部屋のグレード選択→プラン選択」が自然だと思うが、「プラン選択→部屋のグレード選択」というプロセスはユーザーにとって使いやすい流れなのかは、例えば、前回3ページ目の図17でパッケージを改めて確認する人が多いのであれば、私の仮説が裏付けられるのではないか。
A/Bテストは、トップページなどで予約機能を直接配置した場合とそうでない場合とで、どの程度の予約率の違いがあるのか、予約までのページビュー数や滞在時間などが比較できれば、そのような評価軸でテストしてみたい。
- その他コンテンツ部分
コンテンツ部分でも、「プルアップメニューしかないために、一覧性が悪い」という指摘をしたが、これもユーザビリティテストを実施してみたい。言葉使いの分かりやすさなども検証したい。図27のマップや印刷機能などもユーザビリティテストでチェックしておきたい項目だ。
- 予約プロセスの検証
前回の4ページ目で取り上げた、お名前とクレジットカード詳細を入力するページでのエラー率は高いのではないか。姓名のローマ字、携帯電話番号のハイフンなど。これはA/Bテストするまでもないように思えるが、入力例の記述を追加して、エラー比率の前後比較などをすぐに確認してみたい。
また、宿泊日数の最大14日というところも、実際クリックする人がいるのだろうか。スキップもできるこだわりのオプション機能(図21から図24)は、けっこう使われているのであれば、こういったキメ細かい指定は重要だということが言えるだろう。
そして、図25のご予約内容の確認画面で、最後のステップでの修正というのはあるのか、あるのであればどのパート部分なのか、その場合に何を修正しているのかということで、予約ステップの改善に結び付けられる可能性がないかを検証したい。
さて、この連載では、
- Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
- 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論
などを随時募集している。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。
衣袋教授の丸2日でアクセス解析を徹底的に学ぶ講座「アクセス解析ゼミナール」を2012年1月19日と1月26日に開催します。主催はアクセス解析イニシアチブ。年内申込みで早割あり。 → http://a2i.jp/activity/semi/10333
- 記事種別:解説/ノウハウ
- 内容カテゴリ:アクセス解析
- コーナー:有名サイト、かってに解析!
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:もしも、「ザ・ペニンシュラ東京」を解析するなら(下)[第47回] [有名サイト、かってに解析!] | Web担当者Forum
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