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もしも、「デル」を解析するなら(後半)[第44回] [有名サイト、かってに解析!] | Web担当者Forum

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この記事を読むのにかかる時間: 約 7.5

誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。

有名サイト、かってに解析!

毎週木曜9時は「かってに解析!」。だれもが知っている有名サイトをかってに取り上げ、「もしもアクセス解析をするならば、どこに目をつけるか?」という視点で、サイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。

今回は、前回に引き続き、コンピュータ直販大手のデル株式会社(Dell Japan)の公式サイトを取り上げる(以下、本稿において、カギかっこ付きで「デル」と書くときは、会社名や製品名ではなくサイト名を指す。他のサイト、企業も同様)。

筆者は、コンピュータ直販業界の会社やサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけでもない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。

「デル」の閲覧シチュエーションを想定

今回のサイト利用シナリオは、前回同様、以下の通りだ。筆者がいま、実際に利用しているパソコンの状態が思わしくなく、サポートページを使って情報検索と問題解決ができるかどうかを行ってみたものだ。

誰が デルのパソコンユーザー(スモールオフィスの法人ユーザー)
何の目的で 利用しているパソコンの不具合について調べる
解決したいこと 筐体(きょうたい)から発生する異常な騒音の原因と対処方法を知りたい

「デル」をエキスパートレビュー!

前回のおさらい

前回は、「デル」のトップページからサポートページを探し、サポートを受ける製品を絞り込むところまでを見てみた。

トップページは、ファーストビューの情報量が少ないという印象だったが、サポートページはページ上部にあるプルダウンメニューからたどることができたので、支障とはならなかった。

トップページのデザインは、日米のサイトを比較した限りでは共通だった。全世界共通デザインなのではないかと思われる。ただし、各要素の順番や内容は異なっており、カスタマイズしてあった。

サポートページで、サポートを受けたい製品を絞り込むのには、「サポートタグ」という仕組みが使われていた。サービスタグとは、5~7桁の英数字が書かれたラベルのことで、製品1台1台に異なる番号が割り振られている。これを入力することで、製品の型番が一発で特定できるという仕組みである。パソコンのわかりやすい場所に貼られていて、実際すぐに見つかり、迷わず入力できた。

前回はここまでだった。今回は、サポートページから「筐体(きょうたい)から発生する異常な騒音の原因と対処方法」を探してみることにする。

検索ボックスを使って検索してみる

筆者のパソコンのサービスタグに書いてある英数字を入力して、[検索]ボタンをクリックしたところ、表示されたのが図12(再掲)だ。該当製品のサポートページということになるのだろう。筆者のパソコンは「Dell Precision WorkStation 390」ということだ。

少々文字の色が薄くてわかりにくいが、「ドライバ」「マニュアル」などの関連情報のタブ(図12の赤枠で囲んだ部分)が表示され、その他の主なサポートページへのリンクも準備されている。

ここに表示されているFAQ的な質問には、目的の情報が掲載されているページはなさそうなので、検索ボックスを使って検索機能を利用してみることにしよう。

検索ボックスは、サポートページのもっとも目立つ位置に置かれている(図12の青枠で囲んだ部分)。おそらくさまざまな質問があることを想定して、検索ボックスをページの中心に据えているのだろう。ただ、なぜかずいぶんそっけない。この場所には十分スペースもあるので、「検索」という味気ない表示の替わりに、「問い合わせしたい内容が含まれるキーワードを入力して下さい」くらいの文章で説明してもよいのではないだろうか

  • 「騒音」というキーワードで検索
  • 単純に「音」というキーワードで検索

「デル」をエキスパートレビュー!(続き)

「騒音」というキーワードで検索

今回は、筐体から発生する騒音について調べたいので、まず「騒音」というキーワードで検索してみた。図13がその結果ページだ。

図13:「騒音」の検索結果ページ
図13:「騒音」の検索結果ページ

「検索結果なし」と表示された。残念ながら、候補の表示はなかった(図13の赤枠で囲んだ部分)。その直下に、その他のカテゴリーでの関連検索結果では少し関係ありそうなページが紹介されている(図13の青枠で囲んだ部分)。

しかし、さらにその下は製品広告で、サポートページにはおよそ相応しくないコンテンツが表示されているのは残念だ。その他の関連する検索語の提案などがあると、もっとよいのではないかと感じた。

単純に「音」というキーワードで検索

「騒音」がダメなら、単純に「音」ではどうだろうか。これならさすがに検索結果表示はあるだろう。再検索してみたところ、今度は全部で520件と膨大な検索結果が表示された(図14の赤枠で囲んだ部分)。

図14:「音」で検索して表示された結果ページの上部
図14:「音」で検索して表示された結果ページの上部

1ページに検索結果のリンクが12件、一番下には「探している情報は見つかったか?」というアンケートもついている(図15の赤枠で囲んだ部分)。

図14:「音」で検索して表示された結果ページの上部
図15:「音」で検索して表示された結果ページの下部

表示された情報が探している情報なのかどうかは、リンク先の問題解決ページを見てみないと判断できない。であるから、このページでは、情報が見つかったかどうかを尋ねるこのアンケートには、普通答えられない。そしてリンク先のページで情報が見つかって問題解決したら、わざわざこの検索結果のページには戻って来ないだろう。と考えるならば、情報発見と問題解決はセットにして、最後のページで聞くのがよいのではないだろうか。あるいは完全にサイトから去る時点で、情報発見と問題解決のそれぞれについて聞くのがよいと思う。

  • 検索結果に表示されたリンク先のページを見てみる

「デル」をエキスパートレビュー!(続き)

検索結果に表示されたリンク先のページを見てみる

今回の目的である「筐体から発生する騒音トラブル」に関連しそうなページを検索結果から表示してみたのが、図16図17だ。

図16:パソコンから異常な音がする場合の対処方法
図16:パソコンから異常な音がする場合の対処方法

まず、図16は、「音」で検索した検索結果ページ(前ページ図14)の一番上に表示されている「パソコンから異常な音がする場合の対処方法」をクリックして表示されたページだ。

  • ファンによる騒音
  • スピーカからの異常音
  • ハードディスクへのアクセス音
  • メディアドライブからの音

という4つの原因が案内されている。確かによくある現象として代表的な答えだ。しかし今回は、内部のさまざまな振動が総合的に筐体に響いて騒音を発しているようなので、残念ながら対象外だ。

そこで検索結果の3番目の「異音箇所特定必要な場合の切り分け方法」(前ページ図14の青枠で囲んだ部分)のページを見てみたのが図17だ。

図17:異音箇所特定必要な場合の切り分け方法
図17:異音箇所特定必要な場合の切り分け方法

一番下の「異音発生箇所の特定」という部分(図17の赤枠で囲んだ部分)で、それぞれのパーツのどれが原因なのかを1つずつ確認するしかないということだ。常識的にこのような回答しかなさそうだとは思っていたが、これが今回の求める答えとしては妥当なところだろう。

今回の問題は、少し抽象的だったので、想定の範囲内の答えしか出てこなかったが、まあ常識的な回答ということで、これ以上望んでもいけないだろう。

  • 他にどのような問い合わせの対応方法があるか?
  • アンケートではどのようなことを聞いているのか?

「デル」をエキスパートレビュー!(続き)

他にどのような問い合わせの対応方法があるか?

今回の問題は検索によって解決されたわけだが、検索の他にどのようなお問い合わせ対応方法が用意されているのかを確認しておこう。

前ページの図16の青枠で囲んだ部分や図17の青枠で囲んだ部分にある「テクニカルサポート」のリンク先が、「テクニカルサポートへのお問い合わせ」のページだ(図18)。サイトでの検索以外にも電話、FAX、メール、チャットなどというものまであった。

「チャットへ接続する」(図18の赤枠で囲んだ部分)をクリックしてみると、「デル テクニカルチャット」のページが表示された(図19)。

図18:「テクニカルサポートへのお問い合わせ」
図19:「デル テクニカルチャット」のページ

法人客は平日の9時~17時の対応だが、個人客は平日休日を問わず9時~17時半までとなっていて、休日(年末年始、祝日は除く)も対応してくれている。土日でも使えるのはうれしい。試してみなかったが、特別なソフトウェアのインストールも必要なくできるようだ。

アンケートではどのようなことを聞いているのか?

最後に、質問の検索結果ページで表示されていたアンケート(図15の赤枠で囲んだ部分)について、さかのぼって改めて内容を確認してみた。

図15(再掲):「音」で検索して表示された結果ページの下部
図15(再掲):「音」で検索して表示された結果ページの下部

「お探しの情報がみつかりましたか?」という問いに対して[はい]あるいは[いいえ]ボタンをクリックすると、図20のような「ご協力ありがとうございました。」表示になる。

図20:アンケートに回答した後の表示
図20:アンケートに回答した後の表示

[はい][いいえ]の右にある[詳細を記入]ボタンを押すと、図21のように意見を書くことができる記入部分が表示されるというものだった。

図21:[詳細を記入]ボタンをクリックすると表示される画面
図21:[詳細を記入]ボタンをクリックすると表示される画面
  • 前回・今回のまとめ&アクセス解析的視点からのチェックポイント

前回・今回のまとめ&アクセス解析的視点からのチェックポイント

最後にアクセス解析的な視点で見るべきポイントをまとめておこう。

  1. トップページの利用状況

    トップページから次の閲覧ページへは、「上部の対象ユーザー別のナビゲーション」と「下部の各コンテンツへのリンク」からが主動線だと考えられる。

    下部のコンテンツはファーストビューの範囲に表示されていないが、こちらのナビゲーション利用のニーズも高いと考えられるので、クリックマップのようなツールを利用して、トップページのリンクの利用状況を把握しておく必要があるだろう

    計測の結果、ファーストビューには表示されない「オンラインストア」「コミュニティ」「製品情報/サポート」「企業情報」「マイアカウント」部分のリンクのクリックがある程度あるのであれば、ユーザー別とは違う軸でのグローバルナビも提供するようなことを検討したい

    メインビジュアル部分は、ファーストビューの大部分を占めているが、ここが本当にクリックされているのだろうか。調べられるならば、ぜひ調べてみたい。もちろん全世界で共通のインターフェースといった縛りがあるだろうから、簡単に変更できない部分だとは思うが。

  2. サポートページ関連

    今回主眼となっているのがサポートページなので、そこを中心に話を絞る。サポートページでは、見られているコンテンツのボリュームによって、人気のカテゴリーが順位付けできるはずだ。その順位が、実際にサポートのトップで表示してある「ドライバおよびダウンロード」「製品サポート」「Windows 7」「お届け予定案内とサポート」とマッチしているのかは確認しておきたい。また各カテゴリー内での人気順位による表示順位の調整なども必要だろう。

  3. 質問内容検索ページ

    サポートの満足度を向上させるという点では、サービスタグを入力して表示される製品ページで、知りたい事柄を検索した結果、求める情報がきちんと表示されているかどうかが、最も重要になるだろう。今回の例では、ある単語では検索結果が0件で、関連検索結果は出てきたがマッチした感触はなかった。

    まず、「検索結果なし」の場合を考えてみよう。「検索結果なし」だったケースでは、直帰率、関連検索結果のリンクのクリック率、そして「次に検索した言葉」が何なのかが重要になる。「次に検索した言葉」を蓄積すれば、「検索結果なし」だった場合に、「別の検索候補語」として表示できるようになるだろう。

    次に検索結果が表示された場合だが、ここでも直帰率、検索結果のリンクのクリック数、クリックされたリンクの表示順位などを見ていくことが必要だろう。直帰率が高ければ、望んだ結果があまり表示されていないことが想像できる。クリックされたリンクの表示順位が5位以内であれば、おおむね検索結果はマッチしていることになるが、逆にクリック件数も多く、下位のリンクまで次々にクリックされているようであれば、検索結果はあまりマッチしていないものが多く表示されていると評価できる。

  4. アンケート

    検索結果ページの一番下に表示されるアンケートは、なかなか答えにくいのではないかと本文中に解説したが、どの程度利用されているのかを調べてみたい。また別途Webサイトから退出する際に、情報検索が成功したのか、問題解決ができたのかという2点をアンケートで素直に聞いてみるという手も試みるとよいのではないだろうか

  5. 他のサポート手段の利用

    「デル」では、Webでの検索以外に、電話やメール、FAX、チャットなどの手段が用意してある。それならば、Webサイトを見た人専用の電話番号やメールアドレスなどを表示して、それらの手段を利用している人の割合がどのくらいいるのかといった視点でデータが取得できるようにしておくとよいだろう

    またこれはアクセス解析だけの範囲に留まらないが、あらゆるチャネルを含めたサポート全体に対する満足度、問題解決度合い、トータルコストの削減といった視点でデータを集めて全体評価をすることが大事だろう。

◇◇◇

さて、この連載では、

  • Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
  • 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論

などを随時募集している。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。

衣袋教授の丸2日でアクセス解析を徹底的に学ぶ講座アクセス解析ゼミナール」を2012年1月19日と1月26日に開催します。主催はアクセス解析イニシアチブ。年内申込みで早割あり。 → http://a2i.jp/activity/semi/10333

衣袋 宏美

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社インターネット視聴率センター長を経て、2000年ネットレイティングス入社視聴率サービス立ち上げに参画、2006年ネットレイティングス社フェローに就任。株式会社クロス・フュージョン代表取締役。またデジタルハリウッド大学院客員教授、米Web Analytics Association会員、アクセス解析イニシアチブ副代表。

著書など:
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