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もしも、「外務省」を解析するなら(前半)[第52回] [有名サイト、かってに解析!] | Web担当者Forum

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この記事を読むのにかかる時間: 約 5 分

誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。

有名サイト、かってに解析!

毎週・木曜9時は「かってに解析!」。誰もが知っている有名サイトをかってに取り上げ、「もしもアクセス解析をするならば、どこに目をつけるか?」という視点で、サイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。

今回は「外務省」を取り上げる。

外務省は、国家の外交に関する事務のほかに、外国政府との交渉や連絡、情報収集、情報分析、在外邦人の保護などを主な担当業務とする省である。改めて言うまでもないが、日本の行政機関でも、もっとも重要な省庁の1つである(以下、カギ括弧付きで「外務省」と書くときには、外務省自体ではなく、外務省のWebサイトを指す。他の省庁や行政機関も同様)。

今回は、国の行政機関のサイトを取り上げ、課題の抽出や考察を行うのだが、筆者はさまざまな行政機関やそのサイトが直面している課題や役割を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。

「外務省」の閲覧シチュエーションを想定

今回のWebサイト利用シナリオは、「エジプトに旅行しに行こうと考えている人が、今行っても安全なのかを確認し、パスポートやビザを申請する」というものだ。

誰が エジプト旅行を企画している人
何の目的で 安全情報の確認と手続きの確認
具体的には 渡航情報のチェック、ビザの要不要の確認、パスポート申請方法の調査

「外務省」をエキスパートレビュー!

「外務省」と検索すると、当然1位に表示

まず「外務省」と検索すると、「Yahoo! JAPAN」(図1)でも「Google」(図2)でも、自然検索では1位表示されるのは外務省の日本語版Webサイトだ(図1図2の赤枠で囲んだ部分)。

図1:「Yahoo! JAPAN」で「外務省」と検索した検索結果画面
図1:「Yahoo! JAPAN」で「外務省」と検索した検索結果画面
図2:「Google」で「外務省」と検索した検索結果画面
図2:「Google」で「外務省」と検索した検索結果画面

検索結果の第3位にあるのが外務省の英語版Webサイトであり、こちらの英語版の方が、外務省を表す「www.mofa.go.jp」というサブドメインのトップページになっている(図1図2の青枠で囲んだ部分)。

では、日本語版WebサイトのURLはどうなっているか見てみると、サブドメインは「www.mofa.go.jp」だが、その直下ではなく、 /mofaj/ ディレクトリの配下に配置されている(図1図2の緑枠で囲んだ部分)。

今回の記事で分析対象とするのは、もちろん日本語版の「外務省」の方である。

  • 「外務省」のトップページはどんな感じ?

「外務省」をエキスパートレビュー!(続き)

「外務省」のトップページにはどんなコンテンツがある?

それでは「外務省」のトップページを見ていこう(下の図3)。

右上部にサイトマップや検索機能がまとめられ、上部にはグローバルナビゲーションがあり、その下に「震災関連情報」とメインビジュアルが大きく目に入る。

左右に画像やテキストのリンクが並び、中央エリアの下部は、「ピックアップ」「新着情報」「お知らせ」と続いている。

図3:「外務省」(日本語版)トップページ
図3:「外務省」(日本語版)トップページ

カテゴリー分けの仕方・見せ方に難点がある

「外務省」を訪れる人の目的は広範囲にわたり、多種多様なコンテンツへのリンクが多くなってしまうのは理解できるが、もう少し目的別にスムーズに移動できるようなカテゴリー分けや見せ方ができるのではないだろうか

例えば、左側に配置してあるバナー広告っぽいリンク(図3の赤枠で囲んだ部分)は、一応「外交政策」「地域・各国情勢」「渡航関連情報」「政府広報」といったカテゴリー分けがしてあるのだが、バナーの華やかさの前に隠れてグルーピングの視認性が悪い

また、このバナー内の文字の大きさや色、スタイルがみなバラバラで、個々の主張が強すぎる。1 つずつしっかりとなめて見ていかないとわかりにくい。リンク先については、右側にあるテキストリンク(図3の青枠で囲んだ部分)と重複しているものもあるようで、コンテンツのグルーピングをしっかりして、コンパクトにした方が選択しやすいのではないだろうか

大きく分けてユーザーの利用目的は、

  • 外務省そのもの(組織や仕事、採用情報など)に興味がある人
  • 外交政策などを調べる人
  • 海外情報について調べようとしている人
  • 渡航のために必要な情報を得ようとしている人

などといった分類ができるように思う。できれば、そうした分類に沿って、グルーピングするとより使いやすくなるのではないだろうか。

  • エジプト旅行を企画している人の視点で見ていこう

「外務省」をエキスパートレビュー!(続き)

シナリオに沿って、エジプト旅行を企画している人の視点で見ていこう

さて、今回の「外務省」利用シナリオは、「エジプトに旅行しに行こうと考えている人が、今行っても安全なのかを確認し、パスポートやビザを申請する」というものだった。シナリオに沿ってページを見ていこう。

「アラブの春」の影響で、アフリカ北部各国で政情不安定な状況も漏れ聞こえてくるので、安全に渡航できそうかどうかという情報を探したい。

トップページのグローバルナビゲーションを見ると、左から2番目に「渡航関連情報」というのがあるので、まずこれをクリックしてみる。すると現れるのが図4の「渡航関連情報」のページだ。

図4:「外務省」の「渡航関連情報」のページ
図4:「外務省」の「渡航関連情報」のページ

左上の「海外安全対策」とあるブロックの「海外安全ホームページ」と書いてある画像リンク(図4の赤枠で囲んだ部分)が求めている情報に最も近そうだ。クリックすると図5の「海外安全ホームページ」に進む。

直感的にわかりやすい「海外安全ホームページ」でエジプトを探す

図5:「外務省」の「海外安全ホームページ」
図5:「外務省」の「海外安全ホームページ

メインビジュアルが世界地図になっていることから、ここでは自分が調べたい地域を選択すればよいということが直観的にわかる。さまざまな検索方法があるが、一番わかりやすい地図をクリックする方法を実行してみよう。

まず大雑把にエリアを選択するようだ。エジプトは北アフリカなので、「アフリカ(北側)」のエリア(図5の赤枠で囲んだ部分)をクリックしてみる。

  • 「アフリカ(北側)」のエリアから、エジプトの情報を絞り込んでいく

「外務省」をエキスパートレビュー!(続き)

アフリカ(北側)のエリアから、エジプトに絞り込む

すると図6のような北アフリカの国名が記入された詳細な地図が出てきた。

図6:「地図からの選択」の「アフリカ(北側)」
図6:「地図からの選択」の「アフリカ(北側)

エジプトの場所を示している2番のエリア(図6の赤枠で囲んだ部分)を地図上でクリックすると、図7のようにエジプトに関する感染・スポット・危険情報のページが表示された。

図7:エジプトに関する「感染・スポット・危険情報」
図7:エジプトに関する「感染・スポット・危険情報

ページの内容を見ると非常に詳細に事実関係がなるべく客観的に書かれているように思えるのだが、これを丹念に読む気になる閲覧者は限られるように感じた。後で実は出てくるのだが、5段階評価みたいなものはここで示してくれるのがよいと思う。その上でさらに詳細情報を知りたい人は、細かい情報を読み進めていくというのが自然な流れになるだろう。

このページはタイトルのとおりで、「感染症関連情報」「最新スポット情報」「危険情報」の3つがどうも順番に並んでいるようだ。

一番上の「感染症関連情報」は、別のページへのリンクがあるだけで、まったく意味をなしていない(図7の緑枠で囲んだ部分)。「最新スポット情報」は事件情報を記載しているようだ。おそらく読者が一番注目しているのは、最後の「危険情報」だろう。

図7では最後の赤枠で囲んだ部分が、今回知りたい情報が掲載されている箇所だ。しかしこれも全文を読む気にはなれない。図7の青枠で囲んだ部分に「地図1」というリンクがあるので、これをクリックしてみた。

  • 「アフリカ(北側)」のエリアから、エジプトの情報を絞り込んでいく

「外務省」をエキスパートレビュー!(続き)

エジプトの「危険情報」の「地図1」をクリックしてみると

図7の青枠で囲んだ部分に「地図1」というリンクをクリックしてみると、「エジプトに対する渡航情報(危険情報)の発出」というページが表示された(図8)。

探していた情報は、まさにこれだ。図6直下のパラグラフでも話したとおり、こういう何段階かで表示した危険評価の情報こそが、ユーザーが直観的に理解できるものだ。どこがどのくらい安全なのか、危険なのか、これだけでも十分なくらいだ。もちろん色分けの定義はきちんと理解させる努力は必要だろうが、これをどう判断するのかはユーザーの責任だ。

このページを見て、さらに時間をかけて詳しい情報を知りたい人が、図7の「エジプトに関する「感染・スポット・危険情報」を読めばいいのだ。

やはり見せる順番は逆の方がよいと思う。

さて、今回はここまでにしよう。「エジプトに旅行しに行こうと考えている人が、今行っても安全なのかを確認し、パスポートやビザを申請する」というシナリオの前半、すなわち「安全なのかを確認する」ところまでが終わった。次回は、「パスポートやビザを申請する」ための手続きを調べていこう。

◇◇◇

さて、この連載では、

  • Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
  • 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論

などを随時募集している。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。

衣袋 宏美

衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)

1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社インターネット視聴率センター長を経て、2000年ネットレイティングス入社視聴率サービス立ち上げに参画、2006年ネットレイティングス社フェローに就任。株式会社クロス・フュージョン代表取締役。またデジタルハリウッド大学院客員教授、米Web Analytics Association会員、アクセス解析イニシアチブ副代表。

著書など:
Web担当者Forumでの連載:
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