企業サイトで動画を利用する方法をイチから解説するこのコーナー。今回は社内スタッフで動画撮影から編集、配信までを行うと想定し、実践方法を紹介していきます。機材調達を含めて予算15万円で実践します。
セミナーやイベント告知に動画を活用
第1回で動画制作の基本的な流れについて説明したように、最も重要なのは動画コンテンツの活用目的です。そこで今回は次のような目的を想定して、動画配信するまでの流れを説明していきます。予算も限られていますから、屋外ロケやプロへの制作依頼はせずに、社内会議室を使い社内スタッフのみで撮影を行っていきます。
- 目的:自社開催のセミナーの告知を行う
- 予算:15万円(機材込み)
- スタッフ:ディレクター1名、撮影1名、説明役1名(社内スタッフ3名)
- 撮影場所:社内会議室
- 動画の長さ:2分
- 動画掲載場所:自社サイトで公開
- 撮影機材:家庭向けビデオカメラを使用
- 編集内容とソフト:「Windows Live ムービー メーカー」を使い説明のテロップを入れる
今回の予算 15万円(機材調達を含む)
撮影に必要な機材選び
まず撮影するためにはビデオカメラが必要です。携帯電話やデジカメでも動画撮影は可能ですが、企業Webサイトのビジネスコンテンツとして制作するのであれば、専用のビデオカメラを用意しましょう。製品紹介やセミナー講演など幅広い用途で利用できますし、一度使ってみるとクオリティの差や撮影のしやすさをはっきりと感じ取れるはずです。また、専用機材での撮影を体験しておくことによって、プロに頼む際の注意点や業者選定のポイントがわかってきます。
では、基本的な機材について紹介していきましょう。
- ビデオカメラ
- 三脚
- 照明
- 編集ソフト
- マイク
- 音声・画像素材集
- アクセサリー類
- その他
【必須】
ビデオカメラ(5万円前後)
予算は15万円ですから家庭向けのビデオカメラから選びます。プロ用の機材と比較すると機能やクオリティ面に差があるのは事実ですが、1~2年以内に発売された商品なら機能的には十分です。予算にもよりますが、今回は5万円前後の機種から選んでいきます。ちなみに、価格.comの2012年1月末現在のトレンドによると、売れ筋価格帯は、20,000~39,999円が約6割のようですが、見てみると高品質、多機能化が進んでいます。
5万円前後で探すと数十種類の製品がでてきますが、どれも今回の撮影に十分な機能を備えています。実際に手に取ったときに操作や撮影がしやすいかも大切ですが、初めて撮影する方が知っておくと便利な、カタログスペックからわかる選択のポイントをいくつか紹介します。
- 画質
大きくわけると、スタンダード(SD)、ハイビジョン(HD)、フルハイビジョン(フルHD)の3種類がありますが、主流はフルハイビジョンになりつつあります。ブロードバンド化、高画質化が進むなか、これから購入という方はフルハイビジョンを選択することをおすすめします。
- 最低被写体照度
撮影可能な明るさを示しています。3ルクスもあれば十分ですが、数値が低くなればなるほど、暗い所での撮影が可能になります。
- ズーム機能
ズームには、「光学ズーム」と「デジタルズーム」の2種類があります。「光学ズーム」は●倍といった倍率の高いもののほうが遠いものを綺麗に撮影できます。「デジタルズーム」は無理やり画像を引き伸ばしているので、高倍率になると画質は一気に劣化します。あまり使わないほうがいいでしょう。また、ズームにすると、少しの手ブレでも大きく映像が揺れているように見えますので、注意が必要です。
- 焦点距離
30mm-300mm、50mm-500mmといった記載があります。最初の数値が小さければ広く広角に撮影でき、値が大きくなれば狭くなるため、望遠になります。つまりこの値のレンジが広い方が使い勝手が良くなるということです。一般的に、広角のもののほうが室内撮影などには向いており、望遠のもののほうが屋外風景や遠くのものを撮影するのに向いています。
- 手ブレ補正機能
カメラが揺れを感知し、映像がまっすぐ撮れるように細かく補正する機能です。初心者には、付いていると心強い機能の1つです。歩き撮りに強いタイプ、ズームに強いタイプなどがあります。
- バッテリーの持ち時間
大きさやメーカーなどで変わるため事前にチェックしましょう。今回は長い収録は行わない前提ですが、2時間くらいの収録ができるものを選んでおくと、外部で収録する際にも便利です。付属バッテリーの持ち時間に加え、必要に応じて予備バッテリーも用意しておくといいでしょう。
- 記録媒体と撮影フォーマット
ビデオカメラ選びの際に、気をつけておきたいのは記録媒体と撮影フォーマットです。記録媒体は、HDD録画もしくはメモリー録画できるものの方が、PCへとデータを直接移せるため後の編集作業が楽になります。
撮影フォーマットは画質にも影響する要素ですが、現在主流のAVCHD準拠(ハイビジョン映像をビデオカメラで記録するための規格の1つ)のMPEG4形式や、HDV形式(ハイビジョン規格)を選ぶといいでしょう。ここで注意すべき点に、ビデオカメラの撮影フォーマットが後述の編集ソフトに対応しているかがあります。また、撮影フォーマットによってはWebにそのままアップロードができないため、編集して変換する必要があります。たとえば、YouTubeはMPEG4形式には対応していますがHDV形式には対応していません。
その他、最近では、人物の顔に自動的にピントをあわせてくれる「顔認識機能」や、コントラストを自動的に補正してくれる機能などもあります。今回はマストではありませんが、便利な機能として挙げておきます。
【必須】
三脚(1万円前後)
ビデオカメラを安定させ、きれいな映像を撮影するには三脚(約1万円から)が必須です。最低限、ビデオカメラと三脚さえあれば撮影を始められます。小型から大型までさまざまですが、1m50cm程度まで調整できるものを選んでおけば十分でしょう。
【こだわるなら】
照明(2万円前後)
必須とまではいきませんが、よりきれいな映像を撮影するのであれば用意しましょう。いまのカメラは、室内照明だけでも十分きれいに撮影できますが、照明を使うと、光量を増やすことで(明るくなる)、映像や撮影対象のクリアさが増します。今回は、会議室での撮影という前提ですが、オフィスの照明は天井のみという場合がほとんどでしょう。照明が上からのみ当たっていると、顔の凹凸などで影ができやすくなりますが、照明をあてることで、影をなくすこができます。また、蛍光灯のみの照明の場合、映像が青白くなりやすいのですが、フィルタ付きの照明機材を使うと、青白くなった映像を補正する(色温度を変える)ことができます。
初めてのネット動画制作という場合、照明選びのポイントとしては、カメラに取り付けられるタイプをおすすめします。理由は2つあり、1つはカメラマンが照明を兼務できることです。今回は3名という設定ですので、照明専門の担当者を付けることなく、照明を当てることができます。
もう1つの理由は、カメラに取り付けることで、演者に対して正面から、きっちりと照明を当てられるからです。照明担当のプロフェッショナルは、ストーリーや撮りたいイメージにあわせて、色味の細かな調整や明暗を使い分け撮影映像にメリハリを与えていきますが、今回の場合は、セミナー内容が明確に伝わることが一番大切です。細かな照明調整を行う必要性は低く、むしろ、照明位置を固定してしまい、同じ角度から安定して照明を当てられるほうがいいでしょう。
【必須】
編集ソフト(0円~2万円)
視聴者のことを考えると撮影した動画は編集すべきです。今回はセミナーの告知ですので、セミナーのテーマ、開催日時、場所などが簡潔にまとめられ、強調したいポイントはテロップ(文字)が入っている、というのが見る側にとってもわかりやすいでしょう。
カメラ付属のバンドルソフトやフリーソフトでも映像編集ソフトは数多くありますが、映像をつなぎ合わせるシンプルなカット編集しかできないなど、制約も多くインターフェイスもとっつきにくかったりしますので、予算に余裕があるなら商用製品の購入をオススメします。一昔前に10~20万円出して購入したレベルのものが今では2万円程度で購入でき、編集から簡易なエフェクト、テロップ入れ、BGMの追加や音量調整などまでできます。なかには「YouTubeやFacebookにも簡単にアップ!」などの売り文句があるものもあります。
今回はなるべく予算を抑えるため、日本マイクロソフトが無償提供するWindows Vista / 7向け編集ソフト「Windows Live ムービーメーカー」(Windowsのバージョンによっては「Windows ムービー メーカー」が標準インストールされています)の利用を想定して進めていきます。ムービーメーカーでも取り扱える素材は多く、場面転換や映像に載せるエフェクトもそれなりに揃っており、テキストを打ち込んでテロップなどを挿入することもできるため、まず試してみるのがいいでしょう。あくまで簡易な編集+αの味付けしかできませんが、編集をはじめて行うのであれば十分です。操作も直感的にできて簡単ですし、便利に使えると思います。
【こだわるなら】
マイク(5,000円)
音質にこだわるのであればマイクを用意する必要があります。音に関しては映像よりもシビアに金額とクオリティが比例しますが、カメラマイクは幅広く音を拾ってしまうため、演者の声だけを拾いたい場合は、ハンドマイクやピンマイク(ラベリアマイク)の用意が必要です。1本5千円程度から購入できます。
今回は演者が1人の設定ですが、複数名いる場合は、複数の音声入力を1つの音声として出力するポータブルのミキサー(約5,000円から)も購入しておきましょう。その他、細かい音量調整や音質調整などもできます。ほとんどのカメラは音声の入力が一系統しかないため、複数の演者がしゃべるような場合、ミキサーを通して1つにまとめる必要があります。想定される人数をもとにミキサーの入力数を確認して購入しましょう。ほとんどの場合、3つほど入力があれば十分です。
【こだわるなら】
音声・画像素材集(1万円~2万円)
ロイヤリティフリーの素材(画像やBGMなどの音素材)購入費や撮影時の費用として、1~2万円程度を用意しておきましょう。映像にBGMなどを加えることで格段に質があがります。素材集のCD-ROMなどを購入してもいいですし、最近はオンラインから1つ単位で購入できるサービスもあります。
アクセサリー類
必要に応じてビデオカメラの予備バッテリーや延長コードなどアクセサリー類を検討しましょう。また、カンペ用の画用紙(スケッチブック)やマジックペンなど、いざというとき、その場になって気づくものに対しての出費もバッファとしてみておくといいでしょう。
- 予備バッテリー
- 電源タップ
- 延長コード
- スケッチブック
- マジックペン
- ストップウォッチ
- 養生テープ/ガムテープ
その他
外部で撮影を行う場合は、貸し会議室など外ロケの費用や軽飲食代(ケータリング費)、ロケ地が外であれば移動交通費なども考えられます。撮影場所が変われば準備も異なります。公共の場所であればあるほど各方面に許可を取ったり、一般の方にぼかしを入れたりするなどの準備が必要なので注意しましょう。
また、できれば編集用のPCを購入したいところですが、最近のPCであればスペック的には問題ないでしょう。ただし、収録・編集素材を保存する外付けハードディスクなどを用意しておくと便利です。500GB~1TB程度の外付けハードディスクであれば、6,000円~1万円程度で購入できるでしょう。
以上から、今回の想定予算は次のとおりです。
ビデオカメラ | 5万円 |
---|---|
三脚 | 1万円 |
マイク | 5,000円 |
アクセサリー類 (予備バッテリー、延長コード、簡易照明など) |
2万円 |
編集ソフト | 0円(商用製品の場合2万円ほど) |
素材集 | 2万円 |
ポータブルミキサー | 5,000円 |
外付けハードディスク | 6,000円 |
合計 | 11万6,000円 |
今回は予算を抑えるためになるべく無料のツールを利用していますが、必要に応じて編集ソフトや動画配信サービスの予算を加えます。また、外部ロケを行ったり、プロに依頼したりする場合は予算が大きくなります。
【編集部】おすすめ機材の一例
以下に、予算15万円以内という今回の利用シーンに合わせ、基本的なスペックを備えた編集部が選んだおすすめ機材の一例を挙げておきます。予算に余裕があれば、より高機能な製品を選んでもいいでしょう。実際の予算に合わせて比較検討の参考にしてください。
2011年はじめに発売された製品であれば、多くが5万円前後で購入できます。新機種の販売もはじまっていますが、エントリークラスとしては十分です。ただし、スペックだけでなく、実際に手に持って撮影感を試してみることも大事です。
- HDC-TM85(Panasonic)
広角で室内撮影に向いており、最低被写体照度も1ルクスと十分です。iAズームという独自技術を使っており、通常のデジタルズームよりもきれいに撮影が可能とのこと。 - iVIS HF M41(CANON)
機能の充実もそうですが、レンズメーカーの老舗、キヤノンのカメラということで画質面でも信頼がもてます。 - HDR-PJ20(SONY)
光学ズーム30倍まで対応可能なため、遠くのものまできれいに撮りやすいでしょう。プロジェクター機能がついていて便利です。
ホームスタジオ向けの照明もありますが、カメラに取り付けられるタイプが、設置場所を選ばず、簡単に顔に照明を当てることができるためおすすめです。
- L26851 マクロリングライト VLR-490(LPL)
レンズの周りに光源を配置することにより撮影物にほとんど影が出にくくなります。 - L26831 LEDライト VL-960C Pro(LPL)
付属のフィルタを入れることで、色温度をかえられます。蛍光灯だと映像が青白く映ることもありますが、色味調整ができます。
プロ仕様では、カメラが重いこともあり、重い三脚が安定性の点から重宝されますが、今回のような場合は、持ち運びや手軽さを考え軽いものがいいでしょう。下記シリーズは実売価格が想定予算の1万円以内で、どちらもおすすめです。60AVは、足を3段階に伸ばせるため、コンパクトにまとめられます。ハンドルでの微調整も可能です。
- 動画撮影までの7つのステップ
- 映像を編集してクオリティを上げる
- 映像データを出力する
- 動画配信の方法は大きく3つ
動画撮影までの7つのステップ
機材や環境の準備ができたら次は撮影です。今回は社内のセミナー告知という前提ですので、場所は社内会議室、セミナーの担当スタッフが番組紹介風にコメントしたものを撮影するというシチュエーションで解説を進めていきます。
まずは、動画撮影の準備から終了までを7つの手順に分けて説明していきます。
- 撮影準備のチェックリスト
- 演者の立ち位置を決める
- カンペの位置を決める
- 機材の動作チェック
- リハーサル
- 撮影本番
- 映像チェック
1. 撮影準備のチェックリスト
まず、以下に撮影時にあると便利なものや、忘れてならない物などのポイントをまとめました。撮影時の参考にしてください。
機材のセッティング
ビデオカメラ、三脚、照明、マイクなど、必要な機材を収録場所へ移動してセッティングしておきます。電源タップ
ビデオカメラはバッテリーを使うとしても、不意の充電切れに備えましょう。差込口は最低でも4~5口以上あるものを選びます(カメラ用、バッテリー充電用、照明用、パソコン用、その他予備)。照明機材やカンペ用に使うパソコンなどでも電源は必要となります。シナリオ
演者用のほか、収録スタッフ全員分を用意しておき、リハーサルや本番時の打ち合せに確認できるようにしておきましょう。収録実施アナウンス
収録中に大きな物音がしたり、ドアを叩く音がしたり、場所を間違えていきなりドアが開くといったことは起こりえます。「何時~何時まで収録中。大きなもの音は控えるようご協力ください」といった趣旨の張り紙を用意して、本番中は収録場所となる会議室の前に張り紙をしておきましょう。事前にメールなどで社内告知しておくとさらに万全です。カンペ
PowerPointなどであらかじめ作成しておくと便利です。喋る内容を箇条書きにしてもいいですし、カッチリ作った原稿をそのままでも、演者のやりやすい方法で用意してあげるといいでしょう。画用紙と太いペン
収録していて急遽のカンペ作成にあると便利です。言い間違いをしやすい言葉を一言書いておくだけでも演者の負担はぐんと減ります。時計
短く話したつもりでも、意外と長くなってしまっているものです。だいたいの時間の目安が簡単にわかるように、ストップウォッチまではなくとも秒針のついた時計やデジタルウォッチがあると便利です。大きな時計のほうが収録時中の演者が見やすくなります。養生テープ
演者の立ち位置や機材の配置をマークしたり、機材のコードを固定して躓かないようにしたりするのに使います。鏡
収録直前だけでなく、収録の合間にも身だしなみをチェックできるようにします。水
出演者が緊張や乾燥で口が渇いてうまくしゃべれない、咳き込んでしまうといった場合に備えます。
2. 演者の立ち位置を決める
最近のビデオカメラは非常に優秀なので、ほぼオートで周囲が暗くても逆光でも問題なく撮影できるでしょう。場合によってシーン設定の変更程度で済むため、照明はあまり気にしなくとも問題ないと思いますが、画面を見て明るさに問題ないかをチェックします。
立ち位置を決める際は背景に気をつけます。社外秘となる情報は映っていないか、乱雑に物が散らかっていて会社の印象を損なわないかなど、チェックしましょう。また、契約関係のないタレントやキャラクターが映らないように注意が必要です。立ち位置が決まったら、床に養生テープで印を付けておきます。
3. カンペの位置を決める
演者が読みやすく、かつ収録の妨げにならない場所を選びます。カメラの真下に用意すれば目線は若干下目になりますが、カンペを読んでいることが一番わかりにくく読みやすい場所になります。カンペを持つ担当の方は、カンペがカメラにぶつからないように安定した姿勢がとれるようにしましょう。また、複数枚のカンペになる場合は、物音は必要最低限になるよう、そっとめくりましょう。
カンペは横書きよりは縦書きのほうが望ましいです。人の目の動きは横の動きのほうが大きく目立ちますが、縦にはほとんど動かないためです。
4. 機材の動作チェック
演者でなくて構いませんので、立ち位置に立って試し撮りをしましょう。カメラはきちんと動作するか、ズームなどをする場合は、実際にズームさせてみて、問題なく撮影担当の人が操作できるか、また、マイクの入力はきちんと明瞭に聞き取れる音量かを確認します。試し撮りした映像は再生してチェックしましょう。問題なければ演者を呼び入れます。
5. リハーサル
演者に定位置についてもらい、画面の構図を確定し、音声のチェックもできたら、リハーサルを兼ねて収録してみましょう。想定外の不備があればそこで気づきますし、演者の緊張緩和、話すスピードは早すぎないかなどのチェックになります。
また後の編集がしやすいように、撮影時は使いたい映像の前後にそれぞれ3~5秒ほど、公開映像には使わない「のりしろ映像」を一緒に撮っておきます。カメラ目線で終わるような内容であれば、予め「カット」の声がかかるまでカメラ目線をキープするようにリハーサルで確認しておきます。
6. 撮影本番
テストが完了したら本番です。2分のセミナー告知ですから、演者は、「明るく」「はきはきと」を基本にカメラの向こう側の視聴者に向かって語りかけてもらいましょう。ただし、「明るく」といっても冗談を言ってください、とか必ず笑ってということではありません。暗いイメージに映らない、つまらなさそうに見えない、というくらいの意識で大丈夫ですが、伏し目がちだと自信がなく見えてしまいます。真摯に、「ご参加お待ちしています!」という情熱をぶつけましょう。
映像の構成はセミナーの告知なので、バストショットの演者がカメラ目線で語るという映像で十分メッセージは伝わるでしょう。喋る人が1人であれば、喋る内容に合わせてカメラを振ったり、ズームインすると後で仕上げた映像も画変わりがあって飽きずに視聴することができます。とはいえ、パーンやズームなどは難しいものですから、はじめは固定して撮影するのがいいでしょう。時間に余裕があるのであれば、サイズを変えたりしたものを編集時に入れ込めるように映像を別撮りしておきましょう。
また、言い間違えたり、内容が怪しくなって撮り直す場合は、うまく言えたセリフまでを使い、途中から撮り直しあとでつなげば問題ありません。この場合、何回目の撮影かわかるように冒頭に、番号を書いた紙や、もっと簡単には指で「1、2、3……」と合図した映像を撮り、続けて収録します。うまく撮影できた映像の番号を控えておくと、編集時に映像を楽に探せます。撮り直す場合でも、前述した3~5秒程度の「のりしろ映像」を撮るようにしましょう。
簡単に使える撮り直しのノウハウとして構図を変える方法があります。カメラ目線でずっとしゃべるのは、緊張しますし、カメラを意識してカンペがどうもうまく読めず、何度も撮り直しということもあるでしょう。その場合、出だしと終わりのコメントのみカメラ目線で撮り、間の少し長いトーク部分は、演者の顔の向きを変えて、斜めからの表情で撮影するという風にすると、編集でつないだ時に自然な仕上がりになります。
出だしと終わりのコメントは、次のように短くて覚えやすいフレーズにしておくことがポイントです。
●●株式会社営業企画部の●●です。本日は、X月X日開催のセミナーのご紹介をいたします
以上、セミナーのご紹介でした。お申し込みをお待ちしています
演者を斜めから撮る際には、目線の先にカンペを用意しておけば、演者は読みやすく、映像も自然です。また、カンペは、カメラと同じくらいの高さにしておけば、うつむき加減になりません。
7. 映像チェック
無事すべての撮影が終了してもすぐに解散せずに、映像チェックを行います。今回は2分という短いコンテンツですから、その場ですぐに全員で映像をチェックしましょう。撮影時には気がつかなかった、言い間違いなどがあったら、すぐに撮り直します。3名とはいえ、日を改めて準備やスケジュール調整を行うのも大変です。演者の方にも自身の映像を見てもらうことで、聞きやすい説明の仕方などがノウハウとしてたまっていくという効果もあります。
- 映像を編集してクオリティを上げる
- 映像データを出力する
- 動画配信の方法は大きく3つ
映像を編集してクオリティを上げる
収録した素材はそのまま流してもいいのですが、ライブでない限りは編集したほうがクオリティは高くなります。話の本質が伝わればいいので、熱く語っていただいた演者には申し訳ないと思いつつ、バッサリと切る覚悟が大切です。今回は2分のセミナー告知ですから、たくさんの映像素材のなかから編集するというよりは、何度か撮り直した映像素材のなかから良いOKシーンをつなぐ、という作業になると思います。
編集ソフトによって細かな違いはありますが、編集作業の流れは次のようになります。
- 使いたい映像素材を取り込む
- 使いたい映像をつなげる
- テロップなどの必要な情報を入れる
詳細な編集手順については、前述のムービーメーカー簡単操作ガイド(日本マイクロソフト)などをご覧いただくとして、ここでは、上記3つのフローでのポイントとなる点をおさえます。
1. 使いたい映像素材を取り込む
ムービーメーカーではビデオファイルをドラッグするか、リボンの[ホーム]タブにある[ビデオおよび写真の追加]ボタンをクリックして使いたいファイルを選び、画面右側にあるスペースに移します。
作業自体は、画像や文書ファイルを移す要領と同じですが、スピードよく進めるためには、映像収録の段階で、どの素材を使うかをある程度決めておくことが大切です。何度か取り直しが発生しているなら、前述で説明したように、OKな映像は何番目のものなのかを控えておき、使う素材のみを効率よく取り込みます。また、今回のように短い動画の場合は、いろいろ撮っておいて編集時に考えるのではなく撮影時に映像をしぼっておくことも大切です。
撮った映像の途中から使いたいという場合は、使いたい映像部分をピックアップする必要があります。Windowsムービーメーカーには「分割」という機能が搭載されており、これを利用してトリミングを行います。「のりしろ映像」もこの時点でカットします。
「トリム」機能では、開始位置と停止位置を指定すると、指定した時間の映像ファイルのみが切り出されます。操作画面左横にある、動画再生画面の下に出るタイムカウンターを見て、使いたい映像の時間を確認して入力します。
2. 使いたい映像をつなげる
複数の「使いたい映像」を取り込むと、編集画面の右側に取り込んだ映像のファイルアイコンが並びます。左から時系列に再生されますので、構成にそって、取り込んだファイルを並び替えます。映像をつなげる作業がスムーズにいくか否かは、「のりしろ映像」をとる、「途中から取る場合は、角度を変えて撮る」など、撮影時にほぼ決まってしまっています。とはいえ、編集段階で途中からカットしてつなげる、ということは出てくると思います。
撮り直した時の角度が微妙に違っていて、つなぎ目がどうしても不自然になってしまう、という場合もあるかと思います。映像がどうしてもつながりが気持ちよくない場合や時間の経過を表す時は、付属機能で一度白や黒などにフェードアウトさせてみたり、トランジション(場面転換エフェクト)などを使用することで効果的にごまかすこともできます。
編集で短くなった分、要点を補足するためや強調するためにテロップを挿入したり、図版をセリフに被せてあげることで、内容が濃くなり、一層質感が上がっていきます。
3. テロップなどの必要な情報を入れる
キャプション(字幕)入れやテロップ補足は、わかりやすさ、オフィスなどで音を出さずに観る視聴者への配慮として有効と言えるでしょう。
ネット動画ならではのテロップ入れのポイントとしては、「文字は大きく」が基本です。理由は小さな画面でも見やすくするためです。PCやモバイル端末の画面の大きさはテレビ画面と比べて小さなものですし、PCと同じ動画をモバイル端末でみるとさらに小さくなります。なお、ネット動画の画素数は、1Mbpsの動画コンテンツのもので640×360ピクセルくらいが一般的です。ちなみにHDTV(地上デジタル)の画素数は1920×1080ピクセルです。
映像データを出力する
編集後の映像データを出力することを一般的に「書き出し」といいます(ムービーメーカーでは「発行する」)。作業の注意点として、配信方法(詳細は後述)や使用用途に応じて設定を選択、適宜変更して書き出す必要があります。最近の編集ソフトであれば豊富なテンプレートから選ぶだけで済むでしょう。
今回は、PCサイトでの公開というシーン想定ですので、主要フォーマットとして以下4つを挙げておきます。
- Windows Media(.wmv)
- Quicktime(.mov)
- Flash Video(.flv)
- Mpeg4(.mp4)
自社サーバーで公開するのであればWindows MediaもしくはFlash Videoでの公開がいいでしょう。Windows MediaはWindowsユーザーであれば誰でも視聴ができますので、公開時の設定が容易です。ただしMacユーザーは視聴することができないため、Macユーザーをフォローするのであれば、QuickTimeビデオを別途用意するか、Flash Videoで書きだす必要があります。
Flash VideoはWindows、Macの両ユーザーをサポートできますが、表示するためのswfプレーヤーを別途作成・用意する必要があるなどの手間がかかります。YouTubeなどの動画配信サービスを利用する場合は、それぞれのサービスに対応するフォーマットで書き出します。
動画の配信方法は大きく3つ
先に説明したように、映像データは配信方法に適した形で書き出す必要があり、自社サイトで公開する場合、配信方法は大きく3つあります。いずれかの方法を使って動画をWeb上にアップロードして公開してみましょう。
- YouTubeなどの無料動画配信サービスを使う
- 自社のWebサーバーを使用する
- 有料の動画配信サービスを利用する
1. YouTubeなどの無料動画配信サービスを使う
一番簡単なのはYouTubeなどの無料サービスを通じて公開することでしょう。YouTubeでは公開した動画の下にある[共有]ボタンをクリックし、[埋め込みコード]ボタンを押せば自社サイトに貼り付けるためのHTMLコードを簡単に作成できます。なお、ムービーメーカーには、YouTubeやFacebookに書き出す機能がついています。
YouTubeはHD動画のアップロードを推奨しており、手続きを踏めば時間も無制限です。配信無料で始められる魅力は大きいものがあります。ただし、あくまでもYouTubeは動画を使ったメディア媒体ですので、自社サイトで動画を再生中に他社の広告が表示されること、自社サイトからYouTubeへユーザーが移動してしまう可能性があることなどはあらかじめ認識しておく必要があります。
2. 自社のWebサーバーを使用する
自社のWebサーバーに動画をアップロードし、ダウンロード方式(ダウンロードとストリーミングの詳細は第1回を参照)で映像を配信する方法です。ユーザーのローカル端末に映像データが残ってしまうという欠点がありますが、新規にサーバーを手配することなく自社のサーバー環境を使えるという点は魅力です。
ただし、動画は画像やテキストと比較して大容量になりますので、サーバーやネットワークの管理担当者と事前に相談しましょう。2分の動画コンテンツを1Mbpsでエンコードしたときの容量は、約15MBになります。また、動画へのアクセスが集中した際に自社のサイト全体の表示が重たくなるリスクもあります。
動画ファイルへリンク・公開する手順ですが、ここでは、Windows Media Videoファイルを公開する前提で大まかなフローを記載します。
- Windows Media VideoファイルをWebサーバーへアップロードする。
- htmlにWindows Media Videoファイルのアップロード先を追加する。
- htmlをアップロードする
- Windows Media VideoファイルをWebサーバーへアップロードする。
- メタファイルを作成する。
- メタファイルをWebサーバーにアップロードする。
- メタファイルのURLをhtmlに記述する。
- htmlをアップロードする。
※HTMLソースやメタファイルの記述については、日本マイクロソフトのサポートページを参照ください。
3. 有料の動画配信サービスを利用する
公開手順の考え方としては、自社のWebサーバーを使用するときと大きく変わりません。上記のフローのなかで、動画ファイルの呼び込み先が、自社のWebサーバーにあるダウンロードファイルではなく、外部にある動画ファイルになるという点が違うくらいです。
外部の有料サービスを利用するメリットは、安定性やサポートが受けられる点です。人的サポートが受けられる場合は、自社の希望に沿って必要なリンク設定の手配などをしてくれますし、オンラインによるフルオートサービスの場合は、動画のアップロードやソースコードを自動生成する機能など、YouTube同様の簡単な操作で配信できます。また、マルチデバイス向けの動画変換サービス、動画のアクセス解析に対応しているサービスもあります。外部サービスの契約形態は、容量やデータ流用によってさまざまですが、月額1万円以下で利用できるサービスもあります。
◇◇◇
以上、ひと通り説明させていただきましたが、少しでも動画制作から公開までの裾野が広がり、情報伝達手段の1つとして動画の魅力や伝達力の高さ(視覚・聴覚からの同時情報入力)に触れていただければ幸いです。
動画で情報を発信してみようと考えたとき、「自社に適した動画はなにか」というのを一番知っているのは企画者である企業の担当者です。撮影も編集もセンスが問われますが、まずは動画を身近な存在として、いくつも作ってみることをお勧めします。そして、映画やテレビ番組、ネットの動画などをたくさん見て吸収し、技術を真似てみてはいかがでしょうか。ご自身で映像制作のフローがわかっていると、参考映像の見る際に「そうかこの手があったのか」と新しい発見も多いと思います。いずれも自分が視聴者だったらという観点で進めるといいでしょう。
今回は自社スタッフのみでの制作を想定していますが、手に負えない規模やクオリティを求めたときには、弊社も含め、プロに依頼することを検討してみてください。
- 記事種別:解説/ノウハウ
- コーナー:15万円でゼロから始める動画マーケティング
- 内容カテゴリ:マーケティング/広告
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
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