メルマガはじっくり読むタイプ。Twitterは見出し、Facebookは画像が決め手に
一番大きな変化は、ユーザーの反応が見えるようになったことです
このように語ってくれたのは、1年以上にわたりTwitterを活用する旅行情報サイト、「地球の歩き方」のTwitter運営を担当する田中正樹氏と小鹿由紀子氏だ。地球の歩き方では、企業の公式Twitterアカウントとして、@news_arukikataなどを運営している。
海外旅行のガイドブックで有名な同社ではどのようなTwitter運営を行っているのか、詳しい話を伺った。
名称:地球の歩き方 | |
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自己紹介 |
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読者とのコミュニケーションの場としてホームページを開設
海外旅行のガイドブックで有名な同社だが、どのようにインターネットを活用しているのだろうか。
「地球の歩き方と聞くと、海外旅行のガイドブックをイメージされる方が多いと思うのですが、留学事業(成功する留学)、旅行カウンター(旅プラザ)、航空券販売(アルキカタ・ドット・コム)・ツアー販売(地球の歩き方Travel)の運営など旅行関連のさまざまなビジネスを展開しています。そのなかでも、私たちメディア部門では『地球の歩き方ホームページ』を運営しており、国内外の旅行先の情報提供や、オリジナル旅行用品の販売、ユーザーコミュニティの運営、旅行スケジュールの作成ツール(旅スケ)など旅行に役立つ情報を日々発信しています
」(田中氏)
そうしたなか、書籍による情報発信だけでなく、双方向のコミュニケーションを行おうと考えたのが、インターネット活用のきっかけだったと、田中氏は話す。
「オリジナル旅行用品を販売している物販の部門は、インターネットを1つの販売チャネルとして捉えていますが、我々が所属しているメディア部門では、インターネットのあり方をユーザーのみなさんとコミュニケーションをする場であると考えています。
」
Twitter活用の目的
ブログ記事の自動ツイートをきっかけにTwitterを開始
双方向コミュニケーションを目的にホームページの運営を始めたという地球の歩き方。ソーシャルメディアでもこうした姿勢は変わらないという。
「今、私たちが目指しているところは、情報提供だけでなく、スケジュールの作成ツールなどを含めて、旅行者のみなさまにとって、より役立つ存在になろう、という思いがあります。ホームページについては、掲示板の開設後、情報の吸い上げというところでユーザーの方々がクチコミを投稿できる場を設けたり、読者からの反応が得やすいようにコメント欄付きのブログ運営といったことを行ってきました。ソーシャルメディアについても、同じ考えを持って日々運営しています
」(田中氏)
旅行者にとって役立つ存在であり続ける、その目的のために新たにTwitterにも取り組み始めた同社。運営開始から1年以上経過しているTwitterだが、現在はどのように捉えているのだろうか。
「新しい情報配信ツールの1つと捉えています。我々のビジネスにとって、情報配信は旅行者の方と接点をもつための取り組みとして非常に重要です。今では主流となっている、メールマガジンやRSSといった情報配信ツールにも早い段階から飛びついていましたし、10年以上ホームページを運営しているなかで、その他にもさまざまな試みをしてきました。そのなかでも、ユーザー同士のコミュニケーションから生まれる、Twitterの情報伝播力はすばらしいと感じています
」(田中氏)
現在運営しているTwitterアカウントについて伺った。
「ホームページ内のTwitterアカウント紹介ページにもあるように、5つのアカウントを運営しています。私たちが運営しているのは、旅行に関するお得な情報やニュースをつぶやく@news_arukikataと、特派員が現地情報をお届けする『特派員ブログ』の@blog_arukikataの2つです。その他に、弊社が運営する旅行用品の通販サイト『地球の歩き方ストア』が運営する@arukikata_store、ランニング情報のコミュニティ『地球の走り方』の@Runinfo、『地球の歩き方編集部』が運営する@arukikata_bookがあります
」(田中氏)
- @news_arukikata(旅行のお得情報やニュース)
- @blog_arukikata(現地特派員の情報)
- @arukikata_store(通販サイト、地球の歩き方ストアの情報)
- @Runinfo(ランニングコミュニティ、地球の走り方の情報)
- @arukikata_book(地球の歩き方編集部から発信される情報)
こうしたTwitterアカウントを運営開始するきっかけは、どのようなものだったのか。
「会社公式ではなく、特派員ブログのスタッフが運用を始めた、@blog_arukikataの成功が現在の運営体制のきっかけだったと記憶しています。@blog_arukikataは、世界100都市に駐在する、地球の歩き方の特派員が日々更新をしているブログ記事を、記事が更新されるたびに自動的につぶやくbotタイプのアカウントです。プログラムの経験があったので、自作のプログラムで運用を始めました。
当時はまだTwitterが日本で紹介され始めた頃で、ユーザー数も少なく、あまり期待していなかったんですが、運用してみると結構反応が良かったんです。フォロワー数の増加速度やリンク先へのトラフィック増といった目に見える形で効果を実感できたので、社内の会議で報告しました。そこで、Twitterを使った情報発信もできると社内で採り上げられ、RSSで自動配信するようなタイプではなく、各部門の担当者から直接情報を発信していくTwitterアカウントを作ろうと、@news_arukikataなどを開設しました
」(田中氏)
@news_arukikataの立ち上げ時には、どのような話し合いがなされたのだろうか。
「Twitter運営のような大きな費用が発生しない施策については、比較的柔軟に動ける社内環境のため、担当者レベルでメンバーを集めて『はじめようか』というものだったと思います。いまパッと聞かれて記憶にないぐらいですから、それぐらいライトな感覚で運営を始めたのだと思います(笑)。メンバーの選出については、各部門やサービスのホームページ上の情報を更新する立場のメンバーが多かったですね。最初に担当を1人と決めてしまうと業務に負担がかかってしまうので、負担を分散させたいという思いもあって6人で始めました
」(田中氏)
Twitter運営の責任者でもある、田中氏の成功体験を会社全体の取り組みとした同社。情報配信という、旅行者と接点を持つためのツールとしてTwitterを全社的に取り入れた、同社の柔軟かつ軽快な対応には、すばらしいものがあると感じた。
- サイトの更新状況を俯瞰的に把握できるデザイナーがツイートを担当
- 多発する炎上事件に危機感を持ち、運営ポリシーを策定
- ツールを使い分け、旅行に行きたくなるような情報を発信していきたい
- ツイートの見出しは、旅行に関心のある人に刺さるものを追求
運営体制
サイトの更新状況を俯瞰的に把握できるデザイナーがツイートを担当
現在の運営体制について伺った。
「4つのTwitterアカウントそれぞれに担当者が1人ずついる4人体制ですが、立ち上げ当初は@news_arukikataに6名の担当者がいましたので、合計で10名弱のメンバーがいたことになります。@news_arukikataについては、最初は担当者ごとに役割を持っていたのですが、運営を続けるなかで、次第にツイートするメンバーが減ってしまいまして、現在は私が多くの投稿を担当しています(笑)
」(小鹿氏)
@news_arukikataの運営には毎日どのぐらいの時間を費やしているのだろうか。
「1日に2~3回はツイートしたいと思っているので、更新情報のなかですぐに良い情報が見つかれば5分程度です。話題を探すためにもう少し時間をかけることもあります。朝の出社したタイミングで1件投稿をして、アカウント宛てに問い合わせが届いていたら、回答することをしています。その後、ホームページを更新しながら良い情報を見つけたら投稿するといったように、制作業務の合間でやっている感じです
」(小鹿氏)
サイト制作部門がTwitterを担当するのには珍しいケースだ。制作の小鹿氏が担当するのには、何か理由があるのだろうか。
「特に意図はないんですが、制作担当としてホームページ上のコンテンツの更新状況を把握できているため、情報発信をしやすい立場ではあると思います。特に小鹿は制作担当として、我々のホームページのかなりの部分を担当しているので、コンテンツの更新状況を俯瞰的に把握できる立場にあるんですね。結果的に1人の運営者に任せてしまうことになっていますが、ある意味で最も効率的なプロセスに自然と移行していったと捉えています
」(田中氏)
Twitterの運営では、どのようなツールを利用しているのだろうか。
「@blog_arukikataでは、ブログの更新情報を自動的にツイートしてくれるRSS2Tweetというツールを使っていた時期があったのですが、投稿間隔にムラがあったり最新記事を配信していなかったりなど、動作も不安定だったので自分自身でプログラムしてしまったという経緯があります。@news_arukikataについては、現在はつぶやきデスクを利用しています。主に使っている機能は投稿予約機能ですね。普段はリアルタイムで投稿しているのですが、会社が休みの週末、土日のつぶやきを金曜日に予約しておけるので便利ですね
」(田中氏)
運営ポリシー
多発する炎上事件に危機感を持ち、運営ポリシーを策定
現在、運営ポリシーのようなものは設けているのだろうか。
「そうですね、運営メンバーのなかで、Twitter運営ルールと呼べるものは作りました。ただ、それも“ですます調でなければいけません”といった絶対に守らなければならないルールというものではなく、どちらかというと心得のようなイメージに近いです。“あなたの投稿がどれだけ影響を与えるかをわかってください”といったものですね
」(田中氏)
運営ルールはいつ頃作成したのだろうか。
「草案を作ったのが2010年の秋口ぐらいだったと思います。弊社としてはすでにTwitterを運営し始めてかなりの時間が経過していたのですが、ちょうどその頃に、ソーシャルメディアでの炎上事件が目につくようになったこともあって作成しようと思いました
」(田中氏)
Twitter上での問い合わせ対応として何か方針として決めていることはあるのだろうか。
「ホームページの問い合わせ窓口と対応方針を合わせるようにしています。たとえば、各部門の担当者レベルでなければ回答できない問い合わせについては、担当者へつなぐといったオペレーションなどです。ただ、Twitterからの問い合わせだと、回答する担当者がTwitterを使い慣れていないケースもあるので、そういう場合には回答案を作成した段階で、どのように返信するかはTwitter担当に任せるなど、臨機応変に対応しています。
もちろん、今までにクレームなどの難しい対応に迫られたことがないのも、うまく運営できていると感じる理由かもしれません。回答に困る問い合わせを強いて挙げるとすれば、現地特派員が書くブログ記事に対する質問ですが、その場合は特派員の方にTwitterで返してもらうことは難しいので、ブログのコメント欄に書いていただくようにご案内しています
」(小鹿氏)
制作担当が1名でTwitter運営をする同社の体制を耳にしたとき、日本IBM社のTwitter運営体制を思い出した(インタビュー記事)。@IBM_JAPANは、社内のイントラネットを担当するメンバーが自社の最新情報を把握しやすい役割であったのに対して、@news_arukikataの場合は制作担当である小鹿氏がその役割であったがために、Twitter運営の適任者だったのかもしれない。
- ツールを使い分け、旅行に行きたくなるような情報を発信していきたい
- ツイートの見出しは、旅行に関心のある人に刺さるものを追求
効果測定
ツールを使い分け、旅行に行きたくなるような情報を発信していきたい
ツイートの内容についてはどのような心がけをしているのだろうか。
「私たちのツイートのメインは、旅行情報を提供するものが多くなるんですけれど、そのなかでも旅行に行きたくなるような情報を発信しようという点は、常に意識するようにしています。現地に住んでいる特派員の方が書いている記事については、リアルな内容のものが多く、Twitter上でも反応が良いのでなるべく多く紹介するようにしています。あとは、旅行にこれから行く人も見ていると思いますので、海外の情報として、たとえばヨーロッパ鉄道のストライキの状況ですといったものや、航空機の運行情報などもつぶやくようにしています
」(小鹿氏)
特に反応の良いツイートの傾向などはあるのだろうか。
「現地の情報のなかでも、特に食べ物の情報は反応が良いですね。あとは、弊社の旅の口コミに投稿された情報をつぶやくこともあるんですけれど、これも結構反応が良いです。クチコミ情報のなかには、航空機のなかを撮影してレポートいただいているようなものもあるので、そういったクチコミをTwitterでご紹介する場合は、写真の内容がわかるようにコメントを付けて紹介することで、リツイートの数が増えるようになったと実感しています。ホームページへの来訪にもつながっていると思います
」(小鹿氏)
メルマガやFacebookなど、その他の情報発信ツールとはどのように使い分けているのだろうか。
「サイトの情報発信ツールとしては、メルマガの配信やガイドブック上でのコンテンツの紹介、それから昨年にFacebookページをオープンしてそれぞれ情報発信をしています。感覚的な印象で言うと、“メルマガはじっくり読んでもらうタイプ”で、“Twitterは見出しで決めるタイプ”、“Facebookは画像で魅せるタイプ”といった印象を持っています。
メルマガについては、時間をかけて読んでいただくものですから情報の精度を重要視しています。校正担当もいまして、誤った情報がないように体制を組んでいます。TwitterとFacebookは担当者レベルで運用していますので、その点は大きく異なりますよね。また、TwitterとFacebookは、現在ほぼ運営体制が重なっていることもあり似たような投稿が多いのですが、結構反応が違う点が興味深いですね。
Twitterは発信する情報そのものの価値で反応が決まるのですが、Facebookは写真が綺麗かどうかで反応がまったく変わってきます。また、Facebookのほうがどちらかというと旅行の興味度が高いように感じています。もちろん、Facebookページを立ち上げたタイミングがTwitterよりも遅く、まだコアなユーザーさんしか見ていないのもあると思いますが、そういう空気を感覚として感じていますね
」(田中氏)
「Twitterはどちらかというと、緊急情報などの伝播力に秀でていて、速報性のある情報に対して大きな反響を呼ぶメディアのように感じていますね。海外で事故などがあった時の情報をツイートすると、反応がすごく早いんですよ。最近あったタイの洪水について、バンコクの特派員が日々発信してくれていたのですが、FacebookよりもTwitterのほうが断然反応がいいんですよね。Facebookはどちらかというと、もう少しゆったりとした感覚で私たちが発信する情報を眺めてくれているような感じがします
」(小鹿氏)
ツイート単位の効果測定のようなことは行っているのだろうか。
「今はbit.lyを使ってURLのクリック数を見ていますね。もちろん、Google アナリティクスからもサイトへの来訪状況を見るようにしています。社内的にソーシャルメディアからの流入を報告する、というようなことはないのですが、全体の流入元のなかでソーシャルメディアの割合はどれくらいあるのか、という話はしています。コンテンツにもよると思うのですが、ブログのような更新性の高いコンテンツについては、ソーシャルメディアで紹介されるケースも多いので、ソーシャルメディアの流入割合は増えていると思います
」(田中氏)
ツイートの見出しは、旅行に関心のある人に刺さるものを追求
Twitterを1年以上活用し続けているが、開始以前と変わったことはあるのだろうか。
「何といっても、ユーザーの反応が見えるようになったことが一番大きいのではないでしょうか。我々が投稿した情報に対する反応が見えるのはもちろんのこと、我々の知らないところで、どんな話題として地球の歩き方のことを話されているのか見えるようになったことは大きいです。ユーザーの反応が見えるようになったことで、サイト制作の部分にも変化があります。Twitterの投稿に対する反応の良さから、投稿時の紹介の仕方が重要だとわかりましたので、サイトを制作するタイミングでのタイトルの付け方についても、以前と比べると時間をかけて行うようになったと思います
」(田中氏)
現在のフォロワー数は5,000人前後(取材当時)。順調に運営できているという認識なのだろうか。
「欲をいえばもっともっとフォロワーが増えていけばいいと思うのですが、順調だと思います。今は地球の歩き方というブランドでフォローをしてくれた方が多いと思うんですけれど、『地球の歩き方ってガイドブックを出しているんだ』と言われる若年層の方って結構多いんですよ。もっと理想をいえば、そういった方とコミュニケーションできるようになればいいと思っています
」(田中氏)
現在、目標や参考にしているTwitterアカウントなどはあるのだろうか。
「運営開始当初はいろんな企業アカウントを参考にしていましたが、最近は特に参考にしたり、注視したりしているTwitterアカウントはないですね。私たちがTwitterで成果を得ることができるかは、結局のところ旅行に関心のある方に刺さる見出しのツイートができるか、つまりコンテンツの中身が重要だと思うんですよね。
たとえば、ストライキなど緊急性の高い情報については、自社の情報だけでなく、我々が信頼している外部ホームページのURLをつぶやくようなことも積極的に行っています。@news_arukikataをフォローしていれば、旅行に行かれる方にとって有益な情報が得られる、と思っていただけるようなツイートを続けていくことが重要だと思います
」(田中氏)
最後に今後の抱負を伺った。
「近年の傾向として、旅行者数が伸び悩んでいるというトレンドがあるので、我々がこうして世界の情報や、旅行に行きたくなる情報を提供することで、海外旅行に行きたいと思っていただける方が少しでも増えていけばいいと思っています。ソーシャルメディアだと、みんなが同じプラットフォームにいるということもあるので、ウェブサイトでやっているよりは、より簡単に訴求できるのではないかと思い運営しているので、引き続き運営していきたいと思います
」(田中氏)
インターネットを積極的に活用し、ソーシャルメディアにもいち早く取り組んできた同社。その根底には、旅行者にとって信頼できる有益な情報を届けるという姿勢が見て取れる。Google+など、新しいツールについても「サードパーティのツールも含めて、今あるものと新しいソリューションとリソースを検討しつつ、一番効率的な運用方法を考えて攻めていきたい
」と田中氏は話す。
ユーザー視点に立ちながら、大企業が陥りがちな部署間のコミュニケーションに悩むことなく、最も効率的な運営方法を選択しトレンドに乗ることができる環境こそが同社の強みである、と感じた。今後も同社の取り組みを見守っていきたい。
- 記事種別:事例/インタビュー
- 内容カテゴリ:CMS
- コーナー:企業担当者に聞くTwitter運用の現場
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オリジナル記事:Twitterは見出し、Facebookは画像で勝負。コンテンツを重視しながら“刺さるツイート”を追求/地球の歩き方 [企業担当者に聞くTwitter運用の現場] | Web担当者Forum
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