今日は、IBMが行った調査データを紹介します。世界で1700名超、日本からも68人が回答した「CMOにとっての課題」「マーケ戦略策定」「データ分析」「企業文化」とは?
IBMは、全世界のマーケティング担当役員に調査を行い、その結果を発表しました。参加したのは世界64か国の18業種から1734名(うち日本から68名)。業種は、通信・メディア・公益(16%)、流通(36%)、金融サービス(24%)、製造(21%)、公共(3%)。地域は、北米(17%)、欧州(35%)、日本(4%)、その他成長市場(44%)という内訳。日本では2011年2月~6月に調査が行われました。
CMOの喫緊の課題
全世界で人口の1/3にのぼる約20億人がオンラインでつながり、スマートフォンやタブレットだけでなくネットテレビの普及も伸びている現在、そうした市場の変化に対して、どういった点で準備不足だと考えているのでしょうか?
CMOの喫緊の課題に関しては、グローバルで見ると「データ量の飛躍的な増加(ビッグデータ)」(71%)と「ソーシャルメディア」(68%)、次いで、「チャネルと伝達手段の増加」(65%)、「顧客の人口構成の変化」(63%)。
それに対して、日本では、ROIが2番目に、財務的制約が4番目に、ブランド・ロイヤルティの低下が6番目に入っています。
こうした幅広い「準備不足度合い」に対処するため、同社では、改善が必要なエリアを次の3つに分類して、それぞれに対して調査を行っています。
- 個客に価値を提供する
- 永続的な関係を育成する
- 価値をとらえ、成果を評価する
個客に価値を提供する ~市場分析から「個客」の理解へと変化する
マーケティング戦略策定に使用する情報源の調査データを見ると、多くのCMOは、戦略を考えるにあたって、「(セグメントされた)個客」ではなく「マーケット(全体)」を理解することに注力しているのが現状です。つまり、個客を理解するのに結うような情報源を十分に活用されていません。
また、増加していくデータへの対応で見ると、テクノロジーや能力が不足しており、特に日本では「対応できる人材が足りない」状況にあることがわかります。
また、日本においては、マーケティングに関して新しいテクノロジーを活用する際の障害/障壁として、ROIが不明確であることやコストのほか、ユーザーのスキルやITのスキル不足が挙げられています。
永続的な関係を育成する ~取引だけでなく、関係性にもフォーカスする
多くのCMOは、取得できるさまざまなデータは、あくまでも取引管理のために使っているのが現状で、個客との関係性の維持・強化のためにデータを活用する動きはさほど進んでいないことが、調査からわかります。
結果に至ったデータは利用しているものの、その前の段階の「なぜその行動をしたのか」を分析するためのデータが手に入り分析できるはずなのに、さほどそこを進めていないのは、日本でもグローバルでも同様とのこと。
同社では、こうしたデータを取得し、個客と効果的に交流するには、顧客コミュニティを取り込んだ新しいマーケティングモデルが必要だとしています。
こうした調査データをふまえ、同社では「お客様との効果的な交流のためには、顧客コミュニティを取り込んだ新しいマーケティングモデルが必要となる」としたうえで、従来型の「企業側が閉じた環境で市長調査を行い価値提案をして商品提案をしていき、それから顧客のロイヤルティを高める」という手法をとるのではなく、顧客を中心としたコミュニティからのフィードバックや顧客とのコミュニケーションを企業活動に全体的に取り入れていくべきだとしています。
また、顧客との永続的な関係を育成するには、単にCMOが戦略を策定するだけでなく、その企業文化を市場に理解してもらい、さらに、社員がその企業文化を理解して実践する必要があります。
調査から見えてきたのは、ブランド影響力はあるが、末端の社員まで企業文化を浸透させてブランド力を維持するのは大変だという現状です。その度合いは、日本ではさらに強いようです。
価値をとらえ、成果を評価する ~ROIを通じて説明責任を果たす
評価の側面では、CMOが責任をもつ範囲は、本来ならばプロモーションだけでなく、4Pのすべてであるはずなのですが、それでもやはりプロモーションの比率が高いのが現状のようです。日本では特にプロモーションの比率がさらに高くなっています。CMOに必要なスキルの上位3つは、CEOに必要なスキルと同じ(CMO→CEOというキャリアパスがあるから)。それだけでなく、CMOは企業活動全体に対する理解と能力や資質が必要だということです。
また、経営者が自分でデータを詳しく調べることはできないので、CMOが「重要な指標をわかりやすく確認できるグラフ」を作ってスピーディに共有する(1日に何回か、スマホで)のが重要だとしています。
日本からの回答者数がさほど多いわけではないため、一部のデータに関しては参考扱いとなるものもあったりグローバルの統計データしか提示されていないものもありますが、いかがでしょうか。
IBMはこれまでCIOやCEOに対する調査は行ってきましたが、CMOに関して大規模に調査するのは今回が初めてということです。
IBM Global CMO Studyからの洞察のページから、ここで紹介したものとは違った切り口から調査結果を分析したレポートをダウンロードできますので(IBMへのユーザー登録が必要)、興味のある方は、そちらも参考にしてみてください。
- IBM Global CMO Studyからの洞察(調査レポートに関するページ)
http://www-935.ibm.com/services/jp/cmo/html/cmostudy.html - IBMの調査発表プレスリリース
http://www-06.ibm.com/jp/press/2011/11/3001.html
- 記事種別:調査データ
- コーナー:編集長ブログ―安田英久
- 内容カテゴリ:マーケティング/広告
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:CMO(マーケ責任者)1700人調査をIBMが実施: CMOの責任範囲と「個客」「関係」「評価」の課題 [編集長ブログ―安田英久] | Web担当者Forum
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