誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。
毎週・木曜9時は「かってに解析!」。誰もが知っている有名サイトをかってに取り上げ、「もしもアクセス解析をするならば、どこに目をつけるか?」という視点で、サイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。
今回も前回に続き「ダイワハウス」を取り上げる。前後半の2回にわたり、住宅総合メーカーであるダイワハウスのWebサイトを取り上げ、課題の抽出や考察を行っているのだが、筆者は住宅建設や販売にかかわる各企業やサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。
「ダイワハウス」の閲覧シチュエーションを想定
今回のサイト利用シナリオを振り返っておこう。住宅の建て替えを検討している人が、住宅メーカーの注文住宅を検討しようと考え、住宅展示場を見にいくための予約をするというものだ。
誰が | 住宅の建て替えを検討している人 |
---|---|
何の目的で | 住宅メーカーの注文住宅を検討 |
具体的には | 住宅メーカーの特徴を把握、住宅展示場見学の予約 |
「ダイワハウス」をエキスパートレビュー!
前回のおさらい
検索サイトで「注文住宅」と検索すると、「ダイワハウス」は自然検索の10位以内には表示されていた。表示結果にあった「ダイワハウス」をクリックして、「ダイワハウス」の「注文住宅・建替え」トップページへ。構成などを全体的にチェックした。
次に、「耐震・制震・免震」のページへ移動し、地震対策機能を確認。メインビジュアルの一風変わったインターフェイスにとまどったが、おおよその情報は得ることができた。
住宅展示場を確認したい
地震対策機能のチェックはひととおり終えたので、いったん「耐震・制震・免震」のトップページに戻る(図4)。次は展示場の確認だ。
各所にリンクはあるが、ページの真ん中あたりにある「展示場はこちら」(図4の緑枠で囲んだ部分)のバナーをクリックして進もう。図8が「ダイワハウス」の「住宅展示場」のページだ。
地図から選択するナビゲーションが上部にあり(図8の赤枠で囲んだ部分)、その下にはアクセス元の居住地域と思われるエリアへの案内(図8の青枠で囲んだ部分)が続いている構成になっている。著者の居住地が神奈川県なので、神奈川県の住宅展示場が17件表示されている。
他県の住宅展示場を見るのも簡単
図8の地図で、例えば千葉をクリックしてみる。そうすると、図9のように「千葉県の住宅展示場の一覧」ページに簡単にたどりつくことができる作りになっている。
他のエリアの都道府県を選択する場合も、まず右側の地域ブロック(図8の緑枠で囲んだ部分)を選択して、表示された地域ブロックの地図の中から該当の都道府県名をクリックすればいいので簡単だ。
左側には「外観・内観で探す」「展示場の特徴で探す」といったメニューもある(図8の黒枠で囲んだ部分)。「外観・内観で探す」のところにマウスオーバーすると図10のような検索画面が出てくる。それほど多用する機能ではないかもしれないが、多様な選択肢をさりげなく用意しているうまい方法だと感じた。
「溝口住宅展示場」のページをくわしく見てみよう
さて、図8の展示場のページの真ん中くらいに、筆者の住まい近くにある「溝口展示場」があるので、それをクリックしてみる(図8の黄枠で囲んだ部分)。図11がそれだ。
当然だが、ダイワハウス1社だけの個別展示場ということだ。広い敷地に様々な住宅が展示されている郊外型の住宅展示場であれば、いろいろな会社の住宅が一度に見れるのだが、今回はそういうタイプの展示場ではない。
図11のとおり、およその外観がメインビジュアルで表示され、その下に来場予約へのリンク、モデルハウスの特徴、現地の地図といったページの作りになっている。
- 溝口住宅展示場の来場予約を試してみる
「ダイワハウス」をエキスパートレビュー!(続き)
溝口住宅展示場の来場予約を試してみる
さっそく来場予約をしてみよう。予約ページへのリンクはメインビジュアル直下(図11の赤枠で囲んだ部分)と地図の下(図11の青枠で囲んだ部分)の2か所に配置してある。今回は、地図の下にある「住宅展示場 ご来場予約はこちら」をクリックしよう。
図12が予約フォームだ。シンプルな作りになっている。
だいたい1か月先までの予約ができるようだ(図12の赤枠で囲んだ部分)。
住所名前、電話番号などを入力して、[確認画面へ進む]ボタンをクリックする。住所入力の「丁目番地」のところの入力例を見ると、数字が全角になっていたが(図12の青枠で囲んだ部分)、半角で入力しても、エラーは出ず、次のページへ進むことができた。
予約の確認画面は図13のとおりで、非常に簡単だ。これだけ簡単だと、気軽に申し込みができる。
チェックした物件履歴が表示されるエリアがある
サイトに面白い機能があったので紹介しておこう。このサイト内でいくつかの物件や展示場を見て回ると、フッターエリアの上に、「最近チェックした物件履歴」という表示が現れる(図14の赤枠で囲んだ部分)。
「さっき見たあの物件をもう一度見直したい」といった際には有効な機能だ。いったんブラウザを閉じて、後で見てもこの機能は有効だったので、Cookieなどで情報を保持しているのだろう。
- 前回+今回のまとめ&アクセス解析で見るべきポイント
前回+今回のまとめ&アクセス解析で見るべきポイント
最後に、アクセス解析的な視点で見るべきポイントをまとめておこう。ここでは「ダイワハウス」の「注文住宅・建替え」の部分に限定して話をしておきたい。
住宅メーカーのサイトに訪問する実際のシチュエーションはどのようなものなのだろうか。横並びで様々な住宅メーカーサイトを見比べてから絞り込んだ後に、個別のメーカーサイトに訪問するものなのか、あるいは今回のようなシナリオが普通の閲覧行動であるのかどうかはよくわからない。
ユーザー心理がどのようなものであるのかによって、サイトの主目的は変化するように感じる。例えばユーザーにまず住宅メーカーの特徴を知ってもらうことが主目的になるのであれば、見てほしいコンテンツは「ダイワハウスの特長」や「ダイワハウスの家づくりについて」など、ダイワハウスを知ってもらうことになるはずだ。
一方で、ある程度ダイワハウスを知っている人が多いという話であれば、カタログ請求でリストを獲得することや、展示場への来訪予約をしてもらうという、いわゆる見込み顧客の獲得が主目的ということになる。
いずれにしても、本来はこのどちらの層にも対応できるようなWebサイトの作りになっていなければならないのだが、まずはそのような問題意識をもってデータを見てみたい。
- 「注文住宅・建替え」のトップページについて
どのような目的で訪問しているかは、大雑把にどういったコンテンツがどの位利用されているのかというデータから判断すべきだろう。上記に書いたように、会社を指定して見に来るユーザーが多いのか、ご指名ではないけどふらっと立ち寄った人たちが多いのかによって、何を見せるべきか、読んでもらうべきかが変わるのは当然だ。
具体的には、新規ユーザーとリピートユーザーのトップページからの動きの違い、見ているコンテンツの違い、ページの下までのスクロール状況などを見てみたい。どちらかのユーザーが一方的にスクロールばかりしているようであれば、彼らが次に見るページへのリンクをもっと上方へもっていくような試みが必要になるだろう。
またブランドワード(ダイワハウスを指名するような検索語)と一般的なキーワード(注文住宅など)で訪問したユーザー別に同様な利用行動の違いを見てみたい。この意図も上のパラグラフと同じだ。
メインビジュアルはユニークなユーザーインターフェイスだったので、この部分はユーザーテストを行い、図6の表示での各パーツの意味などがすぐに理解できるかという点や、リンクボタンの視認性の高さ/低さを確認するとよいだろう。
またメインビジュアルの部分をクリックしても多くはURLが変わらないので、どの部分がクリックされたのかというデータも取得できるような準備をしておきたい。
- 住宅展示場検索のページ
今回の住宅展示場は、ダイワハウス1社の物件を見るということになるので、この場合、場所が近くなくても、お目当ての内観や特徴で検索して、自分のニーズに合致した物件は遠くでも見にいきたいというニーズはけっこう出てきそうだ。この場合に図10のようにいくつかの検索方法が提供されているが、この分類やカテゴリー分けがこれでよいのかわるいのかは想像しにくい。
この場合も、実際の検索でどのような項目にチェックがされているのかというデータを把握する一方で、ユーザーテストなどによって、ユーザーが検索軸として何か欲しているものがあるのかないのかを探り出す方法も有効だろう。
- 来場予約やカタログ請求
来場予約は非常にシンプルなものだったので、途中で離脱する人は少ないと思うが、途中での離脱率がどのくらいあるのかは把握しておこう。
またカタログ請求の方は、今回の記事中では紹介していないが、様々なカタログがあるので、それを選択してから届け先の入力というステップになる。カタログが多すぎて、少々選択に戸惑う人があることが想像されるので、ここでの離脱率が高くないかはチェックしておきたいところだ。
- その他のページ
今回はそれほど多くのページを見て回らなかったが、例えば「住まい方・テーマで選ぶ」のカテゴリーに含まれるページなどでは、じっくり読んでほしいコンテンツになっているので、それなりのページ滞在時間になっているのかといった具合に、コンテンツの特徴にあった利用行動になっているかということを確かめておきたい。
さて、約1年のあいだご愛読いただいたこの連載も、2012年3月いっぱいをもって終了することなった。本連載では、連載開始時から変わらず、
- Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
- 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論
を募集してきた。実際にご応募いただいたことがきっかけで、取り上げさせていただいたサイトもいくつかある。しかし、本連載も残るところあと3、4回。「かってに解析」希望者は、早めに(web-tan@impressrd.jp)まで、リクエストをお寄せいただきたい。
衣袋教授の丸2日でアクセス解析を徹底的に学ぶ講座「アクセス解析ゼミナール」を2012年4月17日と4月24日に開催します。主催はアクセス解析イニシアチブ。3月内申込みで早割あり。 → http://a2i.jp/activity/training
- 記事種別:解説/ノウハウ
- 内容カテゴリ:アクセス解析
- コーナー:有名サイト、かってに解析!
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:もしも、「ダイワハウス」を解析するなら(後半)[第55回] [有名サイト、かってに解析!] | Web担当者Forum
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