コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。
宮脇 睦(有限会社アズモード)
心得其の弐百四十参
いつから、いまから
昭和時代なら「忠臣蔵」の特別番組のあとから盛り上がっていたクリスマス商戦。いまではハロウィンが終わると同時に街はクリスマスカラーに染まります。その無節操なフライングには閉口しつつも、心の中でお盆明けには準備を始めていたのだろうと、イベント担当者の労を労います。準備は店頭POPなどの印刷物や人員の手配を逆算すると、最低でも2ヶ月前はほしいところです。残暑の厳しいなか、担当者は脳内でコートを着たサンタクロースを思い描いていたことでしょう。
その点、Webは気楽です。思いついた瞬間にイベントを開催できます。今回は「いまから間に合うクリスマスイベント」の具体的な方法について。
ちなみに過去2回で特集したチラシでも1ヶ月ぐらいまえから準備します。年末年始は、印刷所がピークを迎え、事前に工場(機械)を予約しておかないと断れることもあるからです。そして今年は震災による自粛の反動と、景気悪化から比較的安価で消費者に直接訴えかけることができる「チラシ」の需要が高まっており、印刷所によっては年内の印刷を締め切っているのでご注意ください。
向かない職業はない
ウチには関係がない、という業種などありません。宗教的理由でタブーというのでもなければ、祭り好きの日本人が乗ってひんしゅくを買うイベントなどほとんどなく、ましてやクリスマス。仮に「葬儀社」だとしても、
クリスチャンのための密葬セミナー
を開催し、参加者にクリスマスキャンドルでもプレゼントすれば立派なクリスマスイベントの完成です。ある意味、神をも怖れぬ祭り好きが日本人です。
通販業者はもちろんとして、物販をしていない業種でも可能です。たとえば、
- 「資料請求」
- 「見積もり依頼」
してきたお客を対象にプレゼントなどを企画すればよく、さらには、
- 「問い合わせ」
を対象にしてもなんら問題ありません。この便乗具合はリアルの店舗に学ぶべきで、クリスマスパッケージの「刺身の盛り合わせ」を販売するスーパーマーケットは実在します。
記憶に残るイベントとは
最も簡単なイベントは「値引き」です。数字の操作だけですから小学生でもできます。反面、利益率を悪化させ、客に「安い価格」を経験させてしまうので、イベント終了後の利益率の落ち込みは覚悟しなければなりません。次に「ポイント還元」があります。実質、値引きと同様ですが、こちらは「囲い込み」が期待できます。デメリットは現金値引きよりインパクトが弱く、貯めたポイントはいずれ消費されると見越して、引当金を積みますと行った会計上の処理が必要となることです。
ただし、値引きもポイント還元も「数字」のやりとりで、あまり上策ではありません。同業者が真似しやすく、客にとっても金銭的メリットしかなく、記憶に残りにくいからです。一方、客がみずから参加できるイベントなら、その体験から記憶に残ることを期待できます。
店頭でもっとも準備がいらないのが「じゃんけん大会」です。お客とスタッフがジャンケンし、その結果によりメリットが発生するというものです。ネットではむずかしい……けれど不可能ではありません。各種ビデオチャットを使えば実現できますし、電話で受け付ける方法もあります。あるいは店舗の大会の様子をユーストリームで実況生中継するのもありでしょう。AKB48の影響で「じゃんけん」は、いま旬かもしれません。
お客のメリット
次に簡単なのは「三角くじ」。パーティグッズ販売店で白紙(未記入)の三角くじを購入し、そこに「あたり」と書いて商品や資料に同封するだけで、お客に開封時のドキドキ感をあじわわせることができます。少し手の込んだことをするなら「ビンゴ」です。クリスマスイブの夜に、サイト上で「ビンゴ大会」を開催します。会員登録などビンゴカードを配り、「番号」はツイッターで「Tsuda(ITジャーナリストの津田大介氏から派生した言葉で実況中継を意味)」ります。ビンゴはもちろん、リツイートによる広がりも期待できます。いまのご時世だからできるネットイベントです。
最後に古典的な方法としては「宝くじ」があります。お手製でかまいません。12月25日に日付が変わった深夜0時に「当選番号」を発表するという方法もあります。手元の数字と合わせる緊張感でお客を喜ばせるのです。
それでは当たったお客に何を提供すべきか。ポイント制を導入しているなら「ポイントプレゼント」もありですが、現実的には「物品」がよいでしょう。これは現金値引きのときに述べた理由と同じです。お客の立場として、身銭を切ってまでは買わないが、プレゼントされたら嬉しいものがベストです。
頭を使えばなんでもできる
物販事業なら、店頭で販売している商品をプレゼントに回せば、かかる費用は仕入れ値という原価で収まります。お客は小売価格1,000円相当のプレゼントと悦び、店は仕入れ値の500円の出費で済みます。また、新たな仕入れも不用で、ロスが少ないこともメリットです。
より戦略的にするなら、今後プッシュしていきたい商品をプレゼントすることで、市場認知度を上げるチャンスとして活用することもできます。ただし、不良在庫をプレゼントにするのだけは厳禁です。ものあまりの現代日本で、いらないものを押しつけられて喜ぶ客などおらず、身銭を切って客の不興を買うはめになりかねません。
ウェブだからといってイベントに高度なシステムが必要だとは限らず、アイデア次第です。プレゼントとしては、他にも「増量」「まとめ売り」「特製グッズ」などなどありますが、ひとまずここまで。
今年だからこその
これはブラックな現場の話。大々的なプレゼントキャンペーンを打ち出しておきながら、それを履行していない店舗は少なからずあります。消費者に対する背信行為で「公取委」に見つかれば処罰されますが、罪を犯しても行うのは集客効果があるからです。不正をしろというのではありません。まっとうな商売をしている企業こそ、イベントに便乗して、売上を伸ばしてほしいという願いを込めての暴露です。
今年は東日本大震災がありました。そこでこんなイベントはどうでしょうか。
クリスマスイベント期間中、売上の1%を被災地支援のために寄付いたします
とうたい、送付した商品に、寄付金額を記したお手製の「領収書」を添えるのです。
●●さまのお気持ち、確かに被災地に届けます
と一文を添えて。偽善と言われたとしても、やった分だけは優しい気持ちになれます。
今回のポイント
クリスマスには便乗する
ユーストリームやツイッターなどを組み合わせれば可能性は無限大
- 記事種別:コラム
- コーナー:企業ホームページ運営の心得
- 内容カテゴリ:Web担当者/仕事
- タグ:イベント
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オリジナル記事:いまから間に合うクリスマスイベント [企業ホームページ運営の心得] | Web担当者Forum
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