とある人気企画に便乗して、誰もが知っている話題のサービスを「もし、リスティング広告で集客するなら」と想定して、どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説してみよう。リスティング広告のケーススタディを用いて仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトにリスティング広告を行う際に役立ててほしい。
一回限りで終わるかもしれないが、今回は株式会社タスケが運用するヤンキー専用SNS「ヤンキー愛羅武勇(やんきーあいらぶゆう)」を取り上げる。サービス開始後、各所で話題になり、現在では新規会員登録ができないほどの人気ぶりになっているため、すでにご存じの方も多いのではないだろうか。
あらかじめお伝えしておくと、筆者はヤンキーではない。東北育ちでその上男子校出身であるため、ヤンキーや走り屋の友達が大変多かった事実は認めざるを得ないが、私自身は現ヤンでなければ元ヤンでもないので、本物のヤンキーとは若干視点が異なってくるかもしれない。そのあたりはご容赦いただきたい。そしてこのサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。
「ヤンキー愛羅武勇」への入会者獲得を目的に
リスティング広告を利用するにあたって最も大切なのは、「何のために広告を出すか」の目的を明確にすることだ。予算をかけるからには成果を明確に得たいし、目的が明確になっていないと費用対効果も測定できないからだ。
今回の対象サイト「ヤンキー愛羅武勇」でリスティング広告を利用するとしたら、考えられる目的としては、次のようなものが挙げられる。
- サイトへの集客(PV数増)
- 無料会員の獲得
- 有料会員(ゴールド会員)の獲得
- 広告出稿クライアントの獲得
「ヤンキー愛羅武勇」は登録しないと利用できないSNSなので、単なるPV数を目的とした集客はないだろう。それ以外の目的を見ても、サービス開始から間もない現在は、広告クライアントや有料会員を狙うよりも、やはり無料登録のユーザーを集めたいところだ。
そのため、今回はリスティング広告利用の目的を無料会員の獲得とする。
「ヤンキー愛羅武勇」への入会ターゲット
目的が明確になったら、次はターゲットの選定が必要不可欠だ。どういったターゲットにどういった広告を届けるのかを考えるのは基本中の基本。ここが定まっていないリスティング広告がうまく行くことはありえない。
ではターゲットを考えてみよう。
- ターゲットその1 ―― 現役ヤンキー、元ヤン
- ターゲットその2 ―― 現役レディース、元レディース
- ターゲットその3 ―― 興味本位のユーザー
- ターゲットその4 ―― ヤンキーへの憧れをもつユーザー
ベタなところで大変恐縮ではあるが、正直なところ、ターゲットはこのくらいになってくるのだろうと思われる。ヤンキー専用SNSというくらいだから、やはりヤンキー経験者への訴求が主軸となってくるだろう。
とはいえ、SNSでユーザーの満足度を向上させるためにも、会員数を多くすることは重要だろう。となると、ヤンキー経験者のみを対象とするだけでは、多くの会員を獲得するという数の面では不十分な可能性がある。ということは、興味本位のユーザーを取り込むのも1つの案となる可能性があるので、候補に入れておくことにしよう。話題性があるコンテンツであるため、獲得に貢献してくれるかもしれない。
実際のリスティング広告を行う場合でも、限られた予算の中でどういったターゲットに届けるのかを徹底的に考える必要がある。
予算が多くないのであれば、「可能性」のためにターゲットを広げるのではなく、主軸となるターゲットのみに配信するように絞るべきだろう。実際、そういった例は少なくない。
いずれにせよ重要なのは、予算と目標値から獲得数(利益)が最大化できる可能性の高い最善の戦略を導き出すことなのだ。
検索連動型広告について
ヤンキー専用SNSは検索連動型広告で会員を獲得できるのだろうか。
たとえば、会員獲得につながるキーワードとして、すでにこのサービスを知っているユーザーがサービスを探すために検索するだろうキーワードがある。たとえば次のようなものだろう。
- ヤンキー専用SNS
- ヤンキーSNS
- ヤンキー愛羅武勇
- ヤンラブ
特に、これらのキーワードに対して他のSNSサイト(つまり競合サイト)が広告出稿している場合には、ぜひ自社ブランドを保つためにも出稿すべきだろう。他の競合が出稿せず、検索を行った場合に自社がオーガニック検索で1位に表示される場合には、特に出稿の必要はない。
その他にも、一般的なソーシャルネットワークを表すキーワードでの獲得も不可能ではないだろう。たとえば次のようなものだ。
- SNS
- 無料SNS
しかし、mixiやFacebook、アメーバピグなどその他にもさまざまな無料のSNS系のサービスが存在している以上、こういったキーワードに出稿しても、安い獲得単価で会員を増やすことは期待できないかもしれない。
さらに、ターゲットごとに検索クエリが明確に分かれるものでもないと考えられるし、特にヤンキー専用SNSという時点でかなりのセグメントがかけられてしまっているため、なかなか検索キーワードが思いつかない。
ユーザーの意図が明確な検索連動型広告には、今回の案件は適さない可能性が高いのではないだろうか。
コンテンツ連動型広告について
ブランドネームや関連性の高いキーワード以外の検索連動型広告が有効に働かないという仮説が立てられてしまったので、コンテンツ連動型広告を駆使して会員獲得を目指したい。コンテンツ連動型広告は検索連動型広告とは異なり、さまざまなユーザーへ広告を届けられる広告だからだ。
では、どのようなコンテンツを閲覧しているユーザーへの訴求が有効に働くかを、ターゲットごとに分類して考えてみたい。コンテンツ連動型広告成功の要は、ターゲットの興味そのものを徹底的に知ることだ。そして、そのカテゴリーへの正確な広告配信が重要になってくる。
ターゲットその1現役ヤンキー、元ヤン
筆者の経験上聞くところによると、現役ヤンキーと元ヤンキー(引退者)の思考は似て非なるものが多いようなので、ある程度は異なるものであると考えるのが良さそうだ。
ここでは、現ヤンと元ヤンで共通した要素と、現ヤンと元ヤンで異なる要素のそれぞれで考えてみる。
- ヤンキー
- 暴走族
- 夜露死苦
- 喧嘩上等
- シャコタン
- チャンプロード
- 単車
- 根性焼き
- などなど……
素人の筆者が何も調べずともこのくらいの関連性の高いカテゴリーが洗い出せてしまったことは内緒だが、ページにも限りがあるのでこの辺りでいったん洗い出しを止めておく。実際にはまだまだあるようだ。
さて、関連性の高いカテゴリーの洗い出しはここからが本番だ。
まず、現役ヤンキーが興味をもっていそうな項目を洗い出してみよう。
- ゼファー
- ZRX
- バンディット1250S ABS
- マジェスティー
- フュージョン
- CB400F(ヨンフォア)
- CBX
- 族車
- メンズナックル
- メンナク
- などなど……
さまざまな意見があるだろうが、現役のヤンキーはやはりバイクへの興味が強い傾向があり、さらには最近のヤンキーはお洒落だと小耳に挟んだのでビックスクーターのマジェスティーやファッション雑誌のメンズナックルなどを洗い出した。
続いて、元ヤンが興味をもっていそうな項目を洗い出してみよう。
- セルシオ
- シーマ
- グロリア
- セドリック
- チェイサー
- kawasakiZ2(Z2)750RSを代表とするkawasakiのバイク
- 湘南純愛組
- 湘南爆走族
- カメレオン
- 特攻の拓
- クローズ
- などなど……
元ヤンということで、現役よりも金銭的な余裕も含めて二輪よりも四輪に興味がある傾向が強く、その中でもVIPと呼ばれるセルシオ、シーマなどの関連性は極めて高いと考えることができる。あとはヤンキーマンガの関連性も非常に高くなっていくだろうと予測できる。
前述したとおり、「コンテンツ連動型広告」は、ブログなどに代表されるさまざまなコンテンツと連動して表示される広告だ。そのため、検索連動型広告とはまったく異なる思考を持って臨まなければ大きな成果を生むことは難しい。実際に、上記で洗い出したキーワードのなかにも、検索連動型広告で入札しても何の意味もないがコンテンツ連動型広告では効果が出るといった類のものがいくつかある。
つまりコンテンツ連動型広告では、「何を売るのか」を主体とした視点から、「誰に売るのか」を含んだ視点が重要になってくる。
対象とするターゲットはどんなものに興味があるのか?
その思考こそが、コンテンツ連動型広告のすべてであるといっても過言ではない。それらを踏まえて、興味があると仮説立てしたコンテンツにコンテンツ連動型広告を届けることができれば、あとはその仮説を検証するのみとなる。
こうした調査と効果検証を経たコンテンツ連動型広告は、検索連動型広告の威力を超える集客力を発揮するケースも多々あるのだ。
ターゲットその他その他のセグメント
本来は、上記のようにしてすべてのターゲットの興味分野を洗い出す予定だったが、あまりに膨大なカテゴリー数になるため、この記事での記載は断念した。「ターゲットその1:現役ヤンキー、元ヤン」で洗い出した流れで、その他のカテゴリーも洗い出すと良いだろう。
たとえば、元レディースにコンテンツ連動型広告を届けたいのであれば、「小悪魔ageha」を筆頭とした読者モデル陣での関連性は非常に高そうだし、すでに休刊になってはいるが「ティーンズロード」などの雑誌は関連性が非常に高いだろう。
実際にコンテンツ連動型広告で成果を上げ続けるリスティング広告プレイヤーは、多くの広告グループを運用している。少なくても数十グループ、通常でも数百グループ、場合によっては数千の広告グループを運用し、関連性によってさまざまなカテゴリーへ広告配信しているケースも少なくないのだ。
広告文について
配信は上記のとおりでうまくいった場合も、広告文でターゲットの心を掴まなければ、入会してはくれない。次に考えるべきは、広告文の作り方だ。
本来ならば、競合他社とのポジショニングマップを作成したうえで、適切な広告文を作成していくものだ。しかし今回は、ヤンキー専門SNSである以上、競合となるサービスは現時点ではないといってもいいだろう。そのため、ヤンキー専門SNSであるということを前面に打ち出し、入会のメリットやユーザーの特性に刺さる文面などを押し出していくことで、良い成果を得られるはずだ。
現役、元ヤンキーのキミへ挑戦状
ヤンキー専用SNS「ヤンキー愛羅武勇」
キミは目立ちまくることができるか?
ガイアがキミに輝けと囁いている
ヤンキー専用SNS「ヤンキー愛羅武勇」
縄張り抗争への爆裂参戦を期待してるぞ!
ここで書き出したサンプルの広告文は一例に過ぎない。まだまだ多くの表現方法があるし、何が刺さるかは配信した後でなければわからない。コンテンツ連動型広告はさまざまなバリエーションを持って臨むことが重要で、徹底した仮説立案の後の検証によってより精度の高い広告文を育てていくことが重要になってくる。
また、テキスト広告での配信も有効だが、イメージ広告(バナー広告)を利用することでより訴求力が高まるだろう。特にサービスが認知されていない段階でのイメージ広告での誘導は効果的に働くことが多い。
リマーケティングについて
リマーケティングとは、Googleアドワーズ広告のディスプレイネットワークの中に含まれる配信形態の1つで、わかりやすく言うと、一度サイトに訪れたユーザーに向けて再訪を促す広告で、その威力は甚大だ。
リマーケティングとは、一度サイトに訪れたことがあるユーザーに対して、そのユーザーが他のサイトを見ているときに、コンテンツ連動型広告で広告を表示する仕組み。
通常はこれが有効に働くケースが多いが、ヤンキー専用SNSである以上、対象は現役、もしくは元ヤンキーの方々だ。あまりしつこく追い回して大変なことになるやもしれぬので、まずは対象期間を5日ほどに限定して成果を見るのが良いだろう。
苦情もなく、成果が上がり続けるようであれば、徐々に対象期間を引きのばしていくというのが最善だろう。
今回は「ヤンキー専用SNS」に焦点を絞ったために少々悪ふざけのような印象を与えてしまう記事になってしまったが、筆者は大真面目にこの記事を執筆している。
リスティング広告で大事なことは、次の2点だ。
- 明確なターゲット設定
- 明確な目的の設定
ターゲット設定に関しては前述のとおりだ。今回は、“目的”に関しては特に明確には書いていないが、予算などは考慮せず、ターゲット設定やサービス特性を中心とした戦略立案となっている。本来は徹底した仮説立てによって、限られた予算の中での現実的な落とし込みを見据えて戦略を洗い出していくことが重要になってくる。
その仕組みから、「リスティング広告はだれにでもできる」。しかし、利用し始めると「リスティング広告は難しい」という人も多い。管理画面が複雑で、配信手法にもさまざまあるからだろう。しかし、「誰に何を売っているのか?」という点を明確に、かつしっかりともってリスティング広告に取り組めば、どういったカテゴリーが対象サービスのターゲットと密接に関連してくるのかを洗い出すことができるはずだ。
あなたのサービスのターゲットはあなたと同様に1つのサイトやカテゴリーだけに興味を持っているわけではなく、さまざまなページを訪れ、コンテンツを読み、多くのサービスを利用しているはずなのだから。
さて、このコーナーでは、
- Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってにリスティング広告」してほしいリクエスト
- 「かってにリスティング広告」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論
などを随時募集している。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。
- 記事種別:解説/ノウハウ
- 内容カテゴリ:SEM
- コーナー:有名サイト、かってにリスティングで集客!
※このコンテンツはWebサイト「Web担当者Forum - 企業ホームページとネットマーケティングの実践情報サイト - SEO/SEM アクセス解析 CMS ユーザビリティなど」で公開されている記事のフィードに含まれているものです。
オリジナル記事:もしも、ヤンキー専用SNSをリスティング広告で集客したならば。 [有名サイト、かってにリスティングで集客!] | Web担当者Forum
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