この記事では、一般消費者1万人と企業400社への調査データから、日本のソーシャルメディアの利用実態を明らかにした、書籍『ソーシャルメディア白書2012』のなかから、Web担の読者向けに注目データをピックアップし、全9回にわたってお届けします。
- 活用度の高い企業ほどユーザーの育成に積極的
- 上級活用企業では中長期的な目的での活用が増加
- 効果測定の実施率はわずか30%
活用度の高い企業ほどユーザーの育成に積極的
企業のソーシャルメディア活用について調査を行ったところ、現在、企業の広報・マーケティング活動で最も活用されているソーシャルメディアはTwitterおよびFacebookであり、上級活用企業ではさらにブログなど、様々なソーシャルメディアが活用されています(図1)。
今後はYouTubeやUSTREAMなど動画系サービスの活用や、ソーシャルアプリの展開などが予想されます。また、TwitterやFacebookなど、自社公式アカウントの活性化施策としては、上級活用企業の6割以上が「投稿コンテンツの工夫」と回答しました(図2、図3)。
そのほか、Facebookページのファン増加施策では、「企業ホームページなどからのリンク」といった既存資産の活用のほか、上級活用企業を中心に「Facebook広告の出稿」など積極的な投資も行われており(図4)、ソーシャルメディア上の自社コミュニティを積極的に育成する姿勢がうかがえます。
上級活用企業では中長期的な目的での活用が増加
企業のソーシャルメディア利用目的としては、「広報」や「プロモーション/キャンペーン」や「認知向上」など、従来マスメディアを中心に行ってきた施策をソーシャルメディアで強化・補完しようとする割合が50%を超えています(図5)。一方でソーシャルメディア活用度が高い企業ほど、それ以外の「ブランディング」「サイト流入強化」「潜在顧客の育成」など、中長期的な利用目的の比率が高くなることがわかりました。
ソーシャルメディア活用のきっかけを見ると、「ほとんど予算をかけずに始めることができるから」というソーシャルメディアならではの「始めるハードルの低さ」が目立ちました(図6)。しかし、ソーシャルメディア活用度の高い企業ほど「流行っているから」「乗り遅れるとまずいと思ったから」といった受動的な理由よりも、「マーケティング課題を解決するために有益だと判断したから」「上層部・上長からの指示を受けて」といった、経営判断に基づくソーシャルメディアの活用開始を理由として選択した割合が高くなっています。
効果測定の実施率はわずか30%
企業活動におけるソーシャルメディア活用の効果としては、「自社サイトへの流入が増加した」が最も多く、次いで「会社や商品の認知度が向上した」と「ブランド好意度が増した」が続きました。上級活用企業は、活用初期/中期企業に比べ自社サイトへの流入増加やブランド好意度向上の項目数値が高いほか、社内の風通しや意識の改善にまで幅広く効果があったと回答しています(図7)。
効果測定の実施有無については、ソーシャルメディアマーケティングに取り組む企業全体のうち、30%にも満たない結果となりました(図8)。上級活用企業では半数(54.3%)を超えていますが、現状においては多くの企業においてノウハウや人材が不足していることがうかがえます。
また、上級活用企業は測定指標についても、「いいね!、コメント、シェア、RT(リツイート)数など」や「PV(ページビュー)やUU(ユニークユーザー)」といった、KPI(Key Performance Indicator:重要業績評価指標)だけでなく、収益やブランド好意度、想起率・購入意向・推奨意向といったKGI(Key Goal Indicator:重要目標評価指標)を測定していることがわかります(図9)。
ソーシャルメディアの活用度が高い企業ほど、デジタルマーケティングにおける一般的な短期的成果指標を測定するだけでなく、中長期的な活動によって獲得する「意識変容」まで測定することで、ソーシャルメディア活用の効果をより正しく評価しようとしていることがうかがえます。
ソーシャルメディア白書2012からのデータ紹介、第8回は「企業におけるソーシャルメディア活用の実態」について紹介しました。
この調査から、積極的に活用している企業とそうでない企業の間には多くの違いがあることがわかりました。活用に積極的な企業はTwitter、Facebookだけでなく、YouTubeやUSTREAMなどまで活用しており、「広報」や「プロモーション/キャンペーン」などだけでなく、「ブランディング」や「潜在顧客の育成」といった中長期的な目的にもフォーカスしていました。また、効果測定の実施についても大きな隔たりがあり、KGIのような本質的な意義を考えた運用がなされているのが上級活用企業の実態のようです。
今回の調査では、上級活用企業は36社/406社とわずか9%にとどまりましたが、このような本質的な運用を行う企業がさらに増加していくことが強く望まれます。
次回は「企業におけるソーシャルメディアリスクと運用体制の現状」についてご紹介していきます。
- 調査目的:企業におけるソーシャルメディアマーケティングの取り組み状況および今後の課題把握
- 調査期間:2011年9月26日(月)~2011年10月25日(火)
- 調査手法:郵送調査&インターネット調査
- 調査対象:上場会社と有力未上場企業、外資系企業および上場会社の子会社・関連会社
※株式会社東洋経済新報社が独自調査で収集した、国内4万社(上場会社と有力未上場企業、外資系企業および上場会社の子会社・関連会社)を収集した企業リスト『日本の会社データ4万社』(2011年4月版/株式会社東洋経済新報社)に掲載された企業より選定した。 - 発送数:6,972社
- 回収数:406社(回収率5.8%)
50人未満 | 71 |
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50~100人未満 | 47 |
100~200人未満 | 47 |
200~300人未満 | 36 |
300人~500人未満 | 47 |
500~1,000人未満 | 44 |
1,000~3,000人未満 | 59 |
3,000人以上 | 51 |
日本では本格的なソーシャルメディアに関連したデータ集が圧倒的に不足しており、提案の現場では海外調査データや簡易的なウェブ調査などが多数引用されている状況である。そこで本書は、消費者や企業のソーシャルメディアの日本での利用実態を多様なデータとともに明らかにする。今後、ソーシャルコマース、ソーシャルCRM、ソーシャルゲームなど、さらにソーシャルメディアは存在感を増していくなか、本当に使えるデータを網羅する!
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- コーナー:ソーシャルメディア白書2012 ハイライト
- 内容カテゴリ:調査/リサーチ/統計
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オリジナル記事:ソーシャルメディアの効果測定、企業の実施率はわずか30% | ソーシャルメディア白書2012 ハイライト #8 [ソーシャルメディア白書2012 ハイライト] | Web担当者Forum
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