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“そんなことはありません”改善チャンスをなくしたネットビジネス [企業ホームページ運営の心得] | Web担当者Forum

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この記事を読むのにかかる時間: 約 3 分
Web 2.0時代のド素人Web担当者におくる 企業ホームページ運営の心得

コンテンツは現場にあふれている。会議室で話し合うより職人を呼べ。営業マンと話をさせろ。Web 2.0だ、CGMだ、Ajaxだと騒いでいるのは「インターネット業界」だけ。中小企業の「商売用」ホームページにはそれ以前にもっともっと大切なものがある。企業ホームページの最初の一歩がわからずにボタンを掛け違えているWeb担当者に心得を授ける実践現場主義コラム。

宮脇 睦(有限会社アズモード)

心得其の264

ネットに活路で60分

ゴールデンウィーク前に久しぶりにチラシを制作しました。いまでは執筆とウェブからの収入で生活していますが、昔なじみのお客様の依頼だけはうけています。新店告知のチラシで、部数は1万部ちょっと。印刷会社は持っている機械により得手不得手があり、大きく分ければ大部数に強い「輪転機」と、少部数が得意な「平台(枚葉)」で、いつも取引しているのは前者でした。そこで少部数が得意という地元の印刷屋に声をかけます。

印刷業界は構造的不況を抱えており、昔なじみの印刷屋が民事再生法の適用をうけるなど逆風に晒されています。そのなかでこの印刷屋は「ネット注文のみ」という戦略に転じており、そのやり方を見てみたいという理由もありました。地方都市にある企業が、ネットに活路を見いだす事例は数多いのですが、首都圏近郊で果たしてどんなやり方をしているのだろうかと。

ネットから注文するのに40分以上かかりました。というか、40分でネットを断念し、電話をかけたのです。しかし、それでも解決できず、ようやく注文できたのが1時間後です。

エラーがグレードアップ

ホームページで部数とサイズ、色数を指定しました。色数とは4色がいわゆるカラーで、表裏のそれぞれを指定します。こうしたいわゆる「仕様」を入力し終えた時点で、「会員」にならないと注文できないと警告が表示されます。そこで会員登録を済ませ注文フォームへ戻ります。

新聞折込に使うチラシは「折込会社」へ搬入しなければならないので、「納品先」は発注主である弊社ではなく折込会社の住所を指定し「次へ」をクリックします。すると「お届け先が入力されていません」とエラーメッセージが。小首をかしげながら再度入力しますが、やはりエラーとなります。入力順を変えるなど、いろいろ試しますがやはりエラーです。

そこでログアウトしてから、ログインし注文フォームへ遷移すると、先ほどの注文内容が保存されていたので、同様に納品先を入力し「次へ」をクリックすると、エラーはグレードアップし、「PHP」の警告メッセージが出て処理が中断されます。

そんなものだという認識

パラメータに関する警告がでており、他のPCから検証したところから「クッキー」の取得に問題があるのだろうと推測します。なんやかやと40分試したところで、印刷屋に電話をかけ、状況を告げます。すると

そんなことはありません

との回答。担当者いわく、いままでそういうクレームや問い合わせはなかったといい、現時点でサーバーも正常に動作しているので、注文できないことはあり得ないといいます。余計なお世話だろうと思いつつも食い下がったのは、頑張っている地元企業を応援したいという気持ちと、昔なじみの印刷屋が民事再生となったこと。そして「Web担当者」として教えてあげたいという老婆心からです。そこで次のように告げます。

PHPというプログラム言語でのエラーが表示されている。エラーメッセージと状況から推測するに入力データを拾えていないようなので、その対処法をWeb担当者かシステム会社に確認をとってもらえないか。またエラーメッセージをメールで送ってもいい

チャンスを自ら潰す

メールを送られてもどうにもできない

電話口で溜息混じりに答えられ、私は受話器を置きました。エラーの原因ですが、想像するに注文と会員情報が紐付けされており、会員登録する前に「クッキー」に記録された注文情報を正しく処理できなかったのでしょう。別ウィンドウから新しい注文として入力し直せば5分もかからず注文できました。

そもそもトラブルに声を上げる客は少なく、不満を告げずに去る客を「サイレントカスタマー」といいます。彼らは「改善」のチャンスを与えてくれません。ましてや「ネット」では、客が他社に乗り換えるコストはほぼゼロ円ですから気軽に浮気します。だからこそ、わざわざ声を上げてくれたお客の声には誠実に対応しなければならないのです。仮に勘違いによるクレームでも、「勘違いしやすさ」を改善するチャンスなのです。

客の苦悩を教えてくれる

「客の声」が「ログ」に現れることもあります。ある美容室の生ログをみていると、「入力確認」で立ち往生している客を発見しました。予約フォームで「入力確認」から「申し込み(確定)」へと移行せずに、何度も「入力確認」を繰り返しているのです。

この予約フォームはデータベースと連動していないため、電話や店頭での予約とバッティングすることがあります。そのため入力された「予約希望時間」の変更をお願いすることもあり、特に電話を念頭においた「ご連絡希望時間」という入力欄があります。丹念にログを確認してみると「ご連絡希望時間」の未入力でエラーとなっていました。この客は「予約希望時間」と「連絡希望時間」の区別がつかずに、なんども「入力確認」をクリックして、その度にエラーと表示され、予約をあきらめてしまっていたのです。すぐに説明を追加したことは言うまでもありません。

心に巣くう魔物

どれだけ綿密に設計したつもりでも、完璧なシステムもコンテンツもありはしません。人は神ではないのです。そもそも神になる必要などありません。不備は客が教えてくれるのですから。

先の印刷屋のケースは、日頃からWeb担当者が現場とコミュニケーションを取っておく必要性も教えてくれます。電話を受けたのはWeb担当者ではないでしょう。それ故に心の魔物が囁いたのかもしれません。

面倒だ

ほとんどの社員は自分の仕事が増えることを嫌います。ましてや専門外のトラブルは極力遠ざけようとします。だからわざわざ客がエラーメッセージをメールで送るという申し出をサクッと断れたのです。電話や対面から伝えられる「客の声」は、サーバーに保存されるメールフォームと違い、現場の担当者の気分次第で闇に葬られてしまいます。

そして私と同じトラブルに遭い、注文をあきらめているケースは少なからずあるでしょう。ネットを主戦場に移し、多額の広告費を投じている端から取りこぼしている。実にもったいない話です。

今回のポイント

エラーに眠る客の声

客と接する部署との連絡は密に

宮脇睦

宮脇 睦(みやわき あつし)

プログラマーを振り出しにさまざまな社会経験を積んだ後、有限会社アズモードを設立。

制作、営業の双方の現場を知ることからウェブとリアルビジネスの融合を目指した「営業戦略付きホームページ」を提供し、一業種一社、制作案件は足立区内のみという営業施策をとっている。本業の傍らメールマガジン「マスコミでは言えないこと」を発行。好評を博す。著書に『Web2.0が殺すもの』『楽天市場がなくなる日』(ともに洋泉社)、『月刊宝島』などに寄稿。

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