セミナーイベント「Web担当者Forumミーティング 2012 Spring」(2012年4月19日開催)の講演をレポートする。他のセッションのレポートはこちらから。
A会場の午後最初のセッションは、インテリジェンスが運営する転職サイト「DODA(デューダ)」のウェブマーケティング担当者と、ウェブ解析ツールを提供するユーザーローカル担当者とのトークセッションが行われた。ユーザーのページ内行動の解析結果を基にサイトを改善し、大幅な成果向上に結びつけた事例が紹介された。
コンバージョン率1%前後から最大15%まで大幅改善
本セッションのホスト役を務めるのは、ウェブ解析ツールを展開するユーザーローカルの渡邊和行氏。同社のウェブ解析ツール「ユーザーインサイト」は、ユーザーのWebページでの行動をサーモグラフィーのように色の違いで可視化する行動解析と、年齢や性別などの属性を推測するユーザー分析の2点に、強みを持っている。
本セッションのテーマは、ユーザーのページ内行動の可視化による改善事例。総合人材サービス大手インテリジェンスの求人・転職サイト「DODA」でウェブマーケティングを担当している畑邊氏を招き、実際に大幅な改善に成功したノウハウが共有された。
本セッションの結論を先に述べると、「ユーザーインサイト」を用いてページ内行動を可視化し、改善を重ねたところ、コンバージョン率を1%程度からページにより5~15%程度まで高めることができた。可視化されたユーザー行動のどこに着目し、どんな改善策を実施したかが具体的に明かされ、ウェブ担当者にとって収穫の多いセッションになったはずだ。
DODAの担当者として、転職志望者をDODAのサイトに集客し、コンバージョン(転職への応募)につなげるための施策を立案・実践する畑邊氏は、まず媒体であるDODAについて説明する。サイトの設立は2007年1月で、常時、数千件の求人案件を掲載している。サイトの目的は次の2つだ。
まず1つは、企業に求人広告を掲載してもらうこと。もう1つは、その広告に応募する転職志望者を集めること。畑邊氏に求められているゴールは後者になる。
ユーザーを適切な求人案件に導くためには、ユーザーの行動や属性を把握することが不可欠だ。そのためのツールとして畑邊氏が選んだのが、行動解析や属性分析に強みを持つユーザーインサイトだった。
DODAはサイトに複数の“特集ページ”を設けており、たとえば「第二新卒歓迎企業特集」や「スマホ・ソーシャル企業特集」などのように、カテゴリを絞って求人情報を紹介している。この特集ページが、求人一覧ページひいてはコンバージョンに至るまでの重要な導線になっており、畑邊氏は「サイト全体を最適化するというより、それぞれの特集ページを最適化する
」というイメージでユーザーインサイトを導入したことを明かした。
アクションに至らないユーザーの行動を解析し、成果に結びつける
このような背景を踏まえたうえで、畑邊氏の話はユーザー行動の解析結果に基づく具体的なサイト改善手法へと移った。まず改善前の特集ページのデータだが、求人一覧ページ(このページを経てコンバージョンにつながる)への移動率は一桁台(パーセント)で、離脱率は70~80%に上っていた。求人一覧ページ移動後の応募(コンバージョン)率も、1%前後にとどまっていたという。
こうした状況を改善するために導入されたのがユーザーインサイトだ。ユーザーインサイトには冒頭で説明したように、「ユーザーがページ内のどこを見ているのか」を可視化する機能が備わっている。この機能はヒートマップと呼ばれ、よく見られている箇所は赤、あまり見られていない箇所は青、その中間はオレンジや黄色、緑色で表される。人や動物、物の温度を視覚化するサーモグラフィーと同じ表現手法だ。加えて、ユーザーが「ページのどこまで見て離脱したか」「どのリンクをクリックしたか」も可視化できるようになっている。
こうしたユーザーインサイトの解析機能を用い、ユーザー行動を可視化した結果、ページの課題も浮かび上がったと畑邊氏は話す。
コンテンツに関しては、ページの最後の方までよく読まれていました。しかし求人一覧ページへのリンクを多く設置しすぎて、ユーザーを迷わせてしまった形跡が見て取れました。離脱が怖くて導線をたくさん設けたことが、ページ内のクリックを分散させる結果につながってしまいました(畑邊氏)
つまりコンバージョンにつながる質の高いクリックを、思うように得られていなかったのだ。この可視化データに基づき、畑邊氏は1度目のサイト改善を行った。具体的には、ページ内に分散していたリンクをページ下部にまとめたのだが、これだけでは大きな改善は見られなかった。
ユーザーインサイトで可視化すると、ページ内のコンテンツは全般的によく見られており、特に下部が熟読されていることがわかりました。しかし、その割にリンクはクリックされていない。つまり、ページ下部にあるリンクにたどりつかずに離脱してしまうユーザーを減らすことができない、という課題が残りました(畑邊氏)
だれもがわかる形で改善結果を可視化
そこで畑邊氏は、データを基に「求人案件を早く見たい方はクリックしてすぐ見られるように、業界の情報を知りたい方は記事を全部読んだうえで求人一覧ページに移動できるようにすれば、それぞれのニーズを満たせるはず」と新たな仮説を立て、2度目の改善に取り組んだ。仮説を基に、ページ上部に求人企業のロゴと求人一覧ページへのリンクを設置し、さらにページの各所にも求人案件へのリンクを設置したのだ。ボタンもより目立たせている。
こうした改善結果はヒートマップ機能で、だれもがわかる形で可視化された。ページの上部3分の1にもたどりつかないうちに、半数以上のユーザーが離脱していたのだ。同時に熟読場所も、ページ上部の企業ロゴあたりが際立つようになった。しかしその一方、求人一覧ページへのクリック数は、全体として向上したという。
求人情報をすぐに見たいというユーザーと、最後まで記事を読みたいというユーザーに、それぞれ別の導線を設計する。この改善により、まさに畑邊氏が意図していた通りの結果が得られたことが明らかになった。
改善結果を数字で言いますと、求人一覧ページへの遷移率は一桁台から30%台に、離脱率は70~80%だったのが10~20%に、コンバージョン率は1%前後から特集によっては15%まで高めることができました。ユーザーインサイトのヒートマップによって気づきを得たことが、結果に結びついたと思います(畑邊氏)
畑邊氏が、ユーザーインサイトを導入したのは2011年2月。こうした成功事例が出てきたことで、各特集ページの担当者がレイアウト改善などにヒートマップを役立てるケースも増えてきたそうだ。ヒートマップは、ぱっと見て感覚的に課題や改善点がわかり、解析の専門知識のない担当者レベルでも扱いやすい点が魅力だという。
従来の解析ツールでは、ユーザーが来てこのリンクをクリックしたという“点”の部分しかわかりませんでした。しかし、ユーザーインサイトによって、そうした点と点の間でユーザーが何をしているかがわかるようになってきた。私は部内で“行間を読む”と言っていますが、アクションに至らないユーザーの行動をもっと解析して求人企業と求職者のマッチング精度を高め、担当者間でその知見を共有していきたいと思っています(畑邊氏)
畑邊氏は今後も行動解析を積極的に利用していくと述べ、まさに桁違いの成果を挙げた事例報告を締めくくった。
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オリジナル記事:転職サイト「DODA」が実践した、ページ内行動の可視化によるケタ違いのサイト改善 | ユーザーインサイト、インテリジェンス [【レポート】Web担当者Forum ミーティング2012 Spring] | Web担当者Forum
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