前回の記事『アクセス解析データも自動取得できる便利な「コンテンツ在庫表」を作る 第6回』で取り上げたGoogleアナリティクスのデータを自動で取り込めるGoogle Docsのスクリプトが好評だったようだ。「こんなことができるとは知らなかった」「他の目的で使いたい」という声や、任意のデータを取り込めるように実際に応用してみた、といった声がソーシャルネットワークや実際にお会いした人達から寄せられた。
ただし、あのスクリプトはコンテンツ在庫表という用途に特化しているため、汎用的に使うためには改造や工夫が必要になる。ニーズがあるのであれば、それを実現したい。日々のレポート作成業務の負荷を下げるのも、本連載の趣旨「1万円で真似できる“戦略的サイト運用”術」に含まれる。
そこで今回は、より簡単な操作で、柔軟に欲しいデータを取得できるようにバージョンアップしたスクリプトと、それを活用して、見せ方をカスタマイズしたレポートとグラフも自動更新させる方法について紹介したい。
今回の想定真似コスト 3~6時間、ゼロ円
今回紹介するのも、前回と同様にGoogleドキュメントとして作った自動化ツールだ。その名も「GA Client」。あなたのGoogleアナリティクスからデータを自動的に取得してきて、Googleドキュメント上のスプレッドシートにレポートを自動的に作るためのものだ。
この「GA Client」を使えば、いちいちGoogleアナリティクスの画面からExcelにコピー&ペーストしたりCSVをダウンロードして読み込ませたりしなくても、手間をかけずに毎月や毎週のアクセス状況レポートを一瞬で作れる。あなたのGoogleドキュメントにコピーして使えるようにしてあるので、ひととおり使い方を学べば、すぐに使い始められるはずだ。
GAと連携してレポートやダッシュボードを自動更新できる
Googleドキュメント「GA Client」
「GA Client」は、あなたのGoogleドキュメントにコピーして使うように作ってある。以下のリンクをクリックするとテンプレートのGoogleドキュメントが開くので、Googleドキュメントのメニューから[ファイル]>[コピーを作成]を選んで、あなたのGoogleドキュメントに保存して使ってほしい。
- Googleアナリティクスのデータを取得できる「GA Client」 (Googleドキュメント)※このドキュメントをそのまま使うのではなく、Googleドキュメントのメニューから[ファイル]>[コピーを作成]を選んで、自分のGoogleドキュメントアカウントに保存して使用
説明と注意点
- Googleアナリティクスからのデータ取得はMikael Thuneberg氏のスクリプトを利用している
- スクリプトを実行するためには、初回のみ表示される認証ダイアログで「OK」をクリックする必要がある
「GA Client」の設定と使い方
運用をイメージできるように、実際の使い方を手順に沿って紹介しよう。
1. まずはログイン
どのシートからでも実行できるように、Googleドキュメントの標準メニューの一番右に、「GA Client」というメニューを追加してある(表示されていない場合はこの下の説明を参照)。
※表示されない場合は、「Profile」シートにある「Update」ボタンをクリックし、スクリプト承認ダイアログで「OK」をクリックしてから再度「Update」ボタンをクリックする必要がある(都合、「Update」ボタンを2回クリック)。
この「GA Client」メニューをクリックして表示される「Sign In & Update」を実行すると、ログイン用のダイアログが表示される。
Googleアナリティクスにログインするときのメールアドレスとパスワードを記入する。「Stay signed in」にチェックを入れると、次回からログインしないで更新が可能になる。
「Sign In」ボタンをクリックして認証に成功すると、ダウンロードされたプロファイル情報が「Profiles」シートに記入される。
「GA Client」の設定と使い方(続き)
2. レポートに表示するデータの条件を指定する
ログインとプロファイル取得が終わったので、次に「sample_conf」シートに移動し、レポートに表示するために取得したい解析データについての各種条件を指定しよう。記入できるセルのみ背景を白くしてある。
2-1. プロファイル
まず、対象のプロファイル(サイト)を選択する。セル右端の▼をクリックすると、先ほど取得したプロファイルのIDが表示される。選択すると、そのサイトの情報がすぐ下のセルに表示される。
2-2. 対象期間
データ集計の対象期間を開始日と終了日で指定する。それぞれのセルをダブルクリックすると、カレンダーがポップアップ表示されるので便利だ。
2-3. ディメンションと指標
続いて、縦軸のディメンション(区分)と横軸のメトリックス(指標)を指定する。両方とも▼をクリックするとドロップダウンメニューが表示される。それぞれ、最大10個まで指定できる。
- ディメンションと指標については、公式サイトの「ディメンションと指標のリファレンス」が参考になる(現状では英語でしか用意されていないようだ)。
http://code.google.com/apis/analytics/docs/gdata/gdataReferenceDimensionsMetrics.html
2-4. フィルタ
取得するデータを絞り込みたい場合は、取得対象にするための条件を最大20個まで指定できる。絞り込みを行うディメンションまたは指標を選択し、その右隣のセルで条件のロジックを、さらに右側のセルに条件の値を指定する。
不要なデータを取得するとシートが重くなるため、なるべく取得時点で除外するようにしたい。
2-5. 並び替え条件
フィルタと同様、最大10個まで指定できる。左側のセルで、順番を指定する。何も指定しない、または「+」を指定すると、昇順になる。「-」を指定すると降順になる。
2-6. 最大行数
APIの仕様により、一度に取得できるデータの行数は最大1万件と規定されているが、それ以上の件数を指定した場合は複数回に分けてデータを取得するように組んである。ただし、Googleドキュメントはスプレッドシート全体で40万のセルしか保持できないため、その範囲で収まるような数を指定しよう。
3. いよいよデータを取得する
取得条件の指定が終わったら、「GA Client」メニューをクリックし、「Update Current Sheet」を実行しよう。
API経由でデータが取得され、「sample」シートのセルにデータが記入される。
条件によっては時間がかかるが、取得が終わると以下のようなダイアログが表示され、取得されたデータの行数が通知される。
指定した条件に問題があると、エラーになる。無効な組み合わせもあるため、前述の「ディメンションと指標のリファレンス」を確認しよう。
4. 以降のデータ更新は簡単
このように条件を一度指定しておけば、次回から「GA Client」メニューの「Update Current Sheet」を実行するだけでデータの更新が可能になる。日付の欄に日付を直接記入しないで、「=TODAY()」などと関数を使うようにすると、シートを開いた時点の日付に応じて期間が変化するようになるので便利だ。ちょっとしたスクリプトを書けば、シートを開くと同時に自動更新することもできるだろう。
5. シートをコピーして複数のデータを取得しよう
1つのレポートで欲しいデータがすべて得られることは少ないため、複数のシートを持てるようにしてある。コピーする必要があるのは「sample_conf」のシートだけだ。シート名は「_conf」で終わる必要がある。
条件を変更したら、「GA Client」メニューの「Update Current Sheet」を実行すれば、新しいシートが自動生成され、そこにデータが記入される。データ更新はそれぞれのシートで「Update Current Sheet」を実行する必要がある点に注意したい。
最後に
集計レポートも自動化しよう
このように、Googleアナリティクスからのデータ取得は簡単に自動化できる。ただし、取得できたのは未加工の元データでしかなく、そのままでレポートできる状態ではない。実際には、取得したデータを組み合わせて加工・集計し、意味を読み取れるようなレポートを作成する必要がある。さらに、そのレポートの更新も自動化できれば理想的だ。
例:週別の推移を見る
レポート自動化の例として、週ごとの値を横に並べたレポートを作成してみよう。流入元である「media」をディメンションとし、指標としては「訪問数」(visit)、「新規訪問数」(newVisits)、「目標3」(goal3Starts)を指定した。さらに週別の数字を取得するため、2番目のディメンションとして「週」(nthWeek)を指定した。
この設定で更新すると、以下のデータが得られる。
Nth Weekは、対象期間のうち何週目なのかを表す。
推移をわかりやすくするため、横軸を「週」にして訪問数を並べ、さらに前の週からの増減を割合で表示したい。
そこで、新しいシートを作成し、SUMPRODUCT関数を使ってデータのシートからデータを抽出した。
さらに、グラフも連動して自動更新されるようにしてみた。
最後に
レポートの作成と更新は手段でしかなく、そこから意味を読み取って改善アクションのインプットにすることが重要だ。そのため、日々のルーチンワークはなるべく自動化し、なるべく時間をかけないようにしたい。
また、アクセス解析のツールで得られるデータ以外にも、リスティング広告やSEO関連のツール、営業支援やCRMなどのデータ、基幹システムから得られる売り上げや顧客データ、天気やトレンドなど第三者から得られるデータなど、考慮すべきデータは多い。これらを組み合わせて総合的な分析を行うために、分析やレポート(ダッシュボード)作成に特化したツールも一部企業では使われるようになってきた。そのような場合、アクセス解析ツールが持つレポート機能は、即時性が求められるデータを簡単に確認するためのオマケみたいなものでしかなくなる。アクセス解析のツールは、Webから得られるデータの取得と一時保管がもっとも重要な役割になるのだ。そしてそれは、管理・分析すべきデータの一部でしかない。
「そんな大がかりなことはお金のある大企業しかムリ」というわけではなく、数万=数十万程度の安価なツールも存在する。実際、今回はGoogleドキュメントとGoogleアナリティクスを活用し、無料で同じようなことを実現できた。さらに発展させれば、APIが公開されているAdWordsやFacebook、Twitter、天気情報やSalesforceなどとの連携も可能だ。
本当に見るべきデータは何なのか?使うツールによって考え方や分析手法が限定されてはいないだろうか? ぜひ一度、理想のデータのあり方と分析、そして分析を成果につなげるためのプロセスについて考えてみてほしい。
今回の想定真似コスト 3~6時間、ゼロ円
- 記事種別:解説/ノウハウ
- 内容カテゴリ:アクセス解析
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- コーナー:1万円で真似できる“戦略的サイト運用術” - 小さく作って速く改善
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オリジナル記事:アクセス解析のデータ取得からレポート作成までを自動化する「GA Client」を実践活用 第7回 [1万円で真似できる“戦略的サイト運用術” - 小さく作って速く改善] | Web担当者Forum
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