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ヒートマップで導くユーザーの「キモチ」の仮説: ClickTaleを活用したサイト改善事例 [U会話入門] | Web担当者Forum

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この記事を読むのにかかる時間: 約 7 分
U会話入門
株式会社VOYAGE GROUP UIO戦略室が、社内で実践しているWebサイト最適化アプローチ手法について紹介します。コンバージョン率を上げるために必要な「U会話(ゆーかいわ)」の考え方や、具体的な事例やツールを交えて紹介します。
Q

サイトを訪れてくれた人の行動やその背後にある“キモチ”を、もっと理解できる便利なU会話の方法、A/Bテスト以外にはもっとありませんか?

A

「ヒートマップ」というツールがあります。ユーザー行動に関する仮説立ての精度を向上するためにも、おすすめします。

サイト最適化のアプローチ「U会話」を解説するこの連載、前々回前回ではA/BテストによるU会話を紹介しました。今回は、ユーザー行動をビジュアルに見える化してくれるヒートマップの「ClickTale」という分析ツールを活用したテスト事例をご紹介します。

ClickTale(クリックテール)とは?

ClickTaleのことを初めて耳にする方もおられるかと思いますので、アクセス解析ツールとの対比で簡単に説明しておきましょう。

一般的なアクセス解析ツールは、「どのページが見られたか」や「どのようなセッションが発生したのか」を中心に分析します。元となるのは、「サーバーへのリクエスト」や「ブラウザでのページローディング」です。その発祥はサーバーを管理するためのログです。

それに対して、ClickTaleは「カスタマエクスペリエンス分析」ツールです。つまり、Webサイト制作者が「デザインしたインタラクション」に対して、ユーザーが行う「実際のサイト上での行動(体験)」がどうなっているのかを直接検証するために作られたものです。一般的なアクセスログ解析ツールに加え、ユーザー全体を俯瞰してみる各種ヒートマップ(図1)やコンバージョン・ファネル(図2)、さらにユーザーの操作を動画で再現する機能を備えています。

図1 ヒートマップの例。訪問者がよく見ている部分ほど暖かい色が、サイトの表示に重ねて示されます。
図2 コンバージョン・ファネルの例。どこから来たユーザーがどのページを経てどのように離脱したりコンバージョンしたりしたかを整理して確認できます。

Webページを作る際に、私たちはユーザーによる「ページの表示」だけを設計しているわけではありません。ユーザーの学習プロセスやページ内での視線の移動、操作の流れを設計しているのです。ですから、このようなツールでユーザー行動を観察することによって、より直接的にコンバージョン・レートの向上施策につなげやすくなるのです。

たとえばコンバージョン・ファネルはGoogleアナリティクスでも同様の機能がありますが、ClickTaleでは半自動で作られるうえに、フィルタやセグメントごとの対比を容易にできる、というふうにユーザー行動の「なぜ?」を見つける操作をより楽に、直感的に行うことが可能となっています。

図3 日本語によるClickTaleの機能解説(ギャプライズ)

ClickTaleはイスラエルのClickTale社が開発・提供しているツールで、サイトやツールの管理画面はすべて英語です。月間400PVまで記録できる無料版もありますので、まずはそちらでひととおり試してから、しっかりと利用したい場合はビジネス向けの有料版(月額99ドル~)を利用するのがいいでしょう。

日本では株式会社ギャプライズがアフィリエイトパートナーとして日本語による機能解説などを提供しています。

  • ヒートマップから仮説を導出しランディングページからのコンバージョンレートを最適化した事例
  • ClickTaleの入力フォーム分析を利用してフォームのコンバージョンをチェックした事例

ヒートマップから仮説を導出しランディングページからのコンバージョンレートを最適化した事例

ここではClickTaleの使い方を詳しく解説するのではなく、Webサイト「ECナビ」で行った、ClickTaleの「ヒートマップ」機能を活用したLP(ランディングページ)の改善例を紹介します。

図4 今回の改善対象は、ECナビの商品詳細ページ。

分析の対象となったのは、ショッピングサイトの商品詳細ページです。

ECナビでは、ユーザーがこの商品詳細ページへ直接飛んでくるケースが多くありました。しかし、残念ながらコンバージョンレートは必ずしも高いとはいえず、これをどう高めるかが課題でした。

商品詳細ページのうち、よくお客様に利用されるのは約30万ページほど。取り扱う商品もさまざまですので、把握するのは容易ではありません。

そのため、次のような手順で改善を進めました。

アクセス解析で傾向をつかむ

ClickTaleのヒートマップでユーザーの行動を把握する

その結果から仮説を立てる

A/Bテストでその仮説を検証する

アクセス解析で傾向をつかむ

まずGoogleアナリティクスで全体の傾向をつかみます。そのために、全体的な流入元の割合や、流入元ごとの各種データを調べました。

基本的には検索エンジンからの流入が多く、商品詳細ページからの移動先としては、商品カテゴリページに行く以外はほとんど購入ショップへ移動していました。しかし、それ以上に多かったのが直帰でした。

ClickTaleのヒートマップでユーザーの行動を把握する

次に、ClickTaleで分析します。このとき、ヒートマップで特徴が顕著に現れていました。それは、ページの中程にある、関連商品をサムネイル画像で紹介しているあたりにマウスの動きが集中していたことです(図5)。つまり、ユーザーは商品の詳細情報よりも、関連商品のほうをよく見ているということです。

図5 商品詳細ページでは、商品そのものよりも、その下にある関連商品にマウスの動きが集中していた。

その結果から仮説を立てる

このことから、次のような仮説が出てきます。

  • 1つの商品の詳細情報を紹介しているページに来たものの、お客さまは、もっとさまざまな商品を見て回りたいのではないか。

  • ページを開いたときに関連商品が見えるかどうかはページによって異なる。できるだけ多くのページで関連商品が見えるようにすれば、全体的なコンバージョンが上がるのではないか。

A/Bテストでその仮説を検証する

そこで「より関連商品が見える場合」と「そうでない場合」のテストを行いました。

具体的には、ページが表示されたときに、通常どおり表示されるパターン(オリジナル)と、表示されたタイミングでブラウザを自動的に少し下にスクロールして表示するパターン(テストパターン)です。

ページが表示された時点でよりページの下のほうが見えるほうがいいのではないかということです。

  • オリジナル通常どおり
    図6 ページを開いた時点では上部にロゴやメニューが表示されていて、商品以外の情報が占める面積がそれなりにあった。
  • テストパターン表示内容が多くなる処理
    図7 ページを開いた瞬間にページを自動的にスクロールすることで、ブラウザ画面内に商品情報を多く表示するようにした。

このテストの結果を見ると、テストパターンのほうがショップページ(実際に商品を購入できるページ)へのCTRが4.14%向上し、少なくともオリジナルより良いことがわかりました。

テスト結果「テストパターン」でCTR 4.14% 向上

しかし、これをこのまま本番実装するわけにはいきません。ロゴやヘッダーを表示しないサイトなんて、怪しすぎます。かといって、ヘッダー領域をコンパクトにするようなことはサイト全体に影響が及ぶため、施策として重くなってしまいます。

そこで、今度はページのメインとなる領域内を圧縮したらどうなるかを試してみました。ここで、「もしかして:不要?」と思われる情報を思い切って削除します。商品の送料や支払い方法などです。

  • オリジナル
    図8 オリジナルパターンでは、これまでどおり送料や支払い方法を記載。
  • テストパターン
    図9 テストパターンでは、送料や支払い方法などの情報を削除してコンパクトにした。

すると、ショップページ(実際に商品を購入できるページ)へのクリック率が16.9%向上しました。ずっと表示していた各種の情報は、お客さまにとっては重要な情報ではなかったようです。

テスト結果「テストパターン」でCTR 16.9% 向上

しかしながら、この結果には各方面から猛反発がありました。

何も情報がないのだから、どこかに遷移するしかない。クリック率が上がって当然だ。

さまざまな目的でお客様は来るのだから、さまざまな情報を提供すべきだ。

情報を削除するなんて、私が今までやってきたことは何だったんだ。

もっともなご意見です。

そこで、「情報の量についてのコントロールをお客様の側にわたす」というデザインに変更しました。表示・非表示を折りたたむというものです。

  • オリジナル
    図10 オリジナルパターン
  • テストパターン
    図11 テストパターン(情報を折りたためるように)

これにより、オリジナル比14.1%のコンバージョンレート向上となりました。

テスト結果「テストパターン」でCTR 14.1% 向上

この結果をヒートマップで確認すると、従来のショップ誘導ボタンでの誘導が減ることなく、関連商品へのマウスの動きも増えており、目論見があたっていることを確認できました。

ClickTaleのヒートマップ機能を使ってページ上でのユーザーの実際の行動を調べることで、サイト改善につながる仮説のヒントを得られることがわかっていただけたでしょうか。

  • ClickTaleの入力フォーム分析を利用してフォームのコンバージョンをチェックした事例

ClickTaleの入力フォーム分析を利用してフォームのコンバージョンをチェックした事例

ClickTaleには、入力フォーム分析機能(Form Analytics)もあります。特に、

  • フォームの各項目を入力するのにどれくらい時間がかかっているのか

  • フォームのどの段階で入力をあきらめて離脱しているのか

を視覚的につかみやすいレポートが特色です。

ECナビで入力フォーム分析機能を利用した事例を紹介しましょう。図12に示したのは、入力フォーム分析機能の「コンバージョンレポート(Conversion Report)」という、とてもシンプルなレポート画面です。

図12 ClickTaleで分析した入力フォームのコンバージョンレポート。残念ながらClickTaleのインターフェイスはすべて英語なので、英語が苦手な人には厳しいが、さほど難しい英語ではない。

このケースでは、「コンバージョンレートが34%しかないぞ、入力フォームに問題があるんだ! フォームを改善するように!」という指示がでていました。

そこで、ClickTaleでフォームを計測してみました。

すると、実際には「フォームに入力開始した 140訪問」のうち、「フォームを送信した 136件」「フォームの送信を完了(エラーなし) 136件」と、ほとんどの入力者が問題なく申し込みを完了しており、入力フォームそのものは問題がなかったことがわかりました。

むしろ、「フォームのあるページを閲覧した 396訪問」のうち「フォームに入力開始した 140訪問」とあるように、この入力フォームに入力する意思のない人をたくさん誘導してしまっていることが問題だったのです。

このことから、サイト導線やプロモーションを見直すべきだとの結論になりました。

まとめ

コンバージョンのボトルネックは、ユーザー行動にさまざまな形で顕れています。それをつかむ1つの方法として、ページ内のスクロールやマウス、フォーム入力を分析することは有効です。特に明確なインタラクション・シナリオに基づいて作られたWebサイトの場合に、ClickTaleのようなツールは威力を発揮するでしょう。

※Web担編注 ClickTaleは英語が中心なので、英語が厳しい人は、同様にヒートマップ系の分析機能をもっている「ユーザーインサイト」(株式会社ユーザーローカル、有料)を試してみるといいだろう。

この手のツールは、「直感的でわかりやすい」といわれることもあります。しかしながら、「そもそものデザイン意図」「仮説をもって臨む姿勢」がなければ、レポートを開いては途方に暮れることになるでしょう。この点において、他のツールと何らかわることはありません。

「仮説の導出」「精度向上」に課題を感じておられる場合、これらのツールを試用してみる価値はあると思います。

株式会社VOYAGE GROUP UIO戦略室

UIOは「User Interface Optimization」の略。UIO戦略室とは「日本で一番数値で語れるエンジニアやデザイナーがいる組織を創る」をミッションとして設置された社内横断のプロジェクト。

  • 春元 和正

    1983年、兵庫県生まれ。2006年からプログラマとして数多くのWEBサイトを作成。その後UIO/SEO/SMO/WebAnalyticsといったwebサイト最適化を担当。2010年3月にUIO戦略室を立ち上げ、現株式会社VOYAGE GROUP UIO戦略室 室長。

  • 榎本 徹

    1976年、奈良県生まれ。現ECナビ事業本部 サービスオプティマイズ担当。UIO/SEOを通したwebサイト最適化を担当。UXデザインとWebAnalyticsの統合による、開発スピードと精度向上に取り組んでいる。

  • ブログ: VOYAGE GROUP UIO戦略室ブログ
  • Facebook: VOYAGE GROUP UIO戦略室
  • Twitter: @voyagegroup_uio
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