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単に広告効果を測定することはだけが目的ではなく、
社内のWebマーケティングのレベルを底上げ
するために広告効果測定ツールを活用しています。
というのも、分析のプロ向けのツールは難しすぎるのです。社内にデータ分析の文化を醸成するには、ツールに明るくないプロモーション担当者たちが
「自分でも分析できるかも」と思える使いやすいツールであることが重要だったのです。
そうして各スタッフがデータを意識することが、CRMやSFAと連携させた将来のビッグデータ分析によるマーケティングの下地になるのです。
今回の広告効果測定事例
- 対象サイト: 日本電気(企業サイト)
- コンバージョン: 製品問い合わせ、イベント参加申し込みなど
- 年間広告予算: 非公開
- 利用広告: リスティング広告、バナー広告
- 利用代理店数: 3~4社
- 導入ツール: ウェブアンテナ(株式会社ビービット)
ウェブアンテナの価値はシンプルさ。機能が増えすぎて和製SiteCatalystになっても困ります
野坂 洋 氏
日本電気株式会社
CRM本部
Webコミュニケーショングループ 主任
そう話すのは、NECの全体Webプランナーでありプロモーションの仕組みを企画する野坂洋氏。
NEC内のWebマーケティングのステージを1段階引き上げた分析・広告効果測定の考えやツールの使い分けと、その効果について伺った。
現場のプロモーション担当者に
「自分でも分析できるかも」の意識を
NECが同社のサイト運営に広告効果測定ツールのウェブアンテナを導入したのは2010年の中ごろ。1年半の利用を経て「やっと現場の担当者に浸透してきた段階
」だと野坂氏は言う。
広告効果測定について野坂氏は、Web主管部署の担当者だけがツールを使って分析するのではなく、現場のプロモーション担当者それぞれが広告効果測定をできるようにしている。その狙いは、担当者自ら効果測定を行うことで、Webマーケティングの経験値を高め、より効果的なプロモーション施策につなげていくことにある。
「そもそも、社内のWebマーケティングのレベルアップを図るという目的が最初にあったのです。あるべき姿は、客観的なデータに基づいてプロモーションプランを考えて実施し、その効果を検証するのが当たり前だと思われる状態。しかし、データに基づいてPDCAを回すということは、これまではなかなか実現できていなかったのです。
以前はどんな状態だったかというと、プロモーションごとに指標は異なり、レポート形式も担当者ごとにバラバラ。結局はPV(ページビュー)で判断せざるを得ない状況でした。PVだけでなくCV(コンバージョン数)やCTR(コンバージョン率)でも比較できるようにとウェブアンテナを導入しました。
もちろん、そうした分析はプロモーション担当者がしなくても、専門の分析担当者がやれば済むという考え方もあります。しかし、担当者が『自分たちでも分析できそうだ』という意識になることが必要だと考えたのです。高度なアクセス解析ツールは難しくてわからないという人でも、ウェブアンテナならば自分でも扱いきれるので見てみようという気になれます
」(野坂氏)
もちろん広告効果を測定するためにツールを導入したのだが、個々の施策を効果測定によって最適化することよりも、数多くいるプロモーション担当者の意識を変え、データに基づいた判断の経験値を高めていくことが、ウェブアンテナ導入の大きな目的だったのだ。
「NECが扱っているのはほとんどがB2Bの商材なので、最終的には営業が商談化して成約にもっていきます。そうした最終的なコンバージョンまでプロモーション担当者が把握することはまだ難しいのですが、少なくとも自分の担当範囲だけでもデータで成果を意識するようになるのは大きな違いがあります
」(野坂氏)
3つの分析ツールを適材適所で使い分け
NEC(日本電気)はご存じのとおり、パソコンやサーバーをはじめとするIT機器やソリューションを提供するメーカー企業だ。NECの顧客は個人から法人まで幅広いため、ターゲットや目的ごとにウェブサイトを用意している。コーポレートサイトでは、主に法人向け(B2B)ソリューションの訴求を行っている。
NECのWebプロモーションはCRM本部が統括しており、事業部からの要望に応じてプランを考え実施している。
CRM本部のWebコミュニケーショングループに所属する野坂氏は、社内のウェブ施策に関する戦略を練り、ツールを導入して活用方法を現場にアドバイスすることが役目のWebプランナーだ。野坂氏は、NECのWebマーケティング施策を次のように説明する。
「NECでは、Webマーケティングのために3つの分析ツールを導入しています。アクセス解析ツールのSiteCatalystとUser Insight、そして広告効果測定ツールのウェブアンテナで、それぞれ目的が異なります。
SiteCatalystは、主にサイト内のユーザー行動分析のために利用しています。User Insightは、ページごとのヒートマップを使って特定の画像がどれくらいクリックされているのかといったクリエイティブの効果を調べたり、ページごとの熟読度を調べたりするために利用しています。
この2つのツールは、CRM本部の中でもウェブに詳しい特定のスタッフが使用しています。
それに対して、広告効果測定ツールのウェブアンテナでは、プロモーションの担当者がそれぞれ自分でツールを使用して設定から広告効果の確認まで行っています。
同様のことはSiteCatalystでもできますし、そちらのほうがより深い分析も可能です。しかし、SiteCatalystはプロモーション担当者にとって複雑で難しすぎるのです。ウェブアンテナならば、プロモーション担当者レベルでは必要十分な機能がそろっていますし、何よりも、アクセス解析ツールに明るくないスタッフでも気軽で簡単に使えることがポイントです
」(野坂氏)
- 自分で設定から測定まですることで意識も向上
- 計測用タグとパラメータ管理のしやすさは担当者によるタグ付けにも効果を発揮
- ウェブアンテナ導入によるコストはステージを上げるための必要コスト
- データの蓄積は将来のビッグデータ時代における究極のマーケティングを見越した準備
自分で設定から測定まですることで意識も向上
私がエヴァンジェリストとして、データに根差したマーケティングを社内に広めていければと考えています。
河井 大輔 氏
NECデザイン&プロモーション株式会社
マーケットコミュニケーション事業本部 第二マーケットコミュニケーション部 第二プロデュースグループ プロデュース担当
野坂氏が進めたNECのレベルアップ効果は、ハウスエージェンシーにも影響を与えているようだ。
プロモーション施策に関して、NECのプロモーション担当者や事業部とともに考えて形にしていく役割を担っているのが、NECデザイン&プロモーション株式会社。同社の河井大輔氏は、ウェブアンテナ導入による担当者の意識変化を感じている。
「以前は、どうしてもマスメディアの延長としてウェブを捉える傾向がありました。どれだけ見られたか、つまりPVでプロモーションのメディアプランを選択していました。
しかし、ウェブアンテナを導入してからは、それだけじゃないというところで、プロモーションの戦略や理由づけをデータに基づいて考えるようになりました。これは、現場で大きく変化したところです
」(河井氏)
広告クリエイティブでは、議論が主観的になりがちだ。特にデザインの話になると、「その画像は実際のところ見られていないですよ」「いや、そんなことはないだろう」といった主観の話になることも少なくない。
しかしNECでは、User Insightで実際にユーザーがどこを見たのかをチェックしたり、ウェブアンテナで成果との関係を把握したりといったことを行い、客観的な指標に基づいて判断することで、ミーティングでの論点は1つにまとまるようになってきたのだという。
「主観は大切ですし、完全に否定するわけではありません。しかし、客観性を担保したうえでの主観です。数字がすべてではないですが、定量的な事実は重要ですので、それを活かしましょうということです。
経験と顧客理解に基づいた主観に加えて定量データも見ることで、説得力のある実のある議論にできるのです。以前はなかった客観的な定量データからの視点を加えるようになってからは、判断の根拠にバランスがとれるようになってきたと感じています
」(野坂氏)
計測用タグとパラメータ管理のしやすさは
担当者によるタグ付けにも効果を発揮
ウェブアンテナ導入のもう1つの目的として、広告のクリックURLのパラメータや計測用のタグの管理を徹底させることがあった。
広告の効果測定をするには、各広告のリンク先URLに識別用のパラメータを付ける必要がある。このパラメータ付けは以前から行っていたが、その作業は1人の担当者に集中してしまうため負担になっていた。かといって、プロモーション担当者に任せて各自バラバラなパラメータ設定をしてしまうのも問題だ。
ウェブアンテナは、その悩みを解消するちょうどよいツールだった。
「以前は、SiteCatalystの計測用URLパラメータをExcelで管理していました。ツールが増えて、さらに代理店のパラメータが加わると、まさにパラメータ地獄になってしまいます。そこで、SiteCatalystのパラメータをウェブアンテナのものに変えて一本化しました。また、パラメータの運用や払い出しを各担当者レベルでできるようにしました。
パラメータ発行担当者が楽になることはもちろんですが、プロモーション担当者が自分でできるようになると、作業面でも意識も変わってきます。以前は『なんだかよくわからないけど、面倒なパラメータを入れないといけない』という感覚だったものが、『このパラメータを入れると、ウェブアンテナを使って自分で分析できるのだ』と、やっていることの意味を実感できるようになってきたのです
」(野坂氏)
ウェブアンテナを中心にタグやパラメータを管理することは、データを正規化できるというメリットもある。
「広告URLのパラメータは、どのメディアのどの広告枠に出した広告かがわかるように命名規則を決めていたのですが、ウェブアンテナを使うようになってからは、それを管理しなくてもよくなりました。というのも、ウェブアンテナ自体が各メディアの広告枠情報をもっているので、担当者は一覧から選ぶだけでいいのです。
効果測定に関する作業をプロモーション担当者に任せることができたのも、こういった機能があるおかげです。また、個々の担当者が自分のためにタグ付けをしていくだけで正規化されたデータが蓄積できるため、それが結果として分析担当者や全体の作業効率を良くすることに貢献する形になっています
」(野坂氏)
- ウェブアンテナ導入によるコストはステージを上げるための必要コスト
- データの蓄積は将来のビッグデータ時代における究極のマーケティングを見越した準備
ウェブアンテナ導入によるコストはステージを上げるための必要コスト
シンプルさと操作の簡単さ定評があるウェブアンテナは、「作業時間の短縮化」という視点で評価されることも多い。しかしNECでは、ウェブアンテナの導入によって、「プロモーション担当者による効果測定」という以前はなかった作業を増やす形となった。
会社全体で見れば「手間が増えた」わけだが、それ以上のメリットがあると野坂氏は言う。
「タグの発行担当者を除けば、全体の手間は増えていますし、ツールを追加したわけですからコストも増えていることは確かです。しかし、それぞれに役割と意味があり、しっかりと活用していくことでペイできると考えています。
繰り返しになりますが、プロモーション担当者が自分でログインして設定できるからこそ、自分でレポートを見ようという興味も湧いてきます。いずれ自分で工夫するようになることも期待しています。意識改革を促すきっかけになるなら、それは『かけるべき手間、必要なコスト』なのです。
Webサイト運用でのCMSと同じですよ。最初は楽になるだろうと思ってCMSを入れますが、実際にはそれで細かい作業が増えます。では入れないほうがよかったのかというと、そんなことはありませんよね。
ステージを上げるということは、そういうことも伴うのだと考えています。全体最適化が私の仕事ですから、社内のマーケティングレベルが上がることで、最終的な成果に結び付けられればいいわけです
」(野坂氏)
河井氏も「手間は確実に増えた」という。ただし、もともと楽になるために導入したわけではない。
「現状を把握することが前提としてあり、そのために必要なものであることは確かです。その手間が増えた分をどう最適化できるかが次の課題です
」(河井氏)
NECの自社媒体「Wisdom(ウィズダム)」は、商業メディアにも負けないコンテンツが満載の情報サイト。50万人弱のメールマガジン会員がいる。
NECでは、Wisdomのサイトやメールマガジンからのユーザーの動きも、ウェブアンテナで測定している。つまり、広告効果測定ツールを新規顧客獲得の測定だけでなく、リテンションの効果測定にも利用しているということだ。
http://www.blwisdom.com/
データの蓄積は将来のビッグデータ時代における
究極のマーケティングを見越した準備
野坂氏には壮大なプランがある。SiteCatalystもUser Insightもウェブアンテナも、実はそのプランを実現するための下準備なのだという。
「将来的には商談率や成約率まで把握できるようにしたいと思っています。
SiteCatalystをCRMやSFAのシステムとつなげて、ユーザー集団や属性、流入元などでセグメント分けしたうえで、商談化率や成約率の関係まで把握するということですね。現在のクリックからコンバージョンに至る部分に加えて、その前と後、つまりインプレッションによる間接的な効果や、成約に結び付くまで何が影響しているのかを正確に把握したいわけです。
それができるスーパーツールはまだ存在していませんが、いまからできることをすべきだと思っています。そのためのツールがSiteCatalystやウェブアンテナなのです
」(野坂氏)
より広く深いマーケティングの実現に向けた準備。それが、ツールの導入やタグの最適化、社内意識の向上といったことだ。
実際、Webマーケティングが対象とするデータは、多様かつ多量になっており、まさにビッグデータ化してきている。豊富なデータと分析のノウハウが蓄積されることで、マーケティングはまだまだ進化していくはずだ。
インプレッションによる間接効果など、コンバージョンに至る過程は複雑で、合理的ではないことも多い。いろいろな視点で評価できるはずだし、それが真に意味のあるプロモーションとなる。CVRやCTR(クリックスルー率)だけを見過ぎると、可能性を自ら狭めてしまうことになる。
「Webマーケティングは、データと数値に基づいてできる反面、その最適化を求めすぎると焼畑農業になってしまう危険性もあります。
直接的な効果だけに焦点を当てて最適化を進めると、予算は縮小される一方という悩ましい問題もあります。でもそれは本当に正しいのか、刈り取りだけで終わっていいのか、顧客予備軍の育成は必要ないのかという疑問もあります。
一見まったく効果のないようなプロモーションでも、巡り巡ってコンバージョンにつながったり、次の顧客獲得につながったりする可能性はあります。
それを証明して予算の正当性を担保する説得力のある材料を示すことができれば、胸を張って面白い種まきマーケティングができますからね
」(野坂氏)
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オリジナル記事:ビッグデータに向けてステージを進めるために各スタッフが自分で広告効果を分析/NECの事例 [広告効果測定の現場から] | Web担当者Forum
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