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誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。
毎週・木曜9時は「かってに解析!」。誰もが知っている有名サイトをかってに取り上げ、「もしもアクセス解析をするならば、どこに目をつけるか?」という視点で、サイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。
前回に引き続き、今回もレンタカー会社を比較・検討する比較サイトである「楽天トラベル」の「レンタカー予約」を取り上げる。
今回はレンタカー関連のサイトを対象にして、課題の抽出や考察を行うのだが、筆者はカーリース業界の各企業やWebサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。
「楽天トラベル」の閲覧シチュエーションを想定
今回のサイト利用シナリオをおさらいしておこう。目的は「レンタカーを借りる」というものだが、今回は比較サイトであるため、「レンタカーを借りる」という目的の前段階として、「各社の価格などを比較検討の上、会社を選択する」という目的が加わる。
誰が |
所用で週末にレンタカーを利用予定の人 |
何の目的で |
レンタカーを借りる |
具体的には |
オンラインで比較サイトを利用し、レンタカーの予約までおこなう |
「楽天トラベル」をエキスパートレビュー!
前回のおさらい
最初に、検索エンジンで「レンタカー」と検索して、表示された検索連動型広告をクリックし、「楽天トラベル」にやって来た。
「楽天トラベル」のトップページをざっと概観した後に、トップページにある「レンタカーを日程から探す」という検索機能を使って、レンタカー検索をしてみた。検索条件は、以下のようなものだ。
- 貸出日時:1月28日(土曜日)の朝8時
- 返却日時:1月29日(日曜日)の夜10時
- 貸出/返却場所:神奈川県川崎市の最寄りの営業所
- 利用可能なオプション:禁煙車、カーナビ
以上の条件を指定し、[検索]ボタンをクリックすると、図11のように、上から「現在の表示条件」「条件を変える」「表示タイプ」「候補店と車種選択画面」が縦長に表示された。比較サイトなので当たり前だが、非常に多くの候補店が表示されている。
図11(再掲):「楽天トラベル」の「レンタカーを日程から探す」で検索して表示された検索結果画面
選んだエリアにある日産レンタカー、トヨタレンタカー、ニッポンレンタカーの店舗がそれぞれ複数ピックアップされているのが分かる。
この段階で、だいたいの価格帯を確認しておく。最安値は「日産レンタカー武蔵新城」のコンパクトカーで、9,450円。楽天の春得キャンペーン対象だから安いのだろう。あとはコンパクトカーで12,000円くらいから、ラグジュアリカーだと26,000円ぐらいだと分かる。
「楽天トラベル」をエキスパートレビュー!(続き)
「駅から検索」で検索結果を絞り込んでみる
このままでは少々選択肢が多すぎるので、「駅から検索」(図12の赤枠で囲んだ部分)を使って絞り込んでみよう。表示されている駅の中から最寄り駅である「溝の口駅」をクリックする。
図12:検索結果ページの上部
「溝の口駅」をクリックした後の表示が図13だ。前回取り上げた「ニッポンレンタカー」の溝ノ口駅前店だけが残っている。価格は13,000円くらいからだ。
図13:「溝の口駅」で絞り込んだ検索結果ページ
川崎市全体の検索結果ページ全体の最安値が9,450円だったので、それに比べると、絞り込んだあとの最安値13,020円はけっこう高い。家から営業所への近さと天秤に掛けるところだ。
今回は近場を優先して、絞り込んだ後の「ニッポンレンタカー」の溝ノ口駅前店で表示された中で、一番上の車種の「予約へ」(図13の赤枠で囲んだ部分)を選択して進むことにする。
予約を行なってみよう
ここからがいよいよ予約のステップだ。予約内容の確認画面が最初のステップになる(図14)。
「返却店舗」の欄に記入されている「貸出店舗に返却する」というテキストが縦に表示されているのは違和感があったが(図14の赤枠で囲んだ部分)、ブラウザに依存する現象かもしれない。
図14:予約内容の確認ページ
あとは、下方の「免責補償制度」(図14の青枠で囲んだ部分)は、図13の条件指定でチェックしていないにもかかわらず、指定が強制的に変更させられていたのが気になった。このチェックを外して、[次の画面へ進む](図14の緑枠で囲んだ部分)ボタンをクリックする。
- 楽天会員IDでログインするか、ログインせずに情報を入力するか
「楽天トラベル」をエキスパートレビュー!(続き)
ログインページで、ログインするかしないかを選択する
図15がログインページだ。楽天会員はログインして予約できるが、楽天会員でないユーザーも楽天会員IDを使わずに予約できる。今回は、楽天会員でないとして、右側の[楽天会員IDを使わず予約する]ボタン(図15の赤枠で囲んだ部分)をクリックして進もう。
図15:ログイン画面
図16が予約者情報と運転者情報の入力ページだ。それぞれ最低限入力するだけでよい。
図16:予約者情報と運転者情報の入力ページ
前回の「ニッポンレンタカー」と比べると、ステップ数や入力項目数自体も非常に少なくコンパクトになっている印象を受ける。「ニッポンレンタカー」では、免許証の情報なども入力が必要だった。
このページで必要項目を入力し、[次の画面へ進む]ボタン(図16の赤枠で囲んだ部分)をクリックする。
入力内容を確認する
図17が最後の入力内容確認画面だ。
図17:入力内容確認ページ
これまでに入力した内容に間違いがないかを確認し、[この内容で予約する]ボタン(図17の赤枠で囲んだ部分)をクリックすれば予約完了となる。非常に簡単に予約できた。
- 最後に、アクセス解析的な視点でのチェックポイントをまとめておこう
前回+今回のまとめ&アクセス解析的な視点でのチェックポイント
最後にアクセス解析的な視点で見るべきポイントをまとめておこう。
- トップページについて
「楽天トラベル」のレンタカー予約のトップページは、比較をするのであればファーストビューの中央に位置している「レンタカーを日程から探す」の機能を使う。予約する人にとって非常に便利だ。
また、利用したいレンタカー会社が決まっている場合でも、楽天会員で楽天スーパーポイントを貯めている人なら、「楽天トラベル」をポータルのように利用してポイントを貯められるというメリットがあるのだろう(すべてでポイントが貯まるわけではないようだが)。
「楽天」ほどのサイトであれば、すでにA/Bテストなどで最適な表示パターンを研究していると思われる。このトップページに関しても、スクロール状況や実際のクリック状況を計測し、ファーストビューには最も使われる機能を配置すること、そしてその他のリンクは、例えばどういった順番で各レンタカー会社を配置したらよいのかを、データをもとに決定しているに違いない。
- 「楽天トラベル」全体のユーザー体験について
本文は「レンタカー予約」に焦点を当てたので触れなかったが、「楽天トラベル」全体のユーザー体験について少々気になった点を触れておきたい。
図18は「楽天トラベル」の最上部にあるタブの「観光案内」をクリックし(赤枠で囲んだ部分)、「たびノート」というページを表示した画面だ。「観光案内」というタブをクリックしたにもかかわらず、一番左のタブ「国内」が黄緑色になったままで、サブメニューの表示は消えている。
レンタカー予約ページからこのページに移動した場合に、一瞬現在いるページの確認方法が理解できなくなる。この「観光案内」のタブを黄緑色にして強調表示にするのが普通だろう。
また、下の図19は、「楽天トラベル」の最上部にあるタブの右から3つ目の「割引クーポン」をクリックし(赤枠で囲んだ部分)、「Rakupon(ラ・クーポン)」というページを表示した画面だ。
国内タブやサブメニューは「レンタカー予約ページ」とほぼ変わらず、コンテンツ部分だけ変わっている。これについても、クリックした場所に変化がないので、オヤッと感じた。
おそらく、よく使われるコンテンツメニューの露出はしたままにしておきたいという狙いなのだと思うが、通常予想される動きと異なる動作は、ユーザーを迷わせる可能性が高くなる。
サイト自体が巨大で、コンテンツも豊富なので、どのようなグローバルナビゲーションにすればよいのか簡単ではないとは思うが、楽天トラベル内を縦横無尽に利用してもらうようなユーザーテストを行なって、こういったナビゲーション機能面の改善点を洗い出してみることも必要だ。
- 「レンタカーを日程から探す」機能
レンタカー予約するために比較情報を取り出すための「レンタカーを日程から探す」がメインの機能になる。ここは表示をあえて控え目にしている機能の利用状況をまず押さえておきたい。
たとえば、カレンダー機能を使う人はどのくらいいるのか、車両タイプをクリックして乗用車以外を選択する人がどのくらいいるのか、といった機能の利用状況だ。
利用者が多ければ、フルに表示しないまでも、アイコンを目立たせること、文字の大きさを少し大きめに変更することなど、検討の余地が出てくるだろう。
あと、前回の「ニッポンレンタカー」では営業店舗の検索で、駅名や郵便番号など様々な検索方法が用意されていたが、実際にユーザーテストやアンケートなどで、直接ユーザーの声を聞いてみるのもよいだろう。ただし「こういう検索方法があったら使うか」といった質問をすれば、「あった方がいい」と答えるに決まっているので、検索でとまどったことなどがなかったかを聞くとよい。
その他のプルダウンやチェックボックスなどの機能に関しては、特に問題を感じなかったが、実際のタスクを与えるユーザーテストを行い、この機能で何か違和感を訴えるユーザーがいれば、その人の意見に耳を傾けてみよう。
- 検索結果ページ
ユーザーの検索条件によって、表示された候補店や車種の表示数は多かったり少なかったり様々だと思うが、再検索される割合と回数、再検索したときの条件変更の状況を把握したい。
再検索率が多く、検索する回数が多ければ、自分の思ったものが1度で出てこなかったということになるので、再検索した場合にどのような条件変更をして検索したのかを把握し、条件変更が多いパターンがあれば、その選択項目を検索画面に実装することを検討したい。しかしながら、おそらく条件変更のパターンは多岐にわたり分散しているのではないかと思うので、そう簡単に機能変更につながる発見は出てこないとは思うが。
あとは、さらにエリアを絞り込む機能として「市区町村から検索」と「駅から検索」の2つがあるが、これもどのくらい利用されているのかという数値は把握しておきたい。この絞り込み検索の利用が高くても、トップページの検索機能のところに実装する必要はないと思うが、利用頻度が極めて高いようであれば、目立たせる必要がでてくるだろう。
- 予約プロセス
予約に関しては確認が中心で、大した入力項目もなく問題点は少ないように感じたが、アクセス解析データでこの予約の流れの各ステップでの離脱率は把握しておきたい。
その上で、予約のタスクを与えて実際にやってもらうユーザーテストで各ページの問題点を洗い出していく方法がよさそうだ。各ページはもう少しコンパクトな表示にできるような気はしたので、ユーザーの生の声を聞いてみるのがよいだろう。
◇◇◇
さて、この連載では、
- Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
- 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論
などを随時募集している。希望者は、(web-tan@impressrd.jp)までお寄せいただきたい。
衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)
1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社インターネット視聴率センター長を経て、2000年ネットレイティングス入社視聴率サービス立ち上げに参画、2006年ネットレイティングス社フェローに就任。株式会社クロス・フュージョン代表取締役。またデジタルハリウッド大学院客員教授、米Web Analytics Association会員、アクセス解析イニシアチブ副代表。
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オリジナル記事:もしも、「楽天トラベル」を解析するなら(後半)[第51回] [有名サイト、かってに解析!] | Web担当者Forum
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