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誰もが知っている有名サイトをエキスパートレビューしながら、「もし、アクセス解析するなら」どのポイントに着目するかを第三者的な視点から解説。アクセス解析を用いてサイトの改善を行うための仮説構築力を身につけて、自社サイト、クライアントサイトをアクセス解析する際に役立ててほしい。
毎週・木曜9時は「かってに解析!」。誰もが知っている有名サイトをかってに取り上げ、「もしもアクセス解析をするならば、どこに目をつけるか?」という視点で、サイトの問題点やチェックポイントにあたりをつける方法を解説していく。
今回は「NHKオンライン」を取り上げる。「NHKオンライン」はNHKが運営しているWebサイトで、NHKが放送しているテレビ番組、ラジオ番組についての情報や、番組表、ニュース、天気予報、地震情報、緊急地震速報などが掲載されている。
今回と次回の2回にわたり、放送局のサイトを取り上げ、課題の抽出や考察を行うのだが、筆者はNHKやその他の放送局、放送業界の各企業やWebサイトが直面している課題や戦略・戦術を十分に理解しているわけではない。あくまでもどのような点に着目したらよいのかを重視して読んでいってほしい。
「NHKオンライン」の閲覧シチュエーションを想定
今回取り上げる「NHKオンライン」のサイト利用シナリオは、次のとおりだ。映画の好きな人が、NHKで放送する予定の映画にどんなものがあるのかを調べ、もし好みの映画がたくさん放送される予定があるのならば、NHKオンデマンドに申し込む、というものだ。
誰が |
映画を見るのが好きな人 |
何の目的で |
テレビでもっと映画が見たい |
具体的には |
NHKで放映予定の映画を調べ、NHKオンデマンドのサービスを調べる |
「NHKオンライン」をエキスパートレビュー!
「nhk」と検索すると、「Google」でも「Yahoo! JAPAN」でも1位
まず「nhk」というキーワードで検索すると、「Yahoo! JAPAN」「Google」のどちらでも、「NHKオンライン」が自然検索の1位に表示されている(図1、図2の赤枠で囲んだ部分)。
図1:「Yahoo! JAPANで「nhk」と検索した検索結果画面
図2:「Google」で「nhk」と検索した検索結果画面
また、どちらの2位にも「NHK」というタイトルでnhk.jpが表示されているが(図1、図2の青枠で囲んだ部分)、これをクリックすると、「NHKオンライン」にリダイレクトされる。
実質、表示されるWebサイトが同じなら、nhk.jpの方は検索エンジンにインデックス(登録)されないように工夫しておいた方がよいと感じるのだが、筆者はSEOの専門家ではないので、何か事情があるのだろう。
そして、どちらでも第3位のk.nhk.jpは、モバイル版サイトのようだ(図1、図2の緑枠で囲んだ部分)。
それでは、検索結果に表示された「NHKオンライン」のリンクをクリックして、トップページ(図3)に移動しよう。
- 民放のWebサイトはどうなってる?
- 「NHKオンライン」のトップページを見てみよう
「NHKオンライン」をエキスパートレビュー!(続き)
民放のWebサイトはどうなってる?
「NHKオンライン」のトップページを見る前に、放送局のWebサイトのトップページが、一般的にどのようなレイアウトになっているのかを確認しておきたい。
在京キー局(「日本テレビ」「TBSテレビ」「フジテレビ」「テレビ朝日」「テレビ東京」のトップページを見てみると、
- 番組情報
- now on air(現在放送中の番組)
- 広告クライアントの広告
- アクセスランキング
- ニュース速報
- フッターにたくさんのリンク
などのコンテンツが一般的なようだ(以下、カギ括弧付きで「日本テレビ」などと書くときには、会社自体ではなく、Webサイトを指す。他の会社も同様)。
例えば、図3は「テレビ朝日」のトップページだ。
メインビジュアル右が広告エリア(図3の赤枠で囲んだ部分)、その下にアクセスランキングがある(図3の青枠で囲んだ部分)。それから、フッターにはやはり非常に多くのリンクを配置している(図3の緑枠で囲んだ部分)。
「NHKオンライン」のトップページを見てみよう
これを念頭に置いた上で、「NHKオンライン」のトップページを見てみよう(図4)。
民放に対して、NHKは広告モデルでないため、当たり前だが、「NHKオンライン」には広告がない。一方でコンテンツが豊富なため、見るからに、コンテンツをどのように整理して見せるべきかが課題となりそうだ。
上部のメインの位置には、ニュースコンテンツがジャンル別に並んでいるのだが(図4の赤枠で囲んだ部分)、そもそも「Yahoo! JAPAN」のようなポータルサイト的な役割を「NHKオンライン」に求めているユーザーがどのぐらいいるのだろうか。広告モデルではないので、単にページビューを多くする必然性は少なく、こういったニュース系コンテンツでページビューを稼ぐ必要はないだろうし、ユーザーにも求められていないのではないだろうか。
上部に「NHKオンラインプラス」へのリンクがあまり目立たない形で存在している(図4の青枠で囲んだ部分)。「NHKオンラインプラス」(図5)は、ポータルサイトの「Yahoo! JAPAN」で言えば「My Yahoo!」のような機能を持っているページだ。
図5からもわかるとおり、コンテンツを追加したり(図5の青枠で囲んだ部分の機能)、パーツ化したコンテンツを移動させたり、組み合わせて自分用にカスタマイズしたページを作ることができるというものだ(図5の赤枠で囲んだ部分のようなブロック)。
どうも、ポータルサイトを意識した作りが目立つが、「NHKオンライン」の存在意義から考えれば、番組について調べるユーザー、NHKそのものに興味があるユーザーにフォーカスしてしまってよいのではないだろうか。どういう目的でWebサイトを展開しているかという根幹の部分の話になるになるのだが、ポータル的な作りにして虻蜂取らずにならないようにした方がよい印象を持った。
番組を調べる方法にはどのようなものがあるか?
さて、番組を調べる方法としては、
- チャンネル(地上波、衛星放送、ラジオなど)
- 番組名
- ジャンル名
- 放送の日時
など様々な軸がある。こういった軸に対してどのようなインターフェイスを提供しているかを見ていこう。
他の放送局でもだいたい同じ形式が多いが、番組内容のジャンルは、ページ上部のグローバルナビゲーションを利用するのが一般的なようだ(図3、図4の紫枠で囲んだ部分)。
「現在放送中の番組(now on air)」という見せ方をしているのも多い(図3、図4の黄枠で囲んだ部分)。
あとは、「番組表」という一覧形式で見てもらうという機能もほとんどの放送局サイトで提供されている(図4の緑枠で囲んだ部分)。
「NHKオンライン」のトップページで気になった点を言うと、それぞれの機能は提供しているのに、目立っていないということだ。例えば、番組表(図4の緑枠で囲んだ部分)や番組名一覧という機能はページ最上部の検索窓の右にひっそりとその他のリンクと同列に並んでいて、重要なコンテンツへのリンクなのに気付きにくい。
また、グローバルナビゲーションは、ジャンル数が14個と多いため、1つ1つが目に入ってこない(図4の紫枠で囲んだ部分)。他局の例として挙げた「テレビ朝日」では、番組カテゴリー数は7つしかない(図3の紫枠で囲んだ部分)。パッと見て判断できる数としてはこのくらいが妥当だろう。
「ただいま放送中」(図4の黄枠で囲んだ部分)も、どこからどこまでがその領域なのか、ブロック化して表示を囲っていないため、コンテンツの境界がよくわからない状態になっている。
フッターは上手に情報を隠している
さて、トップページのフッター(図6)は冗長にならないように、うまく情報を隠しているのだが、どのような構造かわかるだろうか。
図6:「NHKオンライン」のすっきりしたフッター部分
プラス記号(図6の赤枠で囲んだ部分)や下矢印(図6の青枠で囲んだ部分)をクリックするとフッターが広がり、図7のように実態のあるリンク群が出現してくる構造になっている。最近このようなインターフェイスが増えてきたので、意味が共通認識できるアイコンとして定着してくれば、こういった使い方はよいだろう。
図7:「NHKオンライン」のフッター部分を表示したところ
あとは、関心のある人は目を凝らして見るとは思うのでそれほど問題にはならないかもしれないが、そもそもグレーで薄い文字表現になっているところが気になった。可能なら、もう少しはっきりわかるようにした方がよいだろう。トップページの他の部分でもいくつかそのような箇所があるように感じた。またコンテンツ満載なので、デフォルトの文字サイズが一番小さなサイズになっているのも少々気になった。
- NHKではどれぐらい映画が放送されているのかを調べたい
「NHKオンライン」をエキスパートレビュー!(続き)
グローバルナビゲーションの「映画」をクリック
それでは、いよいよシナリオに沿って、まずこれからNHKで見ることができる映画はどのようなものがあるのか調べていこう。
調べ方は様々な方法がありそうだが、ここではまずグローバルナビゲーションの「映画」にマウスオーバーしてみた。すると、図8のように「BSシネマ/番組一覧はこちら」というプルダウンメニューが表示された。
図8:トップページのグローバルナビゲーション
「BSシネマ」だけを限定して調べたいわけではないので、「番組一覧はこちら」の方を選択してみた。すると図9のような表示になった。なんと映画が2本しか表示されていない。
まさか、本当に放送している映画がこんなに少ないはずはなさそうなので、別の方法でも調べることにした。
番組表から映画を調べてみる
トップページ最上部にある「番組表」(図8の青枠で囲んだ部分)をクリックすると、「番組表」のページに移動する(図10)。このページでは、自分の居住エリアの「今日の番組」を一覧表形式で見ることができる。
右上の「お知らせ」を見ると(図10の赤枠で囲んだ部分)、このページでは1週間先までの番組表を見ることができるようだ。左上には番組ジャンルを選ぶ機能があるので(図10の青枠で囲んだ部分)、クリックしてプルダウンメニューを表示させてみた(図11)。
図11:「番組ジャンルを選ぶ」のプルダウンメニューを表示させたところ
プルダウンメニューの中に、「映画」というカテゴリーが見つかったので(図11の赤枠で囲んだ部分)、それを選択して、[探す]ボタンをクリックしてみる(図11の青枠で囲んだ部分)。結果は図12のとおり、2012年3月4日から3月11日までの間に、19件表示があった(図12の赤枠で囲んだ部分)。
図12:2012年3月4日から11日までの間の番組表で、「映画」に絞って検索した番組検索結果画面
「BSプレミアム」では、毎日映画は3本~4本くらいはやっていることが確認できた。まあ順当な感じだ。
だとすると、先ほどの図9での2件しかない番組表示はなんだったのだろうか。改めて図9のページを確認すると、「※ホームページのない番組もあります。ご了承ください」と書いてある(図9の赤枠で囲んだ部分)。特に映画のように1つずつが個別のコンテンツの扱いになるのか、一連のシリーズものを1つの「番組」としてカウントするのか、それによって検索結果の表示は異なる。こういう検索結果で、番組のコンテンツをどう見せるのかは、案外難しいのかもしれない。
番組検索結果から「番組HPへ」をクリックして見てみる
さて、番組検索結果画面に話を戻そう。各映画の詳細解説のところには「番組HPへ」というリンク(図12の青枠で囲んだ部分)があったので、それをクリックすると、移動した先は「NHK BSオンライン」の「映画」というページだ(図13)。
図13:「NHK BSオンライン」の「
映画」ページ
なるほど。つまり、最初にグローバルナビゲーションで「映画」をクリックしたときに表示されたプルダウンメニューで、「番組一覧はこちら」ではなく、素直に「BSシネマ」をクリックしていればよかったのだと、ここでようやく理解できた。
こちらのページで、カレンダー(図13の青枠で囲んだ部分)をクリックすれば、翌月一杯の放送スケジュール(2012年3月上旬時点なら、2012年4月一杯までのスケジュール)が確認できる。
これで、NHKでは映画も充実していることがわかった。過去の映画も見放題の世界を堪能したいので、「NHKオンデマンド」に加入してみたいと思ったところで、今回はここまでとしよう。
「NHKオンデマンド」とは、「過去の放送を見たいだけ見ることのできるアーカイブ的なサービスである」といった大雑把な理解をしている人は多いと思うので、次回はそういう前提で、料金やサービス内容などの情報を見ていくことにする。
◇◇◇
さて、約1年のあいだご愛読いただいたこの連載も、今月(2012年3月)いっぱいをもって終了することになった。本連載では、連載開始時から変わらず、
- Webサイトのオーナーか管理者の方からの「かってに解析」してほしいリクエスト
- 「かってに解析」されたサイト運営者・管理者の方からの異論や反論
を募集してきた。実際にご応募いただいたことがきっかけで、取り上げさせていただいたサイトもいくつかある。しかし、本連載も残るところあと3回。「かってに解析」希望者は、早めに(web-tan@impressrd.jp)まで、リクエストをお寄せいただきたい。
衣袋教授の丸2日でアクセス解析を徹底的に学ぶ講座「アクセス解析ゼミナール」を2012年4月17日と4月24日に開催します。主催はアクセス解析イニシアチブ。3月内申込みで早割あり。 → http://a2i.jp/activity/training
衣袋 宏美(いぶくろ ひろみ)
1960年東京都生まれ。東京大学教養学部教養学科卒業。大手電気メーカー勤務後、日経BP社インターネット視聴率センター長を経て、2000年ネットレイティングス入社視聴率サービス立ち上げに参画、2006年ネットレイティングス社フェローに就任。株式会社クロス・フュージョン代表取締役。またデジタルハリウッド大学院客員教授、米Web Analytics Association会員、アクセス解析イニシアチブ副代表。
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オリジナル記事:もしも、「NHKオンライン」を解析するなら(前半)[第56回] [有名サイト、かってに解析!] | Web担当者Forum
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